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東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を自ら守るために、
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10店舗が全半焼 (大阪・都島区)

2010年09月30日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 6月6日夜半、大阪市都島区東野田5丁目の新京橋商店街の中華店から出火し、10店舗が全半焼しました。

 被災者は、52名に及ぶ。火元は、違法のプロパンガスを使用し、そのために延焼が大きく広がったと云われています。

 火災後3ヶ月が経ちますが、火災現場は、やっと解体工事が始まりました。

 家屋所有者は借地人で貸し店舗となっていますが、土地の所有者は、商店街のめぼしいところを貸地して相場以上の高地代や建替えの承諾料を請求し、借地人とのトラブルが絶えません。

 かつて借地人が都島借地借家人組合に入会し、3名の借地人が地主を相手にして建替承諾料と地代確定の非訟手続きを行い、地主の要求額よりも低額に抑える成果をあげた実績があります。また、平成14年には、地代減額訴訟を行い30%減額させることが出来ました。

 これらの成果を教訓にして、今回も借地人が団結してこそ生活と権利が守られるものとして組合へ入会を呼びかけています。

 

全国借地借家人新聞より  

 


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 【Q&A】 増改築を制限する特約がある場合、火災後の再築に地主の建替承諾は必要か 

 

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大阪府財政構造改革素案 住宅バウチャー制度創設 府営住宅を半減 (全借連新聞)

2010年09月24日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 大阪府は、「大阪府財政構造改革《素案》」(以下《素案》)を8月5日発表し、府営住宅の管理戸数(約13万8000戸)を半減し、住宅市場を活用するためバウチャー制度の創設を提案し、府民へ9月3日までにパブリックコメントを求めました。

 発表された《素案》によると、住宅セーフティネットは、府営住宅に依拠することのみならず、民間住宅市場を有効活用するとして、住宅バウチャー制度(市場家賃と府営住宅家賃の差額補助)を創設するとしています。

 府営住宅ストックの半減の具体的方向は、既存の府営住宅で応募が皆無である住宅を管理戸数から削除すること、耐震不足の住宅を除却すること、良質なストックを市町村へ移管することをあげています。

 また、高度経済成長時代に供給された府営住宅ストック7万3000戸が平成54年度までに建替時期を迎え、その財源の確保が困難であることから、PFIによる民間事業者による建替を行い、住宅バウチャー制度の財源を確保するとしています。

 《素案》で提案された府営住宅の半減案は、
第1に府民の強い府営住宅への要求に相反する。
第2に府営住宅居住者の居住の安定を保障しない。
第3に市町村への移管は、当該市町村の財政難と管理能力不足から事実上不可能である。
第4にこれまで大阪府が蓄積して住宅行政が後退する。
第5に民間市場の活用によって住宅対策が市場原理に左右され、府民に対する住宅セーフティーネットとしての公的責任を放棄する。
など負の要因に拍車を掛けることが懸念されます。

 一方、府営住宅を市場化することによって民間デベロッパーなど不動産業界の新たな利潤追求の基盤づくりとなります。

 大借連では、8月26日、《素案》に対する見解を発表し、大阪府へ意見書にまとめパブリックコメントとして提出しました。

 そして、8月30日には大阪の住宅要求関係団体へ呼び掛け懇談会を開き、「府営住宅削減に反対する連絡会」を結成し、「府営住宅管理戸数削減をやめ、府民の住宅貧困を解決するために府営住宅を増やすこと」を府議会へ請願するための団体請願署名運動に取り組むことを確認しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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借地借家法の正当事由を検討 (行政刷新会議の規制・制度に関する分科会)

2010年08月18日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 政府の行政刷新会議の規制・制度に関する分科会(分科会会長・大塚耕平・内閣府副大臣)は、6月15日に第1次報告書をまとめました。


 検討の中間段階で対処方針の1つとして借地借家法における正当事由制度の明示(建物の老朽化、耐震性)を規制改革の検討事項に掲げ「借家人保護の配慮を十分に行なった上で、建物の老朽化、耐震性、再開発等を理由とした建て替えの必要性(註=正当事由)がある場合において、借家人から円滑な明渡しを受けることを可能とする方策について、住宅・都市行政を所管する国土交通省(註=法律を所管するのは法務省)と密接な連携の下、検討し、早期に結論を得る」。


 また、「マンションの区分所有法の建替え決議があったことなどの一定の要件を備えた場合には、借地借家法第28条(註=正当事由制度)を適用せず、期間途中でも賃貸借契約を終了させることができる措置を講ずるなどの方策を検討し、一定の結論を得るべきである」との対処方針を打ち出しました。


