goo blog サービス終了のお知らせ 

司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

論稿等一覧

2024-11-01 00:00:02 | My profile
【会社法関係】
拙稿「犯収法第 4 条第 1 項の取引時確認における『実質的支配者』の確認」月報司法書士2023年4月号
拙稿「「実質的支配者リスト」制度の創設と司法書士のマネー・ローンダリング対策について」月報司法書士2022年1月号
拙稿「公証人法施行規則の一部改正とマネー・ローンダリング対策について」月報司法書士2019年2月号
拙稿「実務の細部までわかる『株主リスト』Q&A」ビジネス法務2017年3月号
拙稿「株主リスト」を添付書面とする商業登記規則の改正」ビジネスロージャーナル2016年10月号
拙稿「『株主リスト』を添付書面とする商業登記規則の改正案等について」月刊登記情報2016年3月号(きんざい)
拙稿「詐欺的投資勧誘に関する消費者問題と商業登記規則の見直し」特定非営利活動法人京都消費者契約ネットワーク「KCCNニュース」2014年10月号
拙稿「司法書士の商業・法人登記業務及び企業法務関係業務の課題と展望」月報司法書士2014年6月号(日司連)
拙稿「公益法人等への移行後の役員等の任期」市民と法2012年12月号(民事法研究会)
拙稿「特別清算に関する登記」市民と法2012年10月号(民事法研究会)
拙稿「持分会社に関する登記実務上の諸問題」月刊登記情報2012年10月号(きんざい)

拙稿「商業登記実務相談室53『学校法人の理事長の変更の登記』」市民と法2011年4月号(民事法研究会)

拙稿「取締役権利義務者をめぐる諸問題」月刊登記情報2010年10月号(きんざい)
拙稿「商業登記実務相談室48『医療法人の理事の任期と平成18年改正医療法の経過措置』」市民と法2010年6月号(民事法研究会)

拙稿「会社法と商業登記法と実務のギャップ」月報司法書士2009年11月号(日司連)
拙稿「商業登記実務相談室43『取締役を選任し,または解任する株主総会の決議における定足数』」市民と法2009年8月号(民事法研究会)
拙稿「中小企業のための定時株主総会の基礎知識」納税月報2009年5月号
拙稿「会社法スキルアップ講座5 会社の計算と登記」月報司法書士2009年3月号(日司連)

拙稿「商業登記実務相談室38『一般社団・財団法人法施行に伴う登記手続』」市民と法2008年10月号(民事法研究会)
拙稿「電子公告における実務上の留意点」月刊登記情報2008年10月号
拙稿「株券の電子化と登記実務における留意点」月刊登記情報2008年9月号

拙稿「新株予約権の登記に関する実務上の留意事項」旬刊経理情報2007年4月10日号(中央経済社)
拙稿「会社法全面施行残された課題」新会社法A2Z Vol.24(第一法規)
座談会「新・会社法と商業登記の諸問題」登記インターネット2007年1月号(民事法情報センター)

拙稿「種類株式の登記の実務(下)」新会社法A2Z VOL.20(第一法規)
拙稿「取締役等の就任・退任をめぐる諸問題」月刊登記情報2006年12月号(きんざい)
拙稿「種類株式の登記の実務(上)」新会社法A2Z VOL.19(第一法規)
拙稿「株主総会議事録・取締役会議事録」市民と法2006年10月号(民事法研究会)
座談会「ケーススタディ 会社法施行後における司法書士の企業法務」月刊登記情報2006年9月号(きんざい)
拙稿「金融マンのための新会社法における商業登記簿のチェックポイント」月刊銀行実務2006年9月号(銀行研修社)
拙稿「会社法施行後の中小企業の登記実務」納税月報2006年8月号
拙稿「会社法施行に伴う商業登記事務の取扱い(下)」旬刊経理情報2006年7月10日号(中央経済社)
拙稿「会社法施行に伴う商業登記事務の取扱い(上)」旬刊経理情報2006年7月1日号(中央経済社)
拙稿「新会社法と司法書士の社会的責任」月刊登記情報2006年5月号(きんざい)
拙稿「『登記通達』の発出を受けて」新会社法A2Z VOL.13(第一法規)

