東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 給排気設備の機能障害を考慮して適正家賃が2%減額された事例 

2008年09月24日 | 修理・改修(借家)

 判例紹介

 給排気設備の機能障害を考慮して適正家賃が2%減額された事例 (東京地裁平成元年8月31日判決、判例時報1346号)

 (事案)
 地下3階地上10階建のビルの地下1階にある約90軒の店舗の1つ。借家人は昭和49年10月から賃借し衣料販売を経営してきた。家主は、それまで月26万円だった家賃を昭和61年1月分から28万6000円、平成元年7月分から29万5000円に、それぞれ増額してきた。

 借家人(原告)は、本件店舗の給排気設備が使用不能の状態にあることなどを理由として、賃料増額は認められないと争った。

 (判決)
 給排気設備が使用不能の状態にあるのは集中構造配管の全般的な老朽化に伴うものであること、その修繕は商店街全体に関わるものであって、高額の費用がかかり、その工事自体も容易ではないこと、従って、本件店舗だけを所有しているだけに過ぎない原告(借家人)には現状では修繕は事実上ほとんど不可能であり、機能障害は一時的なものと認められる。

 そして、本件店舗は通路側の間口も全部開け放して営業する構造になっているが、それでも、給排気設備が使えないため、特に夏場の冷房時には不快感を感ずる程度には影響があることを認めることができる。

 ところで、借家法7条の賃料増減請求権は、固定資産税などの公租公課の負担の増減、敷地・建物の価格の昂低、比隣の建物の賃料と比較して不相当な額になったこと、これらの事由がある場合にそれに応じた客観的に相当な賃料額を形成できるようにする制度である。

 このような趣旨目的からすると、本件店舗の給排気設備に右のように機能障害がありその修繕ができない事情があるとしても、それだけでは賃料増額請求権の行使自体を許さないということはできない。

 しかし、右の機能障害は本件店舗の快適な使用に悪い影響を与えていないわけではなく、ひいては本件店舗の価値自体に消極的な影響を与えていないではないということができるから、この事実は、相当賃料額の認定に際して、幾分斟酌されるべき事情であるということができる。被告(家主)の主張はこの限りで理由がある。

 斟酌の程度は、本件店舗賃貸借の目的、経過、右機能障害の内容及び程度並びに右障害の無い場合の当面の相当賃料の金額自体に鑑みると、機能障害がない場合に比較して、2%減額するのが相当である。

 (短評)
 家賃は、その建物に家主がどういう設備を施しているかに当然影響される。従って、その設備が悪くなれば、それが家賃の減額に反映されるのは理の当然である。なにも「使用に悪い影響を与えていないわけではなく」とか、「消極的な影響を与えていないではない」などともってまわった言い方をする必要はない。

 本件は修繕不能の場合だが、可能の場合でも修繕するまでは同じ理屈が当て嵌まる。

   (1990.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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