 法律を所管する法務省は「(老朽化・耐震性による)建て替えの必要性等を常に正当事由とした場合、高齢者や零細企業等、正当事由により保護されるべき借家人が一方的に立退きを強制されることとなり、その保護の要請に反すること、正当事由という柔軟な判断枠組みが硬直化することとなり、借家人との適切な利害調整を図ることができなくなるなどの問題が生ずるため、現行の正当事由を維持することが適当と考える」と回答し、規制改革要望・意見に対して「対応困難」と拒否しました。結局、正当事由の見直しについての法務省との合意は得られず問題提起するにとどまりました。


 今年4月に日本経済団体連合会(経団連)は、「豊かで活力ある国民生活を目指して~経団連成長戦略2010」の「成長を阻害する規制の例」として、「老朽化した建築物の建替え促進」の中で「借地借家法における正当事由制度の見直し」、「定期借家制度見直し」などの要望を発表し、規制・制度改革に関する分科会について、「精力的な調査・審議を期待する」、「わが国経済を活性化する様々な課題に果敢に挑戦し、改革を断行すべき」として大企業の事業活動を行う上で阻害する規制を見直すよう求めています。


 今回の正当事由の見直しに関し経団連は要望理由の中で「新成長戦力(基本方針)(平成21年12月30日閣議決定)でも『老朽化し、温室効果ガスの排出や安全性の面で問題を抱えるオフィスビル等の再開発・建替えや改修を促進するため、必要な規制緩和措置や支援策を講じる』とされていることから、政治主導により早急に検討し、措置すべきである」と、担当課として法務省民事局参事官室に対して圧力をかけています。


 経団連は、消費税の引き上げ、法人税の引き下げの早期実施を提言し、参議院選挙での菅首相の突然の消費税増税発言も自民党の消費税10%増税公約も実は経団連など財界・大企業の要望に沿ったものです。菅民主党政権が財界・大企業の圧力に屈しないよう借地借家法改悪反対の運動を今まで以上に強化することが重要です。

 

全国借地借家人新聞より  

 


 

「(註)」及び「文字強調」は東京・台東借地借家人組合

 

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家賃トラブルか、男性刺され重傷 容疑者?飛び降り死亡 (朝日)

2010年08月03日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 31日午後6時ごろ、大阪市東淀川区淡路5丁目の路上で、通行人の女性から「男性が刺された」と110番通報があった。警察官が駆けつけると、不動産仲介業石川洋一さん(53)=大阪府高槻市真上町6丁目=が肺や脇腹など計4カ所を刺されて倒れており、病院に運ばれたが重傷。刺したとみられる男は現場から逃走し、約600メートル離れたマンションの屋上から飛び降りて死亡した。府警は殺人未遂事件とみて調べている。

 東淀川署によると、石川さんは職場の事務所前で刺されたといい、「(男から)家賃のことで話があると電話があった。口論になったので会社に戻ろうとしたとき、後ろから包丁で刺された」と話しているという。死亡したのは同区在住の男とみられ、家賃の滞納を巡るトラブルがあったとみて調べている。

 

2010年8月01日 asahi.com関西 (朝日新聞社)

 

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道頓堀「大たこ」立ち退きへ 不法占拠訴訟で最高裁確定 (朝日)

2010年07月24日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 大阪・道頓堀の名物たこ焼き店「大たこ」が大阪市の土地(4.43平方メートル)を不法占拠しているとして、市が土地の明け渡しなどを店側に求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(近藤崇晴裁判長)は、「大たこ」側の上告を退ける決定をした。20日付。

 土地の明け渡しと使用料支払いを店側に命じた一、二審判決が確定した。「大たこ」側は立ち退きを迫られる。使用料は1997年6月から明け渡すまで月約1万3800円とされており、すぐに明け渡したとしても220万円弱になる計算だ。

 一、二審判決によると、店は72年に市から「露天喫茶店」の営業許可を得て開業。2007年に道路部分の使用はやめる形で新たな屋台を建てて営業を続けていた。市側は周囲にほかにも不法占拠された土地がたくさんあったため、30年以上、黙認。一時は払い下げも検討されたが、まとまらなかった。

 店側は「占有から20年以上が過ぎ、民法上の時効によって土地の所有権を取得した」と主張したが、一、二審とも「屋台は撤去が容易な状態であり、占有の意思があったとは言えない」と退けた。

 大たこは大阪の観光名所として有名で、一時は市もホームページで紹介していた。

   ◇

 大たこ側は06年、「占有から20年以上が経過して民法上の時効は成立した」として、市を相手に土地所有権の移転登記を求めて提訴。これに対して市側が反訴し、今回の決定となった。

 男性店主は「市に『和解をするから裁判を起こして下さい』と求められて起こした裁判だった。行政のあり方に不明確な点が多数あり、それを明らかにするために別の裁判を起こすことを検討している」と話した。22日夜に店に訪れた男性客(37)は「昔からここにあるので、もしなくなったら寂しい」と語った。

 

2010年7月23日 asahi.com(朝日新聞社)