拙稿「株式の相続問題」市民と法2005年10月号(民事法研究会)
拙稿「合同会社(日本版LLC)の概要」月報司法書士2005年9月号(日司連)
共稿「有限責任事業組合(LLP)制度の創設」月報司法書士2005年7月号(日司連)
拙稿「商業登記掲示板 泣き笑い千例集~登記官の本人確認~」月刊登記情報2005年5月号(きんざい)
拙稿「商業登記掲示板 泣き笑い千例集~1月1日設立~」月刊登記情報2005年4月号(きんざい)

【不動産登記法関係】
拙稿「相続登記の申請が義務化されます(後編)」納税月報2021年11月号(納税協会)
拙稿「相続登記の申請が義務化されます(前編)」納税月報2021年8月号(納税協会)
拙稿「改正相続法が不動産登記の実務等に及ぼす影響について」(家庭の法と裁判Vol.19 2019年4月号(日本加除出版)
拙稿「Q&A 中間省略登記の是非」週刊全国賃貸住宅新聞2007年5月28日(月)付22面「資産家の悩み プロが答える」
拙稿「総務担当者として知っておきたい 改正不動産登記法の実務Q&A」月刊企業実務2005年7月号(日本実業出版社)
拙稿「抵当権の時効による消滅」月報司法書士2003年12月号(日司連)

【その他】
拙稿「暴力団排除条例と司法書士会および司法書士の実務対応」市民と法2012年4月号(民事法研究会)
拙稿「登記実務と先例活用の重要性」日本加除出版株式会社「法の苑」第55号
拙稿「消費者問題と『会社法の在り方』」消費者法ニュース第82号(2010年1月31日発行)
拙稿「大阪高判平21・8・27と更新料返還請求訴訟事件の動向」月刊登記情報2009年11月号(きんざい)
拙稿「司法書士事務所の広告」月刊登記情報2009年11月号(きんざい)
コメント

「複数の役員に同時に欠員が生じた場合の措置」

2020-05-18 17:14:51 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務2020年5月5日・15日合併号に,実務問答会社法第42回「Ⅱ 複数の役員に同時に欠員が生じた場合の措置」が掲載されている。筆者は,黒田裕弁護士。

【要旨】
 定款で取締役の員数を6名以下と定める公開会社でない取締役会設置会社において,複数の役員に同時に欠員が生じたことから,現在の取締役会が,取締役権利義務者5名,現任の取締役2名によって構成されている場合,取締役会の構成員の合計は7名であり,定款で定める取締役の員数を超えるが,差し支えない。


 そもそも,会社法又は定款で定める取締役の員数が欠けた状態にあるからこそ,取締役権利義務者が生じているわけであるから,取締役権利義務者が「定款で定める取締役の員数」にカウントされるのは背理である。


 余談ながら,上掲黒田論文は,「取締役権利義務者」の語を用いている。最近の令和元年改正会社法に関する立案担当者の解説では,「権利義務取締役」である。

cf. 令和2年4月21日付け「社外取締役を置くことの義務付けと任期中における要件の喪失&充足の問題」

 どちらが一般的ということもないが,最高裁平成20年2月26日第3小法廷判決は,「役員権利義務者」の語を用いており,以来,私は,「取締役権利義務者」派である。

cf. 本ブログにおける「取締役権利義務者」に関する記事
https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/s/%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E6%A8%A9%E5%88%A9%E7%BE%A9%E5%8B%99%E8%80%85
コメント

「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合における代表取締役の予選の問題

2018-03-18 14:00:44 | 会社法(改正商法等)
 取締役会設置会社において「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合に,定時株主総会における任期満了改選の方法については如何?

