東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 借地借家法施行前に設定された借地権が施行後に譲渡された場合の存続期間は

2011年05月30日 | 契約・更新・特約

 (問) 私は、昭和49年に建築した借地上の建物を地主の承諾をえて家屋所有者から平成11年に購入しました。
 この時の借地契約は、旧法が適用されるのでしょうか。また、借地期間はいつまでになるのでしょうか。


 (答) 平成4年8月1日に現行の借地借家法(新借地借家法)が施行されました。それ以前には、借地契約は借地法、借家契約には借家法が適用されていました。

 新借地借家法は、「土地の利用について双方の必要性の度合い」「利用状況」「契約の経緯」のほか、新たに「金銭を提供すること」(立ち退き料)によって正当事由を補完することが加わりました。

 また(さらに)、定期借地制度が加わりました。

 お問合せの方は、平成11年に家屋を購入し、借地契約を締結されておられますので、新借地借家法が適用されることになります。

 新借地借家法による借地期間は、堅固なる建物の場合は、30年以上、更新後も30年の期間となります。木造家屋の場合は、20年以上で更新後も20年の期間となります。

大借連新聞(*) 2011年4号


 ここからの文章は東京・台東借地借家人組合が記述したものです。


 大借連新聞4月号では以上のように掲載されていた。

 2011年5月号の「お詫びと訂正」で「新借地借家法の適用される借地契約の場合の借地期間の回答が、誤って旧借地法の契約期間で回答していました。改めて新借地借家法が適用する借地契約期間について回答させて頂きます」ということで、(新借地借家法)が追加され、「また」が→「さらに」へ変更されている。

また、以下の説明が、
新借地借家法による借地期間は、堅固なる建物の場合は、30年以上、更新後も30年の期間となります。木造家屋の場合は、20年以上で更新後も20年の期間となります。

次のように訂正された。
 「新借地借家法による借地期間は、従来堅固な建物と非堅固な建物に区別されてきましたが、新借地借家法の適用される借地では堅固・非堅固を問わず一律となりました。
 具体的には、①新規契約の場合は30年以上の契約になります。ただし、合意がない場合は、30年になります。②更新後の存続期間は原則として最初のの更新20年となり、その後は10年となります。
」(大借連新聞 5月号)


 問題点は、上記のことではない。「借地借家法」の施行前(平成4年8月1日)に締結した借地契約の場合で、「借地借家法」(新法)の施行後に借地権の譲渡、又は借地権を相続する場合は、即ち借地人の交代があった場合の存続期間・更新後の期間はどうなるのか。

 その場合、「旧借地法が適用」されるのか、或いは「新法(借地借家法)が適用」されるのかが問題である。

 借地人の権利に関することで重要である。旧借地法が適用されずに借地借家法(新法)が適用されると、借地人の権利は弱められる(註2)。

 大借連新聞では、借地借家法(新法)が適用されると解説されている。果たして、そうなのだろうか。

 「明解Q&A 新借地借家法」(三省堂1992年版)では、「Q18 借地権を譲渡・相続する場合はどうなるか」で新法施行前に借地契約を締結している場合の譲渡・相続に関しては、次のように「Q&A」で説明している。

【Q18】 新法施行前に借地契約を締結しています。新法施行後、借地権を譲渡する場合は、存続期間や更新後の期間はどうなるのでしょうか。また、借地権を相続する場合はどうなるのでしょうか。

【回答】 新法施行後、借地権を譲渡しても、その借地権の内容は従来の契約がそのまま引き継がれ、存続期間や更新後の期間についても旧法が適用されます。借地権を相続する場合も同様です(「明解Q&A 新借地借家法」56頁)。

【解説】►借地権の譲渡  新法施行後、借地権を譲渡する場合、新法施行前に締結された契約の内容がそのまま効力をもちます(法附則4条)。存続期間も更新後の期間も従来の契約のままで、何ら変更されることはありません。

 もっとも借地権の譲渡に際して、存続期間を譲渡のときから20年とか30年とかに延長することはできます。・・・・・また借地権の譲渡に際して、更新後の期間について「これからは新法による」と定めることはできません。更新後の期間について新法の規定は旧法よりも明らかに不利ですので、無効となります。再び借地権を譲渡しても同様です(「明解Q&A 新借地借家法」57頁)。

【解説】►土地の譲渡・相続 新法施行後に、地主が土地を譲渡したり、相続により地主が変わる場合も同様です。新法施行前に締結された契約の内容がそのまま効力をもち、旧法の正当事由の規定が適用されます(「明解Q&A 新借地借家法」90頁)。