 

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ビル立ち退き:無資格で交渉、建設会社社長の有罪確定へ (毎日)

2010年07月23日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 無資格でビルの立ち退き交渉をしたとして弁護士法違反(非弁護士活動)に問われた建設会社「光誉(こうよ)実業」社長、朝治(あさじ)博被告(61)に対し、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は20日付で被告側の上告を棄却する決定を出した。懲役2年、執行猶予4年、追徴金約15億円とした1、2審判決が確定する。

 1、2審判決によると、朝治被告は05~06年、弁護士資格がないにもかかわらず、不動産会社「スルガコーポレーション」(横浜市、民事再生手続き中)の委託を受け、ビルの入居者74人と交渉して立ち退かせ、計約18億円の報酬を得た。決定は「被告による立ち退き交渉は、弁護士しか扱えない業務に当たる」との判断を示した。

 朝治被告は大相撲の松ケ根親方=元大関・若嶋津=に大阪市内の春場所の部屋宿舎を貸していた人物で、警察当局から指定暴力団山口組との関係を指摘されている。【伊藤一郎】

 

毎日新聞 2010年7月22日

 

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松ケ根親方と親交の不動産社長、有罪確定へ 地上げ巡り (朝日)

2010年07月23日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 不動産、建設会社「スルガコーポレーション」(横浜市、倒産)の所有ビルをめぐる地上げ事件で、最高裁第一小法廷(宮川光治裁判長)は、弁護士法違反(非弁活動)の罪に問われた不動産会社「光誉実業」と、同社社長の朝治博被告(61)の上告を棄却する決定をした。

 20日付。朝治被告を懲役2年執行猶予4年、法人としての同社に罰金300万円、さらに両者に計約30億6千万円の追徴と、約9400万円の没収を命じた一、二審判決が確定する。

 朝治被告は山口組系暴力団と親交が深いとされ、大相撲の松ケ根親方に大阪市内でビルを貸していたことが明らかになったばかり。

 一、二審判決によると、朝治被告らは2005~06年、弁護士資格がないにもかかわらずスルガ社の依頼で東京都千代田区のビル入居者74人と立ち退き交渉した。

 

2010年7月22日 asahi.com(朝日新聞社)

 

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元若嶋津の松ケ根親方、組関係者ビルを宿舎に 大阪場所 (朝日)

2010年07月23日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 大相撲の松ケ根親方(53)=元大関若嶋津=が20年前から、毎年3月に大阪市で開催される春場所の宿舎に、山口組系暴力団と親交が深いとされる60代の不動産会社社長側から借りたビルを使っていることが、警察当局などへの取材でわかった。親方は朝日新聞の取材に、社長を後援者の一人としたうえで、「暴力団関係者とは思っていなかった」と説明している。

 登記簿によると、ビルは大阪市東住吉区にある5階建てで、1989年に社長が経営する大阪市内の不動産会社が建設した。02年10月に松ケ根親方が買い取り、07年6月に社長の親族が経営する別の会社が買い戻した。1階に「松ケ根部屋」の看板が掲げられており、近所の住民によると、1階がけいこ場、2~4階が居室部分などで、その一部を力士らが使っていたという。

 松ケ根親方によると、所属していた二子山部屋から独立し部屋を起こした90年から、春場所の宿舎として、このビルを使用しているという。

 警察当局によると、社長は97年に神戸市内のホテルで射殺された山口組ナンバー2の若頭だった宅見勝・宅見組組長と親交が深かったとされる。当局は不動産会社について、現在も宅見組のフロント企業とみている。

 社長は08年3月、建設会社(横浜市、倒産)から依頼された東京都千代田区のビルテナントの立ち退き交渉で、弁護士資格がないのに入居者と立ち退き交渉をしたとして、弁護士法違反(非弁活動)容疑で警視庁に逮捕された。東京地裁は昨年1月、社長に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。警視庁などの調べでは、社長の経営する不動産会社は、都心の一等地の複数の地上げ資金として、建設会社から約150億円を受け取り、数十億円の利ざやを得ていたという。警察当局はその一部が山口組側に流れていたとみている。

 大阪市内の社長の自宅では「社長は在宅しているが、コメントできないと言っている」と、女性がインターホン越しに話した。

 松ケ根親方は鹿児島県出身で、幕内優勝2回。精悍な風貌から「南海の黒ヒョウ」と呼ばれた。87年に引退し、90年に千葉県船橋市に部屋を起こした。妻は元歌手の高田みづえさん。

 

2010年7月21日 asahi.com(朝日新聞社)

 

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欠陥住宅、居住期間に応じて賠償減額認めず 最高裁 (朝日)