 取締役会設置会社でない株式会社においては,取締役は,原則として代表権を有する(会社法第349条第1項本文)のであり,「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合の株主総会の決議は,代表取締役以外の取締役から代表権を剥奪する行為である。したがって,会社法第349条第3項には「取締役の中から代表取締役を定める」とあるとはいえ,取締役の選任を決議する定時株主総会において,同時に代表取締役を選定する決議を行っても,全く問題はない。

 しかし,取締役会設置会社にあっては,これとは異なる。取締役会設置会社においては,「取締役会は,取締役の中から代表取締役を選定しなければならない」(会社法第362条第3項)のが原則であるから,「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合においても,株主総会は,取締役の中から代表取締役を選定しなければならないのである。

 すなわち,取締役会設置会社にあっては,「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合においても,株主総会は,未だ取締役に就任していない者の中から代表取締役を予選することはできない。定時株主総会における任期満了改選の場合には,定時株主総会の終結後に取締役会を開催して代表取締役を選定するように,いったん定時株主総会を終結させて,取締役の退任及び就任の効力が生じた後に,臨時株主総会を開催して,代表取締役を選定しなければならないこととなる(取締役の構成が同一であれば,定時株主総会における選定であっても医療法人等のように予選として救済され得るが,構成が変わる場合には,不可である。)。

 この理は,臨時株主総会において,ある者を取締役に選任し,当該者を代表取締役に選定したい場合にも当てはまる。例えば,4月1日から取締役に就任し,代表取締役にも就任する予定の者を3月中の臨時株主総会において選任しようとする場合においては,4月1日に取締役に就任する効力が生じた後に開催される取締役会又は株主総会で代表取締役に選定しなければならない。「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合であっても,未だ取締役に就任していない者の中から代表取締役を予選することはできない,である。

cf. 平成29年2月24日付け「株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効(最高裁決定)」


 ところで,原則的には上記のとおりであるが,「条件付き決議」ということであれば,OKということになりそうである。

 「代表取締役選定の件」の議案の内容として,

「第〇号議案「取締役選任の件」が承認可決されて,被選任者〇〇氏から就任承諾がされ,平成〇年4月1日に取締役の就任の効力が生ずることを条件とする」

という点を明記すべきということである。

「平成〇年4月1日から就任する」という「期限付き決議」ではなく,上記のとおりの「条件付き決議」である。

「そんな当たり前のことを・・」であるが,3月の臨時株主総会の時点では「未だ取締役に就任していない者」について,代表取締役に選定する決議を行う上では,議案の内容として,「条件」を明記すべきである。

 となると,話は戻って,定時株主総会における任期満了改選の場合においても,「条件付き決議」ということをきちんと明記すれば,定時株主総会における選定決議もOK(明記しなければ不可)ということになりそうである。

「株主総会の決議によって代表取締役を定める」旨の定款の定めがある場合であっても,取締役会における選定権限が奪われるわけではないというのが通説であるので,定時株主総会における任期満了改選の場合においては,原則どおり取締役会で選定決議を行う,というのが無難な選択であるが。


 なお,前提となる「取締役の選任」の議案は,複数名を選任する場合,一つのパッケージと考えがちであるが,本来,1候補1議案であると解されている(中間試案の補足説明「株主提案権」の項を参照。)。したがって,複数名の候補者のうち,一部の者については賛成多数で選任され,その余の者については賛成少数で選任されないという事態も起こり得る。賛成多数で選任された者が3名を割り込めば,権利義務承継の問題も生ずる。万一このような事態が生じたとしても,代表取締役の候補者が取締役として選任されていれば,代表取締役の選定決議については,特段の問題はない。

cf. 平成20年6月13日付け「代表取締役権利義務者」
コメント

実体のない会社の登記と電磁的公正証書原本不実記録罪

2017-05-10 17:50:23 | 会社法(改正商法等)
神戸新聞記事
https://news.goo.ne.jp/article/kobe/nation/kobe-20170510004.html

