東京・台東借地借家人組合1

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どのようにしたら、更新料の支払を拒否出来るのか (東京・台東区)

2009年09月15日 | 更新料(借家)

 木村さんは、引越しのピークを過ぎた6月になってから賃貸物件探し始めた。既に好物件は粗方入居済みであった。選好みをいっていられる場合でないので、仕方なく家賃は少々高目(10万円)であったが、平成19年6月、千代田線根津駅近くのマンションへ入居した。

 契約書は、貸主の姿勢が窺えるような内容である。細かい文字で10頁に亘り部屋の修復作業仕様書及びそのチェック項目が書かれ、借主の義務とその費用負担を強いるものばかりであった。

 不動産業者は契約時に近隣のマンション(8~9万円前後の家賃)より高めの家賃を気にして、次回の更新時(平成21年)には必ず家賃を値下げすると約束していた。

 平成21年の更新1か月前に不動産業者が更新内容を通知して来た。だが、家賃は値下げするという約束にも拘らず、1か月10万円、管理費も1か月5000円で据置き、更新料と更新手数料は家賃の1か月相当分(合計20万円)というものであった。

 不動産業者の約束無視と遣り方に憤りを覚え、インターネットで調べて台東借地借家人組合へ入会した。木村さんは組合と相談し、不動産業者へ更新料の検討と家賃の値下げを要望する文書を送った。

 不動産業者から「更新料は約定通り支払ってもらいますが、家賃については1か月当たり3000円の値下げすることの了解を家主から得ています」という回答があった。

 木村さんは3000円の減額では納得できずに、組合役員と一緒に不動産屋を訪れ、直接交渉を行った。話し合いの結果、3000円の値下げの他に管理費5000円もカットすると不動産業者は確約した。

 しかし、不動産業者も営業利益が絡む更新料と更新手数料に関しては護りを固め、譲歩する気配がない。これ以上交渉を続けても、埒が明かないので、交渉は取敢えず打ち切ることにした。

 今回の話合いは、家賃と管理費の値下げに重点かあったので、それを中心にを交渉した。従って、更新料と更新手数料に関しては、深入りしなかった。

 後日、木村さんと話合いをした。家賃の更なる減額要求をするよりも、取敢えず、更新料と更新手数料は一括で支払わなくてはならないから、費用負担が無い更新料不支払いを選択したいという希望であった。

 組合は当初から更新料に関しては、法定更新に持込む方針であった。そこで今回木村さんに少し勇気を出してもらい、借地借家法26条の規定に従って法定更新を選択し、最高裁の判例に従って更新料の不払いを実行することにした。

                                                                     


 借地借家法26条は、法律の定めに従い、契約条件が整えば、契約書を作成しなくても、契約は法律の定めに従い自動更新(法定更新)されると規定されている。その際、契約は「従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなす」とされている。「みなす」ということは、法律的には更新が確定したものとして取り扱うということである。

 仮に、家主が「契約の更新をする意思がないし、借主と契約の締結もしていない。事実、契約書は作成していないから契約は成立していない」と主張しても、それを法律的に覆すことは出来ない。

 また、法定更新された契約に不動産業者は何も関与している訳ではない。契約の成立に何ら介在している訳ではないから、不動産業者の労務報酬は発生しない。

 尚、「更新手数料」は更新手続を依頼した者が支払う。通常は貸主が不動産業者に更新業務を依頼しているので、不動産業者は貸主に労務報酬を請求するのが原則であり、貸主は依頼した更新業務が完了したことを確認した上で労務報酬支払う。更新業務を依頼していない借主に労務報酬である更新手数料を請求することは請求根拠のない違反行為であるである。

 尚、「不動産業者から更新時の更新手数料を支払うよう請求された」を参照。

 そして、法定更新された契約は、借地借家法26条の「但書」で「その期間は、定めがないものとする」と規定さている。例えば、2年契約なら期間が限定されているので、2年後には必ず契約の更新がある。しかし、契約期間が定められていないと、期間の区切りがないので更新は発生しない。言い換えると、法定更新をすると法律的には更新が発生しないので、2度と更新料の支払いが問題になることはない。

  建物賃貸借の更新料に関しては、最高裁(昭和57年4月15日判決・昭和56年(オ)第1118号)は「建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」と判示している。

 換言すると、更新料支払特約があっても、借主が法定更新を選択した場合、特段の事情がなければ、更新料の支払義務はないということである。従って、貸主に借地借家法28条規定の裁判所が判断した正当事由がなければ、更新料支払い特約がある場合でも、借主は借地借家法26条の規定に従って、建物賃貸借契約を法定更新すれば、更新料支払を拒否することは可能である。そして、1度勇気をもって、更新料を拒否すれば、2度と更新料の支払が問題になることは無いということだ。


 大阪高裁(2009年8月27日判決)は「更新料支払特約」を消費者契約法10条に反して無効として、既に支払った過去4回分の更新料(合計で40万円)を返還させるという画期的な判決を下した。

 しかし、大阪高裁は、借主が過去に5回更新料を支払っているが、消費者契約法(平成13(2001)年4月1日)施行前に締結した初回の賃貸借契約(平成12年8月11日)に基づいて支払われた更新料(10万円)は有効として返還を認めなかった。

 ところが、借主は平成18年の更新の際、法定更新を選択し、更新料(10万円)を不払いした。この更新料不払いに対しても大阪高裁は、「賃貸借契約に定められた更新料約定は、消費者契約法10条に違反し、無効である」というこ基本的態度変わらないが、判決文の中で何回となく「法定更新の場合には、更新に条件を付することはできないため、更新料を支払う必要はないと解すべきである」或は「法定更新の際には更新料を払う義務がない」ということを指摘している。

 


 参考 借地借家法
 (建物賃貸借契約の更新等)
第26  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 

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