地震に伴う法律問題」(近畿弁護士会連合会編(1995年3月16日初版) 社団法人商事法務研究会」でも同様の問題が「Q&A」で取扱われ、次のように解説されている。

【Q2】 私の借地権は、昨年(新法施行後)に前の人から譲渡を受け、地主の承諾を得たものですが、どちらの法律が適用されますか。

【A】 滅失と更新については、借地権の「設定」が新法施行前か後かで適用が分かれます。その「設定」とは、当初の契約時点のことです。その後に、更新が繰り返されたり、借地権の譲渡とか相続があっても当事者が変更しても、当初の契約時点をいいます(一問一答・新しい借地借家法19頁商事法務研究会)。

 したがって、新法施行後に譲渡を受けた借地権でも、当初の借地人の契約が新法施行前ならば旧法の適用となります(「地震に伴う法律問題」2頁)。


 「借地借家法」の改正に際し、法務大臣談話(1991年9月20日発表)が出された。
「特に、現在ある借地・借家関係には、新法の契約の更新及び更新後の法律関係に関する規定を一切適用しないことを法律自体で明らかにしており、現在ある借地・借家関係が新法になっても従前と変わらない扱いを受けるようにしている。」と明確に施行前に設定された借地契約の「更新」及び「更新後の法律関係」に新法が適用されないことを明言している。これらは「借地借家法」の「附則」(法規定)で明確にされている。

 「また、更新の際に、「新法が成立したら、それに応じて契約を改める」ということをあらかじめ特約することを貸主側が要求する例もあると報道されているが、このような特約をすることは法律上許されていない。したがって、貸主からそのようなことを要求されても、それに応じる必要はないし、仮にそのような特約をしてしまっても、その特約は、無効である。」(法務大臣談話)。

 平成3年8月30日の衆議院法務委員会で次にように政府答弁している。
「この法律の施行前にされた借地契約についてはすべて従前の規定が適用される。これをこの借地関係が相続されて相続人に承継され、あるいは他に譲渡されて移転するというようなことがございましても、借地関係は同一性を持って移ることになりますので、やはり旧法の規定に従って更新等が規律されることになる。」

 

 「新法には、新法が施行される時までに既にされている貸し借りには契約の更新や更新後の法律関係に関する新しい法律の規定は適用されず、これまで通りの扱いになるということが規定(付則)のなかに明記されています」(「新しい借地借家法のあらまし」法務省民事局作成)。

 「借地借家法附則4条但書」により、「廃止前の建物保護法に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない」として、新法施行前に設定した借地権の存続期間については、「借地借家法」は適用されず、旧「借地法」が適用される(経過措置の原則)。

 また、更新に関しては、「借地契約の更新に関する経過措置」により「法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による」(借地借家法附則6条)として、「借地借家法」は適用されず、これも旧「借地法」が適用される。

 従って、借地の存続期間・更新後の借地期間は、
 ①契約によって、鉄筋コンクリート構造建物や鉄骨構造建物等の堅固建物の所有を目的とするものでは30年以上、それ以外の木造、軽量鉄骨等の非堅固建物所有を目的とするものについては20年以上の存続期間とする(旧借地法2条2項)。

 ②法定更新の場合及び契約書を作成したが契約期間を定めなかった場合は、借地権の存続期間は堅固建物の場合は30年、その他の建物の場合は20年と法定される(旧借地法4条・5条・6条・7条)。

 ②の法定借地期間より短い期間を定めた時は堅固な建物所有目的のものについては60年、その他の建物所有目的のものについては30年の存続期間となる(最高裁昭和44年11月26日判決)。

 関連記事 【Q&A】 堅固建物所有の借地契約の更新時に期間15年の契約をしたが、その契約期間は果して有効なのか


(註1) 建物を売買する場合は、通常、建物と共に借地権も譲渡される。

(註2) 具体的には、契約の更新後に借地人の建物が滅失(地震・津波・台風などで倒壊或いは火事で焼失)した場合、旧借地法では増改築禁止の特約があった場合でも、地主の承諾がなくても再築は可能である。
 (参照 【Q&A】 増改築を制限する特約がある場合、火災後の再築に地主の建替承諾は必要か

 しかし、新法は更新後の場合は増改築禁止特約の有無に拘らず、地主の承諾を得ずにした建物の再築は常に解約原因となる。しかも、地主のこの解約請求には正当事由が必要ではない。解約の申入れ後、借地権は3か月後に消滅する(借地借家法8条)。この場合、借地人からの建物買取請求権も認められていない。

 

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