 わかりにくい記事であるが,実体のない会社の登記がされているが,その実,その本店の所在場所は,暴力団事務所として使用されている,ということであろうか。

 そうであれば,電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪とは,言えないであろう。

「複数の役員が辞職したとされ、役員不在の状況になっている」(上掲記事)とあるが,会社法又は定款で定めた員数を欠く場合,辞任した取締役は,取締役権利義務者となるので,厳密に言えば,「不在」とは言えない。
コメント

取締役権利義務者に関する登記はいかが(その2)

2016-06-30 00:27:40 | 会社法(改正商法等)
日経記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO0424229029062016DTA000/

 上場企業の定時株主総会で,会社提案の取締役選任議案が否決。従来の取締役が取締役権利義務者となった。

 やはり,「取締役権利義務者」に関する登記制度が必要では?

cf. 平成24年12月18日付け「取締役権利義務者に関する登記はいかが」
コメント

取締役権利義務者に関する登記はいかが

2012-12-18 12:38:51 | 会社法(改正商法等)
 商業登記においては,真に遺憾ながら,取締役が任期の満了又は辞任により退任しているにもかかわらず,後任者の選任を懈怠(会社法第976条第22号)している事例が散見される。

 このような場合の法令上の手当てとして,任期の満了又は辞任により退任した取締役は,それにより取締役が欠けた場合又は会社法若しくは定款で定めた取締役の員数が欠けた場合には,新たに選任された取締役(一時取締役の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで,なお取締役としての権利義務を有するものとされている(会社法第346条第1項)。

 そして,登記実務においては,会社法又は定款で定めた取締役の員数が欠けることになる任期満了又は辞任による退任の登記は,受理されず,後任者の就任の登記と同時にしなければならない(最判昭和43年12月24日民集22巻13号3334頁)という取扱いである。

 ところで,登記簿上,任期中の取締役と,辞任又は任期満了により退任して権利義務を有するに過ぎない取締役を区別して,これを登記する方法は,現行法上は存しない。

 したがって,後任者が就任したことによって取締役権利義務者がその任を解かれた場合であっても,登記記録に表示されるのは,あくまで「辞任の旨及び原因年月日」又は「任期満了により退任した旨及び原因年月日」という取扱いである。取締役権利義務者が死亡した場合には,後任者が就任していなくても,死亡届を添付して,退任の登記をすることができるが登記記録上は同じ取扱いである。

 しかし,果たして,それでよいのか?

 確かに,取締役の任期は,最長10年まで認められるから,退任の登記がされるまでは,取締役として任期中であるのか,取締役権利義務者として在任中であるのかは,登記記録からは判じない。そして,権限に差異はないから,取引の安全において弊害は生じない。しかし,退任の登記がされると,ある期間「取締役権利義務者」であったにもかかわらず,登記記録における外観からは,そうであったことが一見明らかではないのである。事後的にせよ,退任の登記をする際には,退任後のある期間,取締役権利義務者であったことが判じるような商業登記制度にすべきではないだろうか。

 例えば,取締役Aが平成20年6月30日の経過により任期満了退任となったにもかかわらず,後任者が選任されていないことから取締役権利義務者となり,その後,平成24年12月18日に死亡した場合の登記については,次のようにすることが考えられる。

「取締役A 平成20年6月30日退任」
「取締役権利義務者A 平成20年7月1日就任」
「取締役権利義務者A 平成24年12月18日死亡」

 現在の登記制度では,「取締役A 平成20年6月30日退任」の登記がされるのみで,平成20年7月1日から平成24年12月18日までの間,Aが取締役権利義務者であったことは,一見明らかではない。司法書士のように,商業登記制度に熟知した者が読み解くことができるに過ぎない。それで,「公示」と言えるであろうか。

 商業登記制度は,会社等に係る信用の維持を図り,かつ,取引の安全と円滑に資することを目的とする公示制度(商業登記法第1条)であるが,現に効力を有する事項を登記するのみならず,取締役権利義務者のように,登記上顕れていない事項についても(たとえ,その任を解かれた後であっても),登記をして「取締役権利義務者であったこと,その任が解かれた事由(死亡等)及び原因年月日」を公示することが望ましいと考える。

