東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 「敷金の返還」

2011年03月08日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

【問】 借家を明渡したのですが、家主は、畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用が掛かるからと言って敷金を返してくれません。このような場合には敷金を返す義務は無いのでしょうか。


【答】 敷金は、借家契約に際して、借家人の賃料債務その他の債務を担保する目的で、借家契約が終了した際に借家人の債務が残っていれば、その額を差し引いた残額を、債務がなければ全額を借家人に返すという約束で、借家人から家主に支払われるお金です。

 敷金が担保とする債務とは、借家人が家主に対して負う一切の債務です。

 問題は「畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用」が借家人が負担すべき債務と言えるかどうかです。

 民法は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」(民法606条1項)として、家主に修繕義務を課しています。畳の表替えや壁の塗替え(壁紙の張替え)が修繕に当ることは明らかです。

 他方、民法は、借家人に対して「善良なる管理者としての注意義務」(これを善管注意義務といいます)をもって借家を使用するよう求めています(民法400条)。

 畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)は、普通の使い方で住んでいても一定の年月が経てば必要になる性質のものです。したがって、その必要が生じたからといって、それを借家人の落度、つまり借家人の善管注意義務違反であるということはできません。普通の使い方をしていたのであれば、その費用は家主が負担すべきものです。家主の言い分は誤りですから、敷金全額を返すよう請求できます。

 では、畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)が、借家人の使用上の落度から必要になった場合はどうでしょうか。この場合は、借家人に善管注意義務違反があるということになりますから、家主はこれによって被った損害、すなわち畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用を借家人に請求することができます。借家人が返してもらえるのは敷金からその費用を差し引いた残額だけということになります。

 ところで、敷金を返さなければいけない家主の義務(敷金返還義務)と借家を明渡さなければいけない借家人の義務(目的物明渡義務)地は同時履行の関係にあります。同時履行の関係とは、互いの義務を同時に果たすべき関係のことです。ですから明渡す前に家主との間で反感されるべき敷金の金額を確定したうえで、その敷金の返還を受けるのと同時に明渡に応ずるという姿勢を取ることが必要です。

 なお、借家契約の中に、一定の事由がある場合には敷金を返さない、すなわち没収するという特約があることがあります。このような特約があっても、借家人に落度がない場合にまで敷金を返さないということは無効ですから、諦めないで下さい。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

東京・台東借地借家人組合

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