東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 前回更新料を支払ったことが直ちに更新料支払約定の成立とは認められないとした事例

2008年10月17日 | 更新料(借地)判例

 判例紹介

  立続けの地代値上請求が否認され、前回更新料を支払ったことが直ちに更新料支払約定の成立とは認められないとした事例 (東京地裁平成4年12月25日判決、判例集未掲載)


 (事案)
 借地人は台東区上野3丁目に31.6坪の土地を借地して木造建物を所有していたが、地主は、昭和60年以降大幅な値上げ請求を繰り返し、本件地代は、
昭和60年4月には月額3万8870円、
昭和61年4月には月額5万8870円、
昭和61年10月には月額7万8870円、
昭和62年4月には月額9万6327円(坪3048円)となっていた。

 借地期間は昭和63年9月1日であったが、地主はそれに先立つ昭和63年4月、地代を月額19万7617円(坪5660円)に値上げ請求し、更新料として215万6000円を請求した。


 (判決要旨)
 「本件土地はJR山手線上野駅の東方約300メートルに位置し、商業地域に属し、同駅前の高度商業地域の背後至近にあって交通事情も良好であること、地価は昭和61年から62年にかけ急激に上昇したが、翌年に入ると鈍化傾向を強めたこと、本件賃料も昭和60年以降急激に増額されていること、昭和62年4月の値上げは、値上げに応じなければ土地を売ると言われ、当時地上げ屋が横行していたこともあってやむなく増額に応じたこと、現行地代9万6337円は、鑑定により昭和63年9月当時の比準賃料として算出された額8万3000円よりも高額であり、昭和62年当時の公租公課の5.169倍になっており、近隣地域の比率が4倍であることに比べても高率であること。以上の事実を前提に判断すると、鑑定が適正賃料を10万円としていること近隣地域では1年ないし2年で賃料の改訂がされるのが多いことを考慮しても、本件現行賃料は、昭和63年9月時点ですでに比準賃料と比較しても高水準となっており、昭和62年以降は地価の上昇も鈍化している上、昭和61年からの賃料増額の経過、ことに同年中にはわずか6か月で増額されていること等の事情に照らすと、本件現行賃料が昭和63年9月において不相当となっているとはいえない。」

 「更新料の請求については昭和63年9月1日時点における更新が法定更新であるところ、昭和43年9月の更新の時に50万円の更新料が払われたことから直ちに、その後の更新時には更新料を支払う約定が成立したものとは認められない。


 (解説)
 本件は当組合員の事例であり、東借連常任弁護団の2名が担当した。賃料値上げを一切認めない判決は非常に少なく、短期間の間の立て続けの増額のうえ、更なる増額を請求した地主に対し、厳しい判断を下したものである。

(1993.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

  更新料の支払請求にに関しては、判決では前回の更新時に更新料を支払った事実があったからといって、それが直ちに更新料の支払の合意をしたことにはならないとして地主の更新料支払請求を認めなかった。今回と同趣旨の判例はこちらから

 

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