tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

アメリカ、NAFTA再交渉へ始動

2017年07月19日 14時19分25秒 | 国際経済
アメリカ、NAFTA再交渉へ始動
 万年赤字の止まらないアメリカですが、貿易赤字削減と雇用の増加を目標とするトランプ政権、先ずは、北米自由貿易協定の見直しから開始という事でしょうか。

 トランプ大統領は、アメリカのラストベルトが衰退したのは自由貿易を進めたからだという考え方のようで、結果が「自由貿易協定の見直し」という事になるのでしょうが、ラストベルトが衰退したのは、アメリカの競争力が弱くなった、つまり、コスト(主要なコストは人件費)の上昇が、生産性に上昇を上回り、あるいは品質の面から競争力がなくなって、良いものを効率よく作る国に負けたという事です。

 負けたという事を自覚すれば、本来は、アメリカの栄光を取り戻すためには「頑張って良いものを効率的に作るぞ」と決心するのでしょうが、そうした真面目な努力は苦手なのでしょうか、自分の努力不足は棚に上げて、輸入制限とか、アメリカに工場を作らないのは怪しからんとか、 外国のせいにばかりするようです。

 もともと人件費の安い国に工場を作って、安いアメリカ・ブランドを世界中に売ったのはアメリカですが、自国産業の空洞化で、今度は人件費の高いアメリカに投資しろ、輸出で儲けるのは怪しからん、という事なのでしょう。

 加えて、もう1つ重要なことがあるようです。それは、「為替条項」が入ることです。
 トランプ大統領は、かつてから、中国や日本を為替操作国だと名指したりしていますが、1985年のプラザ合意を思い出していただければ、為替レートが一国経済にいかなる影響を及ぼすかは明らかでしょう。

 日銀の異次元金融緩和で、$1=¥120までいった円レートですが、この所は110円前半です。FTAなどでは何年かけて数%の関税をゼロにするとかが交渉されますが、1割の為替レートの変更はそんな努力をあざ笑うかのように、1国の競争力に影響します。

 為替レートは価値の基準、度量衡で言えば、『メートル原器』のようなものですから、これが勝手に変わったのでは、経済計画、経営計画などは出来ないはずです。
 戦後、固定レートがいいといったのもアメリカで、変動相場制になったのも、アメリカの赤字が原因です。

 基軸通貨国アメリカの基軸通貨「ドル」の価値にが勝手に動かれては、 まともな国際経済意は成り立ちません。
 その意味で、アメリカが、為替レートはあまり動かさないようにしようと言うのならいいのですが、それなら、マンハッタン中心に動く、 国際投機資本の動きをどうするのでしょうか。

 アメリカの貿易赤字を減らすために、他国の通貨変動に対し規制を掛けるのであれば、アメリカこそが為替操作国という事になるでしょう。
 プラザ合意という苦い経験を持つ日本は、為替についても主張すべきことがありそうです。