賃貸マンション明け渡しの際、通常使用に伴う損耗(汚れや傷み)の回復費用を敷金から差し引くことを定めた「特約」の適否が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は16日、通常損耗の修繕費用は「賃料に含むのが普通で、契約書や口頭での具体的な説明と明確な合意がなければ借り主に負担義務はない」と原則貸主負担とする初めての判断を示した。
その上で、敷金返還を求めた借り主側敗訴の2審大阪高裁判決を破棄、適正な返還額を算定するため、審理を大阪高裁に差し戻した。
通常損耗分の回復費用負担をめぐっては、国のガイドラインが貸主負担としているが、関西などでは損耗の有無にかかわらず、敷金から差し引く「敷引き」特約を入居時に結ぶケースが多く、有効性を争う敷金返還訴訟が相次いでいる。
判決理由で、中川裁判長は「通常使用で生じた劣化、損耗の回復費用は必要経費」として賃料に含まれると認定。「敷金から差し引けば、借り主には予期しない特別の負担になる」と指摘した。
訴訟は大阪府住宅供給公社の賃貸マンションを借りていた男性が未返還の敷金約30万円の支払いを求めて起こした。
判決によると、男性は1998年の入居契約時に「修繕負担区分表」を示され、サインしたが、区分表は一般的な基準を示しただけだった。3年後の解約時には敷金約35万円のうち約5万円しか返還されなかった。
中川裁判長は「契約書や入居説明会で具体的な説明があったとはいえず、特約の合意は成立していない」と判断した。
東京新聞2005年12月16日より
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