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縄文時代の気候変動危機(北大道新アカデミー2022前期)

2022-04-13 11:06:43 | 講演会、学成り難し・・・

国木田大「縄文時代の気候変動危機を考える」を聴講

北大道新アカデミー2022年度前期講座(道新文化センター)の文系講座は「人間は危機にどう対応してきたか」を共通テーマに計8回の講義が計画されている。テーマ設定の意図について事務局は「新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、私たちは大きな岐路に立たされています。人類がどのように危機を克服したのか、さまざまな歴史のシーンから探っていきます」と述べている。時宜にかなった企画である。第一回、第二回を聴講した。

講師の北大准教授国木田大氏(考古学研究室)は、放射線炭素年代測定、炭素・窒素同位体分析、フィールド調査を武器に活躍する先史文化研究者。縄文土器の付着物「お焦げ」から食性の変遷を調べた業績などで知られる。

 

◆国木田大「縄文時代の気候変動危機を考える1、前半の激動期への環境適応」

2022年4月9日

  • 感染症と考古学:縄文時代入江貝塚の筋萎縮症異常肢骨、弥生時代青谷上寺地遺跡の結核罹病カリエス人骨、奈良時代疫病大流行などの事例をあげ、文字がない時代の考古学の意義に触れ、縄文時代後期の人口激減は疫病なのか、気候・環境変動なのか、と問い掛けた。
  • 縄文時代の年代をめぐる議論及び年代推定法を紹介し、縄文時代の始まりは気候の激変期で約1,500年前頃から気温が急激上昇し縄文前期は温暖だったが、13,000~11,500年前に急激な寒冷化が起きている。
  • 酸素同位体比、植生変化、地形変化から推定法について具体的事例で解説し、縄文時代後期の中部地方人口激減は寒冷化の時期と一致するがその因果関係は何なのか? と問い掛ける。

そして、土器の発明は気候変動に伴う新たな資源開発のためであり、しかも各地域で同時多発的に発生した環境適応戦略だったのではないかと推論した。さらに、石刃鏃文化や暁式土器の調査から、北海道と大陸・サハリンとの関係を鑑みると寒冷化に伴う集団の南下拡散があったと推定した。気候変動をきっかけにして人と社会に動揺があったのは確かだろう。

専門的な要素が多く難解な部分も多かったが、多くの新しい知見が得られ有意義なひと時だった。

言うまでもなく、人口の増減、社会・部族(文化)の盛衰は気象要因だけでなく多様な要因が関係してくる。疫病や災害然り。その他にも人口増による食糧難から部族間の紛争や環境破壊が起こり、社会・文化が消滅した事例は枚挙に暇がない。イースター島やインカ文明の消滅もその一つ。次回は何を語るか、期待したい。

言うまでもなく、人口の増減、社会・部族(文化)の盛衰/衰退は気象要因だけでなく多様な要因が関係してくる。疫病や災害然り。その他にも人口増による食糧難から部族間の紛争や環境破壊が起こり、社会・文化が消滅した事例は枚挙に暇がない。イースター島やインカ文明の消滅もその一つ。次回は何を語るか? 期待したい。

◆国木田大「縄文時代の気候変動危機を考える2、後半の寒冷期への環境適応」

2022年4月30日

  • 縄文時代前半期(早期・前記)の温暖化でクリ栽培や豊富な資源活用が可能になり、三内円山遺跡のような繁栄した集落が形成された。三内円山遺跡では、クリやクルミなど多種類の種子が利用されていたがクリ栽培があったと推定される。他にも、ニワトコ、ムササビ、ノウサギ、サメ、ブリ、鳥、サケ・マスなどを利用していた。
  • 縄文時代中期以降の寒冷化は何をもたらしたのか? 

寒冷化に伴い海水準が低下するが、クリに代わって低地・湿潤な場所に適するトチノキの利用が増えて来る。トチノキの実はアク抜きしないと食用に適さないが、水に晒す、火にかけ木灰を使うなど水場の形成などが確認できる。

  • 寒冷化に伴い三内円山遺跡など大規模・拠点集落は消滅し、小集落に分割し周辺に散在するようになる。分散した人々が共同墓地の運営・祖先祭祀を行う場として環状列石を構築したのではないかと推察される。

講師は、講義を以下のように集約した。

  • 縄文時代前半期は温暖期であり、気候の安定化が、三内円山遺跡などの大規模集落・長期継続の拠点集落を生み出した。
  • 縄文時代後半期、特に中期後半と晩期前半は寒冷期であり、三内円山タイプの拠点集落は維持できず分散する。
  • 縄文時代後期前半には環状列石が登場し、分散した集団の拠りどころとして記念物が構築され、同族の結合を再確認する場として機能した可能性が考えられる。
  • ただし、寒冷化の影響はあまりなかったとする説もある(阿部芳郎2017など)。
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