東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 前回の借地の更新で更新料を支払っていても、更新料の支払義務がないとされた事例 

2012年01月11日 | 更新料(借地)判例

判例紹介

 前回の更新の際に更新料を支払った事実があっても、それは更新料の支払の合意にならないとされ、更新料の支払義務が無いとされた事例 (東京地裁平成23年12月26日判決。平成22年(ワ)第39834号 土地賃料増額確認等請求事件)


事案
 本件土地は、JR駅前の繁華街(高度商業地区)の一画にあり、人通の多い国道に面した位置にある。平成22年度の路線価は1㎡=573万円であり、借地権割合は90%の地域である。それゆえ、借地面積は42.54㎡(約13坪)で地代は月額33万5000円と高額である。借地人は、その場所(木造2階建店舗)で小売業をしている。

1、原告(地主)の母親と借地人Aが借地契約を結んだ。
 期間は昭和44年から平成元年12月31日まで。
 借地面積は42.5㎡、建物は木造2階建店舗(1階29.75㎡、2階27.27㎡)。

2、原告は昭和59年7月、母親の死亡により土地を相続した。

3、原告とAは平成元年12月29日付けで借地の更新をした。
  期間は平成2年1月1日から平成21年12月31日まで。賃料月額24万7000円。
  更新の際、契約書に更新料支払特約が無かったが、Aは更新料1100万円を支払った。

4、Aは平成17年2月に死亡し、被告が借地を相続した。
  賃料は月額33万5000円。

5、平成21年12月、原告側から更新料1100万円の支払い請求があったが、合意に至らなかった。

6、平成22年、原告は更新料1100万円の支払を求めて東京地裁へ提訴した。

争点
 被告が本件借地契約の更新料の支払義務を負うか、また、被告が同義務を負う場合の更新料の金額が争点である。

 <原告(地主)の主張
 被告は前回、更新料1100万円を支払ったのであるから、更新料を支払うことを認識していた。従って、今回も1100万円の更新料を支払う義務がある。

 <被告(借地人)の主張
 本件借地契約においては、更新料を支払う旨の条項はなく、被告がその支払義務を負うことはない。

裁判所の判断
 前回(平成元年12月29日)の更新に際して、借地人Aが合意に基づき更新料1100万円を支払っている。だが、「この合意はAが原告との間で、その時点における借地契約を巡る環境等の諸事情を考慮してしたものであると解するのが自然であって、更新後の本件借地契約が再び更新時期を迎えた際に、当然に更新料を支払うとの合意がされたものと解すべき根拠はない」。その上で、「本件契約書には、本件借地契約の更新に当たり更新料を支払う旨の条項はなく、原告と被告との間で本件借地契約について更新料を支払う旨の合意がされたと認めるに足りる証拠はない」。

裁判所の結論
 「更新料の支払の合意が認められない以上、原告の主張の諸事情を考慮しても、被告が更新料支払義務を負うということはできない」。 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却する。

  東京地方裁判所民事第32部

             裁 判 官  白 井  幸 夫

 

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