 いかがであろうか?

cf. 拙稿「取締役権利義務者をめぐる諸問題」月刊登記情報2010年10月号(きんざい)
コメント

取締役権利義務者をめぐる諸問題

2010-09-29 17:04:25 | 会社法(改正商法等)
 月刊登記情報2010年10月号に,拙稿「取締役権利義務者をめぐる諸問題」が掲載されている。

 このブログでも取り上げたいくつかの論点をまとめ直したものであるが,機会があれば,ぜひご覧ください。
コメント

取締役権利義務者の破産手続開始の決定

2010-08-22 18:40:08 | 会社法(改正商法等)
 取締役権利義務者(会社法第346条第1項)が破産手続開始の決定を受けた場合,どうなるか?

 この場合,平成17年改正前商法下においては,取締役の退任の登記が認められていたが,同様に取り扱ってよいであろうか?

 取締役が破産手続開始の決定を受けた場合は,会社法上の欠格事由には該当しない(会社法第331条参照)が,株式会社と取締役との関係は,委任に関する規定に従う(会社法第330条)ことから,委任の終了事由に該当し(民法第653条第2号),退任することとなる。

 取締役権利義務者の場合も,同様に取締役権利義務者の地位を失い,退任の登記を認めてよいと考えるのが自然なように思えるが,果たして委任に関する規定に従うと考えてよいであろうか?

 この点に関する論文等は,見当たらないようであるが,葉玉さんは,取締役権利義務者について,「会社法第330条が適用される」との説であるようだ。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50903410.html#comments

 しかし,取締役が任期の満了又は辞任により退任した時点で委任関係は終了しており,会社法第346条第1項の規定は,委任の終了後の処分に関する民法第654条の規定の特殊な類型であるといえる。また,会社法第330条は,単に「役員」と規定しており,役員権利義務者を含む旨を規定していない。したがって,取締役権利義務者に関して,会社法第330条を「適用」して,委任に関する規定に従うと考えるのは妥当でないであろう。同条の適用又は類推適用を否定しても,「契約関係は承継されないが,契約上の個別の請求権を承継するということは背理ではない」(「論点体系判例民法6 契約Ⅱ」(第一法規)104頁)と考えれば,不都合はない。

 なお,会社法第346条第1項は,「任期の満了又は辞任により退任した役員」についてのみ,役員等に欠員を生じた場合の措置について定めており,他の事由(例えば,破産手続開始の決定を受けた場合)により退任した役員については適用されないことから,取締役権利義務者が破産手続開始の決定を受けた場合に,その地位を失うと考えることも可能といえそうである。

 しかしながら,取締役権利義務者の解任の可否に関する最高裁判決(平成20年2月26日民集62巻2号638頁)が,「会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者の職務の執行に関し不正の行為又は法令・定款に違反する重大な事実があった場合に,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもってこの者の解任請求をすることは,許されない」と判断していることとの平仄からも,取締役権利義務者が破産手続開始の決定を受けた場合に,民法第653条第2号の規定を適用又は類推適用して,その地位を失うと考えるのは妥当でないであろう。

cf. 平成20年2月26日付「取締役権利義務承継者の解任の可否(最高裁判決)」

 以上のとおり,些かの違和感はあるものの,取締役権利義務者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても,その地位は失わないと考えるべきであり,これを理由とした取締役の退任の登記は受理されるべきではないと考える。

 それでは,取締役権利義務者が,会社法第331条各号に掲げる欠格事由に該当した場合は,どうか?

