読書日記

いろいろな本のレビュー

台北歴史散歩 邸景一・荻野純一 日経BP企画

2008-09-16 17:34:18 | Weblog

台北歴史散歩 邸景一・荻野純一 日経BP企画



 台北市内の日本統治時代の建造物を訪ね、写真と記事でまとめたもの。私も数回台湾旅行の経験があり、懐かしさがこみ上げてきた、特に総統府(旧・台湾総督府)の内部の写真は珍しく貴重だ。この建物は1907年(明治40年)に設計コンペが実施されてできたものである。これは若く有能な建築家を発掘するためであった。ところが最終選考でも最優秀作は選ばれず、やむを得ず二等の長野宇平次の作品が選定された。しかし、時の政府は全体設計には了解を出したが、随所に口を挟む。一番の要求は威圧感や権威を感じさせる建物にすることであった。そこで森山松之助が登用され、今もそびえる高さ60メートルの塔が作られることになった。コンペが始まってから12年、建設に7年を要して1919年(大正8年)に総督府は完成した。この総督府はいまも現在も使用されている。ソウルの朝鮮総督府の建物が金永三大統領の時、日帝の残滓は残すべきではないという世論に突き動かされて破壊されたのとは全く好対照だ。台湾は大人の国だという感を深くする。私は韓国にも数回旅行したことがあるが、ナショナリズムの発露の仕方の直線的な部分が植民地時代の建造物に対する態度に表れているのかもしれない。
 本書はその他、台北市内の古い建造物が沢山紹介されており、生きた歴史の勉強にもなる。類書にはない格調の高さがある。是非、訪問したいものだ。

韓国の品格 重村智計 三笠書房

2008-09-16 16:43:16 | Weblog

韓国の品格 重村智計 三笠書房

韓国の李明博新大統領の略歴を綴り、今までの大統領とは違う対日姿勢を評価し、エールを送ったもの。李氏は極貧の少年時代を過ごし、苦学して高麗大学商学部を卒業後、現代建設入社、わずか12年で社長に就任した。その猛烈な働きぶりはは周りを圧倒した。その後ソウル市長を経て、大統領になった。経済通ということで、不況にあえぐ韓国経済の建て直しの切り札と期待されたが、思うような結果が出ず、支持率は落ちるばかりだ。けちの付きはじめは狂牛病の虞のある牛肉をアメリカから輸入し、その後もアメリカの言い分を信用し何も対策を取らなかったことだ。アメリカとの関係を壊さないようにと気を遣うあまり後手後手にまわって、国民の非難を浴びた。この件で国内の反米感情は燃え上がりデモが繰り返された。韓国のプチ・ナショナリズムはいつものことだが、もう少し長い目で見られないものか。せっかく北朝鮮外交も今までの太陽政策を改めると宣言しているのだから、政権をバックアップする姿勢が欲しい。おりしも北朝鮮の金正日が脳梗塞で倒れ、身体はケイレン状態というニュースが報じられた。若い頃から暴飲暴食(暴淫暴触)、高級ワインと美食(特にスシのトロが好物と元調理人が書いていた)。夜は喜び組と酒池肉林。あのブヨブヨの身体を見たら、長くはないと誰でも思うだろう。今こそこの独裁者なきあとの北東アジアの外交政治のフレイムワークをしっかり立てることだ。
 この大事な時期、日本外交についても未来志向で行きたいと言っている大統領だから日本も真剣に協力すべきである。拉致問題、核問題を解決する端緒を見つけられるチャンスだ。チャンスはそう何度もない。久しぶりに政治家の品格を持った人物が出てきたという著者の期待は同感できる。これで「韓国の品格」が実現すれば、日本としても喜ばしいことだ。