東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 借地契約書に特約で「建物使用の用途制限」がある

2011年04月26日 | 契約・更新・特約

【問】 借地契約書で、土地上の建物を居宅として使用するとの契約内容になっています。この度、店舗として使用したいと思いますが、地主は承諾しません。どうしたらいいでしょうか。 


【答】 借地契約は、本来、賃貸借の目的物は土地であり、その土地上の建物の所有者は、借地人ですから、建物の使用方法については、借地人の自由であってよいはずなのですが、借地借家法では、借地条件の1つとして建物の用途が入りましたので、今後は借地契約書上に、建物の用途についての制限が加えられるケースが増えてくるものと思われます。

 ところで、これまで、建物の種類について、非堅固建物所有から堅固建物所有へ変更する場合については借地条件の変更に当たるものとして地主の承諾を必要とし、地主の承諾が得られないときには、借地人が裁判所に借地非訟手続の申立をし、裁判所が地主に代わって許可を与える制度がありました。

 今度は、建物の非堅固から堅固への変更の場合だけでなく、建物の種類、構造、規模、用途についての制限がある場合に、その変更につき地主の承諾が得られない場合に、借地人は、裁判所に借地非訟手続の申立をして、裁判所が地主に代わって許可を与える制度になりました(借地借家法17条1項)。

 そこで、借地契約書に、ご質問のような用途制限がある場合、借地人が建物を居宅使用から店舗使用に変更しようとするときには、あらかじめ、地主にその変更についての承諾を求める必要があり、地主が承諾をしなかったり、高額な承諾料を請求するような場合には、借地人は、裁判所に借地非訟手続を申立てる必要があります。もし、この借地非訟手続をとらずに、無断で建物の用途を変更しますと、借地契約違反として契約を解除され、借地権を失う恐れがあります。

 この借地非訟手続を申立てますと、裁判所は、当事者双方から事情を聴き、用途変更の必要性の有無・程度・地主への影響等を判断して許否の決定をすることになります。

 ところで、裁判所が許可を与える場合の財産上の給付(承諾料)については、今後裁判所の決定例の蓄積の中で一定の基準が形成されていくものと思われますが、一般的には、建物の種類、構造の変更許可の場合は増改築許可の場合よりも、低額になると思われます。

 なお、この制度は、既存の借地契約に用途制限がある場合にも適用されますので、用途変更をする場合には、改めて借地契約書を確認してください。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


借地条件の変更及び増改築の許可

第17条 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

 裁判所は、前2項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

 裁判所は、前3項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。

 転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第1項から第3項までの裁判をすることができる。

 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項から第3項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

 

東京・台東借地借家人組合

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