 この場合は,平成17年改正前商法下と同様に取り扱い,取締役の退任の登記を認めてよいであろう。確かに,会社法第331条柱書は,「取締役」と定めているのみであるが,取締役の欠格事由に該当する者が取締役権利義務者の地位にあり続けるのは妥当ではないから,同条を類推適用して,取締役権利義務者はその地位を失うと考えるべきである。
コメント

代表取締役権利義務者

2008-06-13 00:09:52 | 会社法(改正商法等)
 株式会社アデランスホールディングスの件では、取締役全員が任期満了したことにより、代表取締役は、資格喪失となる。したがって、従前の代表取締役は、代表取締役権利義務者となる。この場合の肩書は、「代表取締役権利義務者」と表示すべきであろう。

 しかし、当該株式会社は、取締役権利義務者及び新任取締役の中から代表取締役を選定することができ、この場合の肩書は、「代表取締役」と表示することになろう。

 株式会社アデランスホールディングスの適時情報開示からは、いずれとも読み取り難いが、「取締役権利義務者」を「取締役」と表示している点からすると、新たな選定行為はなされていないと思われる。
https://www.release.tdnet.info/inbs/351d05f0_20080529.pdf

 なお、「代表取締役権利義務者」は、辞任又は解任できないが、上記「代表取締役」は、代表取締役としては辞任又は解任できるとするのが、登記実務の先例である。
コメント (1)

取締役権利義務者の辞任の可否

2008-06-03 17:47:08 | 会社法(改正商法等)
 株式会社アデランスホールディングスの事件で、取締役権利義務者が生じたことから、その辞任の可否が話題となっている。
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_a20d.html

 旧商法下の登記実務においては、取締役権利義務者の辞任は不可とされていたが、会社法の下でも、「取締役の権利義務を有する者は、その地位が法律の規定により与えられたものであるため、辞任することはできず、また、株主総会の決議により解任することもできない」(松井信憲著「商業登記ハンドブック」(商事法務)406頁)と解されている。

 解任ついては、先般、最高裁の判決が出ている。

cf. 平成20年2月26日付「取締役権利義務承継者の解任の可否(最高裁判決)」

 ここで、株式会社アデランスホールディングスのケースでは、取締役権利義務者が9名、新任取締役が2名であり、定款の規定が「12名以内」の取締役会設置会社であるところから、利害関係人の申立てにより、一時取締役の職務を行うべき者1名の選任がなされれば、取締役権利義務者9名全員が退任(権利義務を負う状態の終了)に追い込まれるようにも思われる。

 しかし、会社法施行に伴い監査役が任期満了となった事案で、仮監査役の選任が認められなかったことから、上記の場合、「取締役権利義務者が存しているので、取締役が欠けたる状態ではなく、仮取締役を選任する必要はない」との判断がなされるものと思われる。

cf. 平成18年5月22日付「会社法施行に伴う仮監査役選任申立は不要」

 したがって、速やかに臨時株主総会を開催して、後任取締役を選任するしかないということになる。
コメント (2)

アデランスホールディングスの株主総会で、7取締役の再任議案が否決

2008-05-29 14:39:23 | 会社法(改正商法等)
 株式会社アデランスホールディングスの株主総会で、社長ら7取締役の再任議案が否決された。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20080529-OYT1T00465.htm?from=main2

 よって、現在、取締役権利義務者9名と取締役2名(新任)で、計11名。上場企業では、異例の事態となっている。
https://www.release.tdnet.info/inbs/351d05f0_20080529.pdf
コメント

取締役権利義務承継者の解任の可否(最高裁判決)

2008-02-26 16:46:27 | 会社法(改正商法等)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35802&hanreiKbn=01

 「会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者に対する解任の訴えは許されない」とする最高裁判決が出ている。

 従来の先例の立場を維持するものである。

 「会社法第854条は、解任請求の対象につき、単に役員と規定しており、役員権利義務者を含む旨を規定していない。」「株主は、仮役員の選任を申し立てることにより、役員権利義務者の地位を失わせることができる。」ことが理由とされている。

 ちなみに、取締役の任期満了後も選任懈怠が続き、権利義務を承継している場合の議事録等の記載においては、「取締役」と記載される例が多いと思われるが、「取締役」ではなく、「取締役権利義務者」と記載すべきである。
コメント