読書日記

いろいろな本のレビュー

電車の運転 宇田賢吉 中公新書

2008-09-07 15:56:37 | Weblog

電車の運転 宇田賢吉 中公新書



 JR西日本の元運転手(岡山運転区所属、現在68歳)が電車の仕組みから運転のしかたまで鉄道に関する基礎知識を写真入りで解説したもの。著者は1958年(昭和33年)に旧国鉄に入社し、JR西日本で退職した。私の経験から言うと、国鉄時代は職員の給料は安かったがのんびりした時代で、田舎では兼業農家の就職先の定番だった。私が小さい頃、知り合いの蒸気機関車の運転手から、今度機関車の釜に石炭をくべるのをやらせてやろうと言われたことがある。それくらいおおらかな時代だった。結局、赤字の累積で国鉄は解体、国労・動労も今や昔日の影響力はない。組合の弱体化を実現させた後、JRは手のひらを返したように利潤追求に躍起となり、終には尼崎の列車転覆事故を起こしたことは記憶に新しい。昔を知る者からすると、JRそんなに急いでどこへ行くという感じだ。
 一読して運転手の大変さがよく分かった。停止線でぴたっと止めることは容易ではない。運転手さん女房役の車掌さんもご苦労さん。今日も無事故で頑張って下さい。最後に、電車走行時に曲線では車両を内側に傾けるように左右のレールに高低差をつけるが、これを「カント」と呼ぶらしい。哲学者のカントを連想してちょっとシュールだ。