tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「同一労働・同一賃金」と格差問題

2017年07月08日 13時03分36秒 | 労働
「同一労働・同一賃金」と格差問題
 前回指摘しました非正規労働の異常なまでの拡大は、いろいろな形で日本の格差社会化に、深刻な影響を齎しています。

 格差は所得だけではありません、就職氷河期に学業を終えた世代では、新卒定期採用の門が狭く、とりあえず非正規という方が増えました。その結果は、所得格差だけはなく、社会人として、企業人としての教育訓練格差、その結果のキャリア選択上の格差、生活が不安定で結婚できないといった問題、所得格差の長期化の結果の 保有貯蓄額の異常な格差、さらには子供の貧困率の上昇、などなどに拡大しています。

 これに対して、現政権は「働き方改革」の中で「同一労働・同一賃金」を中心概念に置いているようです。
 しかしそこには大きな認識不足があるように思われます。

 同一労働・同一賃金のガイドラインなどで見ると、正規と非正規で同じ仕事をしていたら、同じ賃金を支払うのが当然と考えているようです。
 然しこれは、日本の雇用制度の在り方から見れば、決定的な認識不足によるものという事になるでしょう。

 端的に言えば、正規社員の賃金は「新入社員から定年まで」の長期の雇用を前提とした賃金制度や賃金協定によって決まっています。人事ローテーションもあります。不慣れな仕事についても賃金は変わりません。属人給ですから正社員の賃金は往々仕事と見合っていません。
 
 一方非正規社員は、その時点で、特定の仕事をするために雇用されています。これは欧米流の「その職務をする人を採用する」のと同じです。そしてその賃金は仕事別で、通常地域のマーケットによって決まるのです。

 この2つ、全く違った決定基準を持つ賃金を、偶々、今同じ仕事をしているからその時点で同じにすべしと言ってもそれは不可能でしょう。
 
  もともと非正規社員というのは、正社員のように会社に献身するのではなく、働きたい時だけ、自分のできる仕事をしようという人たち、学生アルバイト、主婦パート、定年再雇用者などだったはずです。

 なのに、長期不況の中で、企業は苦し紛れに正規で働きたい人まで、安い非正規の賃金で雇用したというのが、格差社会をもたらした原因なのです。
 今本当に必要なことは、非正規で働く人は全て、本人が非正規を選んでいる人という本来の状態に戻すことでしょう。いわゆる不本意非正規をなくすることが本当の問題解決策で、これは「賃金問題」ではなく「雇用問題」なのです。

 現政権の掲げる「同一労働・同一賃金」は、日本の雇用の在り方についての基本的な認識不足からきていることを、産業界から、労使双方が声を上げて、特に経営サイドは、「人間中心」という本来の日本的経営に思いをいたし、問題の根本解決に向けた動きを展開すべき時と考えています。