東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

2004(平成16)年度の宅建問題(借地借家法関係) 

2005年12月11日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

  転借人の賃料支払義務・転借人の保護
 〔問13〕 AはBに対し甲建物を月20万円で賃貸し,Bは,Aの承諾を得た上で,甲建物の一部をCに対し月10万円で転貸している。この場合,民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば,誤っているものはどれか。


 1 転借人Cは,賃貸人Aに対しても,月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担する。

 2 賃貸人Aは,AB間の賃貸者契約が期間の満了によって終了するときは,転借人Cに対しその旨の通知をしなければ,賃貸借契約の終了をCに対し対抗することができない。

 3 AB間で賃貸借契約を合意解除しても,転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り,賃貸人Aは,転借人Cに対し明渡しを請求することはできない。

 4 賃貸人AがAB間の賃貸借契約を賃料不払いを理由に解除する場合は,転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない。

 〔問13〕の 正答率は54.5%

 


 

 賃料増減額請求とサブリース契約
 〔問14〕 貸主A及び借主Bの建物賃貸借契約に関する次の記述のうち,賃料増減請求権に関する借地借家法第32条の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

 


 

  1 建物が完成した時を始期とする賃貸借契約において,建物建築中に経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当になっても,建物の使用収益開始前にBから賃料減額請求を行うことはできない。

 2 AB間の建物賃貸借契約が,Bが当該建物をさらに第三者に転貸する事業を行ういわゆるサブリース契約である場合,使用収益開始後,経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当となっても,Bから賃料減額請求を行うことはできない。

 3 Bが賃料減額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額されることになる。

 4 Aが賃料増額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合,BはAの請求額を支払わなければならないが,賃料増額の裁判で正当とされた賃料額を既払額が超えるときは,Aは超過額に年1割の利息を付してBに返還しなければならない。

 〔問14〕の正答率は26.6%

 


 

  【正解】 〔問13〕 1〔0〕  2〔0〕  3〔0〕  4〔×〕       

 
  【正解】 〔問14〕  1〔0〕  2〔×〕  3〔×〕  4〔×〕

 

 〔問13〕の解説 
 1、賃貸人の承諾を得て転貸借(民法612条)がなされたとき,転借人は,賃貸人に対して直接に義務を負う。転借人は,賃借人が払うべき賃料等の支払や明渡し義務,目的物保管義務などを負うことになる(民法613条1項)。 この結果,賃貸人は,賃借人・転借人どちらにも賃料を請求することが出来る。
 転借人は賃借人の負担する以上の義務を負わない。転借人は転貸借契約で定められた賃料の額の範囲で賃借人の支払義務を負うだけでけである。従って、転借人の義務は,賃借人<転貸人>に対して負う義務の範囲を超えることはないので,転借人Cは,賃貸人Aに対しても,月10万円の範囲で,賃料支払義務を直接に負担すればよい。従って、1、は正しい

 2、賃貸人の承諾を得て転貸借がされている場合に,期間の定めのある賃貸借が期間の満了〔期間の定めの。ない賃貸借では解約の申入れ〕によって終了するときは,賃貸人Aは転借人Cにその旨の通知をしないと,賃貸借の終了を転借人に対抗出来ない(借地借家法34条1項)。
 賃貸人Aが転借人Cに,賃貸借が終了する旨を通知したときは,その通知がされた日から6月を経過することによって転貸借も終了する(借地借家法34条2項)。従って、2、は正しい

 3、賃貸人と賃借人とが賃貸借契約を合意解除しても,特段の事情がない限り,賃貸人は転借人に対してこの合意解除の効果を主張できない(最高裁・1987年3月24日判決)。 従って,賃貸借の合意解除による賃貸借終了によって,明け渡し請求をすることは出来ないので3、は正しい

 4、判例では,賃料の延滞を理由に賃貸借を解除するには,賃貸人Aは賃借人Bに催告するだけで足り、転借人Cに支払いの機会を与える必要はない,としている(最高裁・1997年2月25日判決)。従って、4、は間違い

 

 〔問14〕の解説

 1、建物の賃料が経済事情の変動等で不相当になったときは,一定期間は増額しない旨の特約がある場合を除いて,契約の条件に係らず,当事者は,将来に向かって賃料の額の増減を請求することができます(借地借家法・32条1項)。
 最高裁は,サブリース契約の事例で,<建物の使用収益の開始前には,賃料減額請求はできない>と判示しました(最高裁・2003年10月21日判決)。従って、1、は正解である。

 2、最高裁は,「(建物での)サブリース契約には,借地借家法32条1項の当事者からの増減額請求の規定が適用され得る。」と判示し(最高裁・2003年10月21日判決)。従って、2、は間違いである。

 3、賃料減額の裁判が確定したときは,その効力は,減額請求の意思表示が相手方に到達した時に遡って生じます(借地借家法・32条1項)。従って,「賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額される」は間違いである。

 4、貸主が賃料増額請求権を行使して協議が調わない場合,借主は,増額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の賃料を支払えば足り,貸主の請求してきた賃料を支払う必要はない(借地借家法・32条2項)。借主は従前と同じ賃料を支払っていれば問題は起きない。従って、4、は間違いである。 

 

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

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