tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人間と資本:資本蓄積の光と影

2018年01月19日 15時42分10秒 | 経済
人間と資本:資本蓄積の光と影
 前回は、人間が「より豊かで快適な生活」を目指すのであれば、資本の蓄積が必要だと書きました。「より豊かで快適な生活」のためには「より大きな経済価値の生産」が必要で、そのために人間は、蓄積した資本を活用して生産性を上げ、経済成長を実現してきました。

 資本蓄積はその意味で必要条件です。経済成長のために資本を蓄積することは、特に新興国などでは主要な国家目標です。足りなければ借金して、経済成長の中から返済することもあります(日本の新幹線建設もそうでした)。

 こう見て来ますと資本蓄積は「光」の面ばかりのようですが、現実には「影」もありそうです。日本は今、資本蓄積の影の部分に入っているようです
 考えてみてください。いま日本では、貯金に金利が付きません。市中銀行が日銀に預けるとマイナ金利です。

 噂では、われわれが貯金をしても、マイナス金利ではありませんが、貯金通帳などを有料にして、蓄積したおカネの管理料をとるという考えもあるようです。実質的マイナス金利です。

 「人間と資本」の初回に書きましたように、貨幣が生まれて人間は経済価値を貯蔵できるようになりました。タンス預金でもいいですが、通常は金融機関に預けます。
 金融機関は皆さんからお金(預金)を集めて、おカネを使いたい人に貸すのです。そこで金利が発生します。

 おカネを使うのを我慢して銀行に預けた人は利息を受け取り、銀行から借りた人は金利を払います。貸出金利より預金金利は低いので、その差は銀行の収入になります。
 これが銀行の本来の役割ですが、みんなが資本を蓄積して預ける人ばかりになり、借り手がいなくなると銀行という仕事は成り立ちません。

 今の日本は、この状態になっていて、まさに「 銀行受難の時代 」です。
 何故こんな事なったのでしょうか。理由は2つでしょう、1つは、この間までなが~い不況で、高齢化という心配もあり国民は生活を切り詰めて貯金を増やします。企業も不況が心配でおカネを貯め込みます。

 政府・日銀は、皆におカネを使ってもらおうと、金融政策、財政政策でおカネをジャブジャブにします。しかし、家計も企業も 将来が不安 ですから、やっぱり使いません。経済学も経済政策も役に立たなくなっています。

 どうもこれは「資本蓄積の行き過ぎ」のようです。おカネだけは豊かになったけれども・・・。
 最初に書きました米農家で、収穫したコメを何俵食べて、何俵を種籾に残すかという例えで言えば、種籾は沢山あるが、それを使って収穫を増やそうというより、不作になったら大変だから、将来の食糧確保にとっておこう、という事でしょうか。
 これでは将来は益々不安でしょう。

 資本蓄積は大事ですが、何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、消費と貯蓄がバランスよく進んでいくような「 社会全体の雰囲気」を作り出すことが、一番大切なようです。
 今の日本は、どうもそれに失敗してしまっているような感じがしてなりません。その原因の特定や、本格的な対策が必要のようです。