tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

OECD諸国と日本、所得格差の立ち位置は?

2017年07月01日 12時45分56秒 | 国際経済
OECD諸国と日本、所得格差の立ち位置は?
 所得格差の問題をいろいろなレベル、角度から見てきていますが、今回はOECD諸国の中での日本の立ち位置を見てみましょう。

 所得格差の程度を表す数字は、ご存知の「ジニ係数」です。完全平等の場合(すべての人の所得額が同じ)はジニ係数=0で、完全不平等(1人の人がすべての所得を得ている場合)はジニ係数=1で、現実はその中間にあるという事になります。

 どの程度の数字が適切かは、その国の国民の受け入れ方によって違いがあるでしょう。
 アメリカンドリームを掲げ、頑張って「夢実現」を信条とするアメリカは、ある程度の格化は受け入れる国と言われてきました。しかし、最近は少し変わってきたようで、夢を失ったラストベルト(錆びついた産業地帯)の人たちの支持でトランプ大統領が生まれた、などと言われます。

 日本は昔から「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」などと言われるように、格差を嫌う国のようです。
 現実に格差の少ない国と言えば、北欧諸国というのが常識ですが、この辺りはOECDの資料でもはっきりとしています。

 OECDが2015年に発表した加盟国(+ロシア)のジニ係数で見ますと
・スウェーデン 0.273  平等度 9位
・日本     0.336  同   26位
・アメリカ   0.389  同   31位
となっています。

 もう一つ厚生労働省が平成24年版「厚生労働白書」で説明している、日本の「相対的貧困率」の動きを見てみましょう。(相対的貧困率とは、全体を所得順に並べ、真ん中の人の所得(中位数)の半分以下の所得の人の全体の中での割合)
相対的貧困率:所得再分配前
・1995年前後   19%
・2000年前後   24%
・2005年前後   27%
・2010年前後   29%
と、まさに異常な上昇を続けています。おそらくは長期不況のせいでしょう。

相対的貧困率:所得再分配後(税、社会保障で調整された後)
・1995年前後   8%
・2000年前後   10%
・2005年前後   9%
・2010年前後   10%
となっていますが。国際比較しますと、アメリカ11% スウェーデン4%です。

 かつては所得再分配後のジニ係数は北欧並と言われたこともある日本ですが、長期不況による所得格差の拡大は否定できないようです。
 にわかには信じがたいような格差の拡大が起きてしまった日本ですが、2013年以降の円高是正、日本経済復活の動きの中でも、非正規労働者問題、児童の貧困率の問題等、この所の日本経済は、格差縮小にはあまり動いていまいように感じられます。

 この点を、最近の政府の考え方、税制や、働き方改革などの側面からも見ていきたいと思います。