東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 定期借家契約とはどんな契約

2012年02月07日 | 定期借家・定期借地契約

 最近、若い人からの相談で、「更新を拒絶され、再契約できないと言われた。引越しして2年しかたっていないので、あと1回くらい更新をしたいのだが、どうしてもだめですか」という中身で同じような電話相談を何件か受けました。

 よくよく話を聞いてみると、普通借家契約ではなく定期借家契約であることが判明しましたが、本人たちは普通借家契約と定期借家契約の違いもわからず、契約時のどのような書類に署名捺印したかも忘れていました。最近は非正規で働く人が増加しているために、このような若者向けに定期借家契約の物件が増えてきているという話です。

 あらためて定期借家契約について知っておきたい豆知識を紹介いたします。

 その1、通常の借家契約と異なり、更新がなく契約終了と同時に退去しなければいけないということです。(借地借家法第38条1項)期間が満了すれば、再契約もできますという不動産会社の口頭の説明をうのみにしてはいけません。あとでどのようにでも言い訳できます。

 その2、定期借家契約は定期借家契約であるという説明した文書を交付した上で説明が必要です。(同38条2項)定期借家契約書だけでは、定期借契約は成立致しませんので注意が必要です。何年か前の相談ではこのような文章がなかった事例もありますので注意しましょう。

 その3、契約期間が一年以上の場合は、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に通知をしなければいけないことになっています。(同38条4項)その通知がない場合は、あらためて通知が来てから6ヶ月後に契約は終了となります。最後に、このように定期借家契約は借主にとって極めて不利な契約ですのでこのような契約物件は避けるべきです。

 

東京借地借家人新聞より


 ここからの文章は、東京・台東借地借家人組合。

 2011年6月号の借地借家豆知識の欄で、 
 「その3、契約期間が一年以上の場合は、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に通知をしなければいけないことになっています。(同38条4項)その通知がない場合は、あらためて通知が来てから6ヶ月後に契約は終了となります」と説明している。

 上記の説明(赤字部分)は、正確でないし、誤解を生む。この説明では、「賃貸人が終了通知を通知期間内(期間満了の1年前から6か月前まで間)にしなくても、後日、期間に限定されることなく、任意の日に終了通知をすれば、期間満了後であっても、その日から6か月後に契約が終了する」ということになる。

 換言すれば賃貸人が意識的に定期借家契約の満了日までに終了通知を出さなければ、以後、賃借人とトラブル等があれば、賃貸人は正当事由なしに任意の日に「終了通知」をすれば、6か月後に契約を確定的に解除出来るという貸主には好都合な説明になる。

 定期借家契約は契約の更新がなく、確定期限で契約は終了する契約である。それにも拘らず、前記の例であれば、期間満了後の契約形態は、自動更新された期間の定めのない「定期」借家契約ということになる。

 確かに、貸主から期間満了の1年前から6か月前までの通知期間内に終了通知がなくても、通知期間経過後から契約期間の満了日までに終了通知があれば、その通知の日から6か月が経過すると、貸主は定期借家契約が終了したことを主張できる。

 しかし、期間満了後の終了通知の場合も、6か月後に契約が終了するのか、契約期間満了後の終了通知が果たして有効なのかが問題である。このことは、借家人の居住権に係わる重大な問題である。

 このことに関しては、次の記事を参照
   【Q&A】 契約期間満了後に定期借家契約の終了通知が届いた場合はどうなるのか

 Q9 定期借家契約の期間が満了で必ず建物を明渡さなければならないのか<あなたの借地借家法別冊 「Q&A 定期借家契約」 (東京借地借家人組合連合会編)>

 借家人の居住権を守るための重要な保護制度である「正当事由制度」及び「法定更新制度」を適用除外させた借家契約が定期借家契約(平成12年3月1日施行)である。借家人の保護制度を無力化するために拙速に作られた条文であるから、杜撰な面がある。この条文は衆議院・参議院の法務委員会で審議されたのではなく、お門違いの衆議院の建設委員会(平成11年11月24日)、参議院の国土・環境委員(平成11年12月7日)で審議された。借地借家法に関しては、全くの門外漢による数時間のスピード法案審議で法案化されたもので、厳密さがないのは当然かもしれない。その代表が38条4項の「但書き」である。

 

東京・台東借地借家人組合

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