tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2018春闘:冷静な労使の対応

2018年01月26日 15時16分21秒 | 労働
2018春闘:冷静な労使の対応
 昨日アメリカの通貨政策について微妙に変化と書きましたが、トランプ大統領は、ムニューシン発言に対し、即座にコメントを入れ、アメリカは「長期的にはドル高」を目指すと念を押してきました。

 それは結構ですが、この発言にしても、年3回の金利引き上げを前提にすれば、ドルの独歩高の可能性は経済原則でしょうから、本音は、なるべくドル高は回避という事なのでしょう。

 日本の政府経済見通しは、2018年度の円レートは、$1=¥112.6と、この3年来僅かな円安傾向を想定していますが、これも、アメリカの金利政策を読んでの事でしょう。
 アメリカは本音は、金利引き上げをしても、ドル高は最低限にとどめたいと考えているでしょうから、予断は許しません。

 アメリカのドル政策は当然当面する日本の2018春闘にも影響していきます。今春闘では政府がインフレ2%、名目成長3%を目指して(インフレで名目成長率が高い方が財政再建がやり易い)賃上げに減税の特典まで付けて介入してきていますが、春闘の当事者である労使の対応は、(双方の解説を聞く機会がありましたが)より冷静のようです。

 経営側・経団連の対応は、国際情勢も含めて見通しには慎重で、昨年より高い総額人件費の上昇を検討するにしても、当該企業の判断を重視し、賞与の増額、非正規従業員の正規化も含め、多様な方法を考慮すべきというのが指向するところのようです。
 一方、いわゆる非正規問題についても今年は特に積極的な改善策が提唱されています。

 労働側の連合の方は、ベア2%定昇2%相当という事で、4%程度を要求として掲げています。しかし同時に特筆すべきは、格差の縮小に例年より重点を置き、例年のサプライチェーン全体に均等な配分という言葉に「バリューチェーン」と書き加え、付加価値の均等は配分、それによる賃金の低い部門の底上げを強調しています。
 非正規問題については春闘の「ど真ん中に置く」と重視の姿勢です。

 こうした問題は本来、政府が政策の中心に置くべき問題で、これこそが日本の労組が労働サイドだけではなく、日本経済社会全体のバランスの良い成長を考えて行動するという外国労組にはない特徴を色濃く打ち出していという特徴点でしょう。

 順調にいけば、今年は、消費需要も少しは動き、安定成長路線に一歩前進することが十分期待できる環境でしょう。企業・消費者の「円高・景気失速」といった不安は、アメリカの不安定もあり、民間の手ではどうにも払拭できないところですが、これに対する政府の対策は、「日銀の異次元緩和の継続」しかありません。結果オーライを祈る所です。

 それでも恐らく今春闘では、昨年以上の賃上げになるのではないでしょうか。安倍総理はアベノミクスの成果と胸を張るでしょう。しかし、安倍総理が何も言わなくても、同様の結果が多分出るのでしょう。
 
 日本の労使ほど、賃金、物価、経済、雇用などに共通の理解をもっている労使関係は他には見られません。
政府は自分の都合で春闘に介入するのではなく、労使を信頼して任せ、安心していてもいいと思うのですが。