東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 対抗力ある借地権は競売中に建物が滅失しても土地買受人に対抗できる

2006年02月21日 | 借地の諸問題

  判例紹介
 抵当権設定時に対抗力を有していた借地権は、競売中に借地上の建物が滅失しても、土地買受人に対して借地権を対抗できるとされた事例 平成12年5月11日東京高裁判決、金融・商事判例1098号)

 

(事案)
 借地人は、借地上の建物について所有権保存登記をして借地していたが、地主は、昭和63年に土地に抵当権を設定してその登記をした。 平成3年、抵当権者が抵当権の実行をして競売手続が開始した。借地人は、平成5年に、借地上の建物を取壊して新建物を建築し、平成6年に保存登記をした。執行裁判所は、賃借権があるものとして、売却条件を定め、売却したところ、買受人が決まった。買受人は、借地人に対して、借地権はないとして、建物収去、土地明渡訴訟を提起した。 横浜地方裁判所は、借地権を買い受けた人に対抗するには土地の競落時に建物の保存登記を必要とするが、旧建物は滅失しているので、旧建物の保存登記による対抗力は消滅したとして、借地人負訴の判決をした。しかし、東京高裁は、要旨次のような理由で、逆転判決をした。

(判決要旨)
 「民事執行法は、不動産を目的とする担保権の実行としての競売(不動産競売)において、不動産の上に存する抵当権が売却により消滅することを規定し、消滅する権利を有する者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失うと規定している。これによれば、抵当権者に対抗することができない借地権の取得は売却によりその効力を失い、対抗できる借地権は効力を失わないことになる。民事執行法は、土地の買受人が借地権を引き受けるかどうかは、その借地権が抵当権に対抗できるかどうか、つまり、抵当権を設定したときに借地権が対抗できるかどうかを問題としているのであって、競落時に対抗できるかどうかではない。なぜなら、競売によって買受人に移転される権利は、抵当権者が把握していた権利にほかならないからである。 本件では、抵当権が設定された当時には借地権は登記のある建物によって対抗できたのであるから、その後、その建物が滅失したとしても、当該抵当権に対して対抗力を失うことはなく、借地人としては、いったん生じた対抗力を維持するために、建物自体を維持したり、所有権保存登記を継続していなければならないわけではない。」

(説明)
 本判決は、抵当権による競売の性質をこまかく論述し、借地権の対抗力の有無は、競売時ではなく、抵当権設定時点で決めるべきであるとした。その上で、土地が競売されたときは借地上には旧建物は滅失して存在しないが、抵当権設定時に登記のある旧建物が存在して対抗力があったのであるから、その効力は、継続していると判断した。

(2000.11.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 借地人にとっては注目される判決である。この判決に関してはこちらも御覧ください。

 

東京・台東借地借家人組合

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