司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

継続会の開催と取締役等の任期の問題(補遺)

2020-04-22 19:15:40 | 会社法(改正商法等)
 鴻 常夫・清水 湛・江頭憲治郎・寺田逸郎編「商業登記先例判例百選」(有斐閣,平成5年)96頁に,吉戒修一「定時総会が定款所定の開催時期に開催されなかった場合の取締役及び監査役の任期」があり,次のとおりの解説がある。

 筆者の吉戒氏は,法務省民事局民事第四課長(現商事課長)を経て,当時法務省民事局参事官で,平成5年及び平成6年商法改正を担当。その後,東京高裁長官を経て,現在は弁護士。

「なお、派生する問題点として、定時総会が定款所定の開催時期に開催されたが終結に至らず、延期又は続行された場合(商法243条)の取締役及び監査役の任期満了の時点があげられる。この場合、昭和36年8月8日民事甲第1909号民事局長指示(登記研究170号79頁)は、定款に役員の任期を定時総会の終結の時まで伸長する旨の規定があれば、実際に定時総会が終結する時まで伸長されると解する。延期又は続行の決議に基づく継続会が定時総会が開催されるべき期間内に開催される場合であれば、この結論でよいが、継続会が定時総会が開催されるべき期間後に開催される場合は、定時総会が開催されるべき期間の満了日をもって取締役又は監査役は任期満了により退任することになると解すべきである(東京高決昭和60・1・25判時1147号147頁)。」

【要旨】
「継続会が定時総会が開催されるべき期間後に開催される場合は、定時総会が開催されるべき期間の満了日をもって取締役又は監査役は任期満了により退任することになる」

 従来の登記実務の考え方は,この整理である。

 私は,最近の法務省の救済的Q&Aを踏まえても,継続会が開催される場合には,上記の整理が妥当であると考える。

cf. 令和2年4月16日付け「継続会の開催と取締役等の任期の問題」

令和2年4月20日付け「継続会の開催と会計監査人のみなし再任の問題」


 しかし,数年来の実例として,継続会の終結の時に任期満了になったとして重任等の登記がされたものがまま見受けられるようである(おそらく解釈を誤ったものと思われるが,柔軟な解釈を採った可能性もある。)。

 今年の定時総会の傾向として,コロナウイルス感染症対応の問題から,継続会の開催を選択する上場会社が多数に及ぶことになりそうである。

 実務の混乱を回避するために,法務省あたりから,「継続会の開催と取締役等の任期」に関する登記事務の取扱いが明確になるよう,Q&A等で周知する必要があるのではないか。
コメント    この記事についてブログを書く
« テレビ電話機能を利用した定... | トップ | 一律10万円の給付金の「借... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

会社法(改正商法等)」カテゴリの最新記事