tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

福祉社会概念が格差社会化を抑制

2017年07月03日 16時23分07秒 | 政治
福祉社会概念が格差社会化を抑制
 昨日は東京の都議会議員の選挙の日でした。結果は、今朝の各紙の報じたとおりの、都民ファースト圧勝、自民惨敗です。都民が(国政を背景にした)都政の現状に対して下した判断は、論評するまでもない現実です。
 あえて言えば、小池都知事の人気と自民党が自分で転んだことが半分々々でしょうか。東京都にとっても、日本にとっても、オリンピックがありますので、世界にとっても良い政治が進められることを願うばかりです。

 ところで本題の格差問題に話を戻しますが、最初にも述べましたように、資本主義が生き延びたのは、資本の強欲が支配した資本主義の中に「社会福祉の概念」が導入されたことと、産業・企業の現場において、資本家が後退し「経営者」が実権を握るようになったことが主因です。

 そこで先ず、国レベルの問題を取り上げたいと思います。ピケティの言うように、放っておけば所得格差は広がる傾向にあるのが通常のようです。この格差拡大にブレーキを掛けるために必要なのが、累進課税で所得の高い人からより多くの税金を取って、国民に広く均霑するように所得再配分を行う社会福祉の概念です。

 主要な対象は、子育て、教育、住居、医療、高齢者支援、などなどです。年金、医療などの社会保障の分野では、税金のほかに、社会保険料(社会保障税ともいわれる)の徴収で賄われます。

 そこで、国民所得のなかで、税と社会保険料の比率がどのぐらいかを「国民負担率」と呼び、この率が高いほど、福祉国家度が高く、格差の少ない国といわれています。
 国民負担率の国際比較をしますとこんな状況です(2014年)。
・フランス    66.2% (税40.9% 社会保険料27.3%)
・スウェーデン  56.0% (税50.2% 社会保険料5.7%)
・ドイツ     52.5% (税30.3% 社会保険料22.1%)
・イギリス    45.9% (税35.5% 社会保険料10.4%)
・日本      42.2% (税25.0% 社会保険料17.2%)
・アメリカ    32.7% (税24.4% 社会保険料8.3%)

 フランスは出生率回復のための児童手当が巨大、スウェーデンは福祉国家の典型。一方、アメリカは、自助努力のアメリカンドリームの国という事でしょう。日本はアメリカ寄りの中間でしょうか。
 
 しかし、国民負担率だけでは、大まかな傾向しかわかりません。現実に、ジニ係数や相対的貧困率の傾向と似た動きになっていることは明らかですが、より繊細な感覚で格差問題を論じる日本人の意識に応えるためには、もう少し中身に入ってみる必要があるようです。