司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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定時株主総会の「継続会」と役員変更に関する諸問題

2020-05-29 11:44:59 | 会社法(改正商法等)
令和2年5月29日付け「定時株主総会の「継続会」と役員変更に関する登記実務の取扱い(法務省Q&A)」

1.継続会が開催された場合の定時株主総会の終結の時とは
 当初の株主総会と当該継続会とは同一の株主総会であると認められるので,この場合の改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については,当該継続会の終結時までとなる。
⇒法務省Q&A(新しい考え方)。従来の考え方は,後掲令和2年4月22日付け「補遺」の記事を参照。

2.当初の株主総会において役員等の改選が可能か
 継続会を開催する場合において,当初の株主総会において役員等を改選する必要があるときは,継続会の開催までに相当期間を要することがあることから,当初の株主総会における決議(会社法第329条第1項)により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,その後任を選任する方法によることも可能であると考えられる。
⇒法務省Q&A(さらに新しい考え方)


 ところで,1の立場からすれば,2の「当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとする」というのは,会社法又は定款で定める任期の短縮となる。

 したがって,会社法において,これを可能とする法理があるのかが問題である。

(1)取締役の場合
 法務省Q&Aは,おそらく会社法第332条第1項ただし書の規定により,株主総会の決議によって任期の短縮が可能と解しているものと思われる。しかし,この規定は,従来,選任の時点において任期を短縮して選任することを可能にするものと解されていたと思われる。在任中の取締役について,株主総会の決議によって,その任期を短縮するということが,果たして許容されるのか,疑問である。実質的には「解任」であるから,従来,このような「任期短縮」の議論がなかったのは当然である。定款の変更によるべきであろう。

(2)会計参与の場合
 会社法第334条第1項の規定が上記第332条第1項ただし書の規定を準用しているので,同上。

(3)監査役の場合
 監査役の場合,その地位を保障する観点から,取締役のように任期の短縮を可能とすることは,認められていない。したがって,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある監査役の任期が満了するものとすることは,不可である。

(4)会計監査人の場合
 会計監査人の場合,取締役のように任期の短縮を可能とする規定は,置かれていない。したがって,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある会計監査人の任期が満了するものとすることは,不可である。
 また,通常は,みなし再任(会社法第338条第2項)の措置がとられるであろうから,やはり継続会の終結の時に任期満了となるものと解される。当初の株主総会の決議により,みなし再任の時期をコントロールすることはできないであろう。


 というわけで,最初の議論に戻って,

(再掲はじめ)
 従来の登記実務の考え方からすれば,定時株主総会の開催時期について3か月云々の定款の定めがある株式会社においては,例えば,定時総会を令和2年6月29日,その継続会を同年7月29日に開催するという場合,吉戒解説のとおり,現任の取締役等は,「令和2年6月30日任期満了により退任」となる。

 したがって,

・ 現任の取締役等が,6月29日開催の先の株主総会の終結の時に辞任し,後任者が同時に就任することとして,「令和2年6月29日辞任」&「同日就任」とする。

・ 後任者の就任の日を令和2年7月1日と設定することによって,「令和2年6月30日退任」&「令和2年7月1日就任」とする。
(再掲おわり)

のいずれかの選択を考えるべきではないか。

 いずれの場合も,会計監査人については,別論(後掲令和2年4月20日付け記事を参照)である。

cf. 令和2年4月23日付け「継続会の開催と取締役等の任期の問題(補遺の補遺)」

令和2年4月22日付け「継続会の開催と取締役等の任期の問題(補遺)」

令和2年4月20日付け「継続会の開催と会計監査人のみなし再任の問題」
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