tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

高度プロフェッショナル問題、連合、日本的労使関係

2017年07月26日 10時39分55秒 | 労働
高度プロフェッショナル問題、連合、日本的労使関係
 いわゆる残業ゼロ法案、一口で言えば、高度の専門能力を活用して、他人には出来ないような専門的な仕事をする従業員については、年収1,075万円の以上の場合、残業協定が適用されないという制度の導入について、連合内部が大きく揉めているようです。

 連合の反対で長らく棚晒しのこの法案について、改めて、連合が休日日数、インターバル制度、健康診断などの条件付きで認める意向を政府に伝えて事がきっかけです。
 問題は、連合のその意思決定の際、組織全体の合意をしっかり取り付けていなかったことのようです。

 労働組合組織というのは、最も民主的でなければならない組織の1つでしょうから、トップ批判が出ることは健全なのでしょう。
 報道の様子でも、問題になっているのは、方針の中身より、組織運営の在り方が主要な問題点といった印象を受けます。

 超長期の不況の中で、労組の活動が不可避的に活発さを欠いてきたことは否めません。こうした問題をきっかけに、連合内の活発な論議が復活してくることは、問題の中身は兎も角、ある意味では必ずしも悪いことではないという見方もできるのではないでしょうか。

 勿論、組織運営の問題は連合としては、最大の課題でしょう。しかしその問題と同時に、当然「高プロ」問題への取り組みの在り方が論議されなければならないでしょう。
 そしてそれは当然に、経営サイドを巻き込み、政府を巻き込んだ「政労使」の本格的な話し合いに発展していくことが考えられます。

 いわゆる「失われた30年」の中で、経営は非正規雇用の増加を中心にコストカット注力の経営に走り、労働サイドも深刻な環境の中で適切な対抗手段を持ちえず、春闘は終焉、日本的労使関係は死んだ、などといわれてきた中で、日本経済の回復基調とともに、改めて真剣で健全な労使関係の復活が、「高プロ」問題をきっかけに進むとすれば、今回の問題は決して無駄ではなかったという事にもなりうるのではないでしょうか。

 労働条件の問題は、政府の専管事項ではありません。本来は労使関係という土俵で、労使が専管して論議するべきものです。その結果が法律になるというのが物の順序でしょう。
 労使が声を挙げず、現実にも現場にも理解の浅い政府が主導すべき問題ではないはずです。

 連合内部の問題はいろいろあるでしょう。しかし、岡目八目かもしれませんが、傍らから見ていると、何とかこうした問題をきっかけにしてでも、活発で積極的、新たな日本経済社会を作るために、産業と人間に関わる問題については、労使関係、労使が主役という、あるべき状態に近づくことが出来れば、日本はもっと良くなると考えているところです。