豆の育種のマメな話

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世界最大イグアスの滝に遊ぶ,「何だ,こりゃあ!」

2011-06-01 18:31:21 | ラテンアメリカ旅は道連れ<南米旅日記>

イグアスの滝

 

イグアスの滝(カタラタス・イグアス)は東京都がすっぽり収まるほどの面積を有するイグアス国立公園の中,ブラジル,アルゼンチン,パラグアイの国境が交わるところにある。ナイアガラの滝,ヴィクトリアの滝とあわせて世界三大瀑布と称されるが,その規模は,初めて訪れた人に「何だ,こりゃあ!」と思わず叫ばせるほど,規模で言えば世界一。

 

滝の水量は多いときで毎分36億リットル(ナイアガラ17千万,ヴィクトリア5億),滝幅は2.7km(ナイアガラ1km,ヴィクトリア1.7km),滝の数は水量が少ない季節で150,水量が増えると300近くにもなるという。イグアスの滝に圧倒されたルーズベルト元大統領夫人が「かわいそうな私のナイアガラ」とつぶやいた言葉が,今でも語り継がれている。

 

拠点となるのはブラジルのフォス・ド・イグアス,アルゼンチンのプエルト・イグアス。双方の町には空港があり,ブラジル国内からはフォス・ド・イグアス空港,ブエノスアイレスからはプエルト・イグアス空港を利用する。また,パラグアイ側の町はシウダ・デル・エステで,日本が援助して開いた空港はあるが便数は少ない。パラグアイからは「友情の橋」を渡り,ブラジルのフォス・ド・イグアスを経由して滝に至る。

 

ブラジル側の観光には,公園入り口のバスターミナルから専用のバスを利用し,ホテル・トロピカル・ダス・カタラタスの前で降り遊歩道を散策する。終点は,「悪魔の喉仏」の滝壺まで。アルゼンチン側は車の乗り入れを規制してエコトレインが走る。滝の上方,下方に遊歩道があり,「悪魔の喉仏」を見下ろす地点まで行くことが出来る。遊歩道を徒歩で散策するのが一般的だが,滝壺へのボートでのクルーズは豪快,ヘリコプターによる空から眺めることも出来る。

 

ブラジルの友人が「イグアスの滝はブラジルから眺めるのが素晴らしい」と言えば,アルゼンチンの友は「その素晴らしい滝はアルゼンチンのものだ」と応える。公園には400種を超える鳥類が観察され,珍しい蝶やほ乳類を見ることも出来る。近くに世界一を誇るイタイプーダムが出来たが,それを契機に両国には自然を守ろうとの気運も高まっている。

 

公園内のホテルは,ブラジル側にトロピカル・ダス・カタラタス(格調高い伝統のホテル),アルゼンチン側にシエラトン・イグアス・リゾート(インターナショナル型のホテル)だけであるが,フォス・ド・イグアスやプエルト・イグアスには大小のホテルがある。特に,フォス・ド・イグアスはホテルやレストランの数が多いので,観光の拠点として適している。ただし,ブラジルはビザが必要なので要注意。

 

日本からのほとんどの南米ツアーには,必ずイグアス観光が入っている。この滝を楽しむには,ブラジル側滝を1日,アルゼンチン側滝を1日,イタイプーダムに1日,さらに脚をのばしてパラグアイのシウダ・デル・エステを訪れる余裕が欲しい。

 

 

国境のトライアングルを形成するこれらの町には,それぞれ異なる表情がある

 

フォス・ド・イグアスは,イタイプーダムの建設労働者が町を形成したことから拡大し,街路樹も大きく緑が豊富な,緩やかな坂の町。プエルト・イグアスは平原の続きのような町。シウダ・デル・エステは,赤土にまみれ,生活排水の臭いが漂う雑多な賑わいを見せる町。アルゼンチン,ブラジルからは電気製品など安い生活用品を求めて買い出しに訪れるシウダ・デル・エステはまさに国境の町である。

 

ブラジルとパラグアイを結ぶ「友情の橋」は,車が渋滞,オートバイ・タクシー,歩行者が大きな荷物を担いで行き交う。両国にイミグレーションや税関はあるが,住民はかなり自由に行き来している。渋滞する車には物売りの子供がよってくる。一つ前の車の窓から手を入れて,鞄をつかんで走り去る子供を見た。渋滞で連なる車の運転手は叫んでも車を離れることは出来ない。両手を広げて,老夫婦は嘆きのポーズを見せる。数分後,別の少年が空の財布を持って運転席の窓をたたく。多分こう言っているのだろう「財布を取り返してきてやった。チップをくれ」と,空の財布を差し出す。子供らは仲間なのだ。

 

取り締まりは厳しくなっているが,トライアングルの裏には無法な社会も存在する。9.11テロのあと,マネーロンダリングが囁かれ,何人かが拘束されたニュースも何となく納得できる。宝石や高級時計を販売する店,その前の路上でシガレットを1本ずつバラして商売する人がいる。拳銃による強盗も予感させる雰囲気が漂う。しかし一方では,郊外の丘にあるゴルフ場の周辺には,目を見張るような高級住宅が集まっている。ここへの出入りは厳重にチエックされ,治安も守られている。川の対岸には不法に建てられたバラックが眺められる。このアンバランスこそ,国境トライアングルの象徴かも知れない。

 

 

日本が国策として取り組んだ最後の移住地(イグアス移住地)

 

シウダ・デル・エステから国道7号線をアスンシオンに向かって40km走ると,日系イグアス移住地がある(日本が国策として取り組んだ最後の移住地)。日本からの移住者は森を拓き,いまは豊饒の地に大豆を作っている。旅人は此の地を訪れ,開拓の苦労を偲び,日本旅館に泊まって日本食を楽しむのも良いだろう。

 

パラグアイのここアルトパラナ県は同国第1の大豆生産地となっていて,大きなサイロや工場がある。ブラジルの大豆生産はここパラナ州から北部へ広がり,世界2の生産国となった。アルゼンチンの大豆生産はここミシオネス州で試作され,その後湿潤パンパ地方に生産地を移した。南米ダイズ生産に日系人が大きな貢献をしたことも,旅人の記憶にとどめたい。

 

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