tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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2018年度政府経済見通し(閣議決定版)を見る

2018年01月22日 15時30分15秒 | 経済
2018年度政府経済見通し(閣議決定版)を見る
 今日、閣議決定版の来年度政府経済見通しが発表になりました。
 昨年に12月22日に、閣議了解版について要点の数字を追ってみました。閣議決定版ではこれに国民所得の内訳などが追加されます。

 今週はいよいよ2018春闘の労使の論戦開始という事ですが、それに先立って、政府経済見通しで、雇用者一人当たりの雇用者報酬、いわば、日本全体の賃上げに相当する数字が発表されるわけです。
 
 そこで全体の数字を瞥見したうえで、賃金決定に関わる数字それに物価上昇率など、政府の考えている日本経済のバランスを見てみたいとおもいます。

 数字は全て、実質値で、各項目の今年度に比べての伸び率(カッコ内は今年度)を見てみます。
GDP(国内総生産)1.8%(1.9%)、民間最終消費支出1.4%(1.2%)、民間住宅0.6%(1.1%)、民間企業設備3.9%(3.4%)、政府支出0.4%(1.3%)、輸出4.0%(4.8%)、輸入3.3%(3.4%)が生産面です。
 
 民間消費も、企業の投資も共に増加ペースが高まり経済成長を支え、住宅投資は伸び率減、政府支出は伸び率大幅減(補正予算でどうなるのか?)という見通しで、「民間の消費と投資が共に引っ張って1.8%成長を達成と見ています。特に消費の伸びに期待でしょう。 

 所得の分配面を見ますと、これは名目値ですが、国民所得2.8%(2.8%)、雇用者報酬2.4%(1.7%)、財産所得(利子・配当・地代・家賃など)5.5%(4.9%)企業所得3.1%(5.5%)となっています。(労働分配率はさらに低下か?)

 雇用者報酬は今年度の1.7%の伸びから来年度は2.4%の伸びになると見ていますが、安倍総理が3%賃上げの旗を振っても、総額で2.4%、一方で雇用者の伸びが0.7%(1.2%)の見通しですから1人当たりでは1.7%(雇用者の平均賃上げに相当)という見通しになっています。政府の現実的想定はこの程度という事でしょうか。

 消費者物価の見通しについては、上昇率は1%を超え、1.1%(0.7%)になると見ていますから賃金上昇のかなりの部分は物価上昇に食われるという見通しです。
 それでも、今年度の実績見込みは雇用者報酬1.7%で雇用者の伸び1.2%で1人当たりでは0.5%で消費者物価上昇0.7%、実質賃金上昇率はマイナス2%ですから、来年度はそれでも大分良くなるという事でしょうか。

 総じて見ますと、今年から来年にかけて景気は順調という状況を受けて、2018年度は消費、投資が共に経済をけん引するという形になっていますが、2%を目指すインフレが、後ろから追いかけてくるといった想定のようです。
 ただ、GDPに入らない対外投資からの所得を中心にした経常黒字は順調に拡大していて、来年度は22.8兆円、GDP比でも4%に拡大していきます。これは日本の資産になっていますが、経常黒字が大幅になることは円高を招く恐れが大きくこの辺りをどう判断しているかは、政府見通しには書いてありません。