2010年06月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 業者の重大なミスで新築住宅を建て替えなければならなくなったとき、業者は住民が住んだ期間に応じて賠償額を減らせるかが争われた訴訟の上告審判決が17日、あった。最高裁第一小法廷(宮川光治裁判長)は「構造上の安全性にかかわり倒壊のおそれがあるなど、建物に社会経済的な価値がないときは減額できない」とする初めての判断を示した。その上で、減額を求めた業者側の上告を棄却した。

 欠陥住宅の建て替えをめぐっては、業者側が負担を減らすため住民に居住した期間に応じて賠償の減額を求める例が多く、下級審の判断も分かれていた。「消費者重視」を明確にした最高裁の判断は、建築・不動産業界に大きな影響を与えそうだ。

 訴えていたのは2003年に名古屋市中川区の建売住宅(鉄骨3階建て)を購入した親子。代理人弁護士によると、親子は同年5月に住み始めた後、地震で激しい揺れを感じたのに実際は震度1だったことを不審に思い、第三者の建築士に相談して欠陥が発覚した。

 判決によると、この住宅は柱や梁(はり)が小さすぎたり、鉄骨の溶接ミスがあったりして建て替えが必要な状態だった。暴風時には風圧で外壁が崩壊するおそれもあった。

 ただ、親子側は「場所が気に入っている」として同じ場所での再建を希望。解体や引っ越し、仮住まいの費用も含めて賠償を求めたため金額の折り合いがつかず、販売会社と系列の設計会社、施工会社などを訴えた。親子は今もこの家に住んでいる。

 裁判で業者側は、周辺の家賃相場に従って1カ月20万円を賠償額から差し引くよう主張。08年11月の一審・名古屋地裁は「居住した期間は住民の利益として相殺すべきだ」と判断し、賠償額から一定額を差し引いて計約3130万円の支払いを命じた。

 しかし、09年6月の二審・名古屋高裁は「建物に重大な欠陥があり、やむを得ず住んでいる以上、相殺すべきでない」として、賠償額を約800万円増額したため、業者側が上告していた。(延与光貞)

 

2010年6月17日 asahi.com(朝日新聞社)

 

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すまいの貧困をなくすために住宅政策と政治の大転換を

2010年06月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 2009年9月発足した鳩山内閣は、「政治と金」「沖縄問題」で国民から厳しく批判され、国民の支持を失い、2010年6月2日、「金権政治」による疑惑を抱えた小沢一郎民主党幹事長とともに辞任しました。

 6月4日、国会は、菅直人衆議院議員を内閣総理大臣に選出し、第2次民主党内閣が発足しました。

 開会中通常国会終了後、7月11日に参議院選拳が実施されます。

 鳩山連立内閣がすすめた政治は、戦後続いた大企業優遇アメリカ追従の政治を変えて、国民生活の「貧困と格差」を解消して欲しいと期待した国民を裏切るものでした。

 新たに発足した菅は、鳩山前内閣の副総理大臣であり、民主党が先の総選挙で公約した「後期高齢者医療制度の廃止」「労働者派遣法の抜本的見直し」「沖縄の米軍基地の県外・国外への移転」などを反古にし、憲法改悪に道をつくる「国民投票法」を施行し、国民の期待を裏切った同罪者であり、国民のくらしと安全を守る政治をすすめるには程遠い政治を踏襲することを明らかにしてます。その上に菅総理大臣は、消費税の大増税をも提唱しています。

 民主党政権では、「行政刷新会議規制・制度改革に関する分科会ワーキンググループ」が設けられ、借地借家法見直し改悪が検討課題にあげられ、今年6月中にまとめて行政刷新会議に報告することになっています。

 検討されている内容は、第1に、建物の老朽化・耐震性などを口実に、借地借家法第28条に規定している「正当事由」に「建替の必要性等」の文言を明記すること。第2に、建替の決議があれば、借地借家法第28条の適用を除外し契約期間中でも賃貸借契約を終了させることを明らかにしました。

 このワーキンググループには、小泉規制改革会議の主要メンバーがそのまま加わり、借地借家人を追い出し、都市再開発やマンションの建替を促進させる政策を推進するかつての自公政権の借地借家法改悪の方向をさらに具体的に推し進めようとするものです。

 5月に発足した「民主党不動産議員連盟」が、借地借家法「改正」推進母体であった自民党の「不動産団体議員連盟」に参加していた不動産業界を中心に結成しました。さらに、公営住宅法の「改正」を行い、公営住宅の供給管理を地方自治体に丸投げするなどをおこないました。

 このように、前鳩山内閣と民主党を中心とした連立内閣の住宅政策は、居住の安定を確保し住宅問題の真の解決を期待した借地借家人の要求を裏切るものであり、今後の菅内閣の動向が注視されます。

 全借連は、この参議院選挙で借地借家人の住み続けられる権利が保障されるような住宅政策と政治の大転換を強く求めていきます。

 

全国借地借家人新聞より

 

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汚染の土地、売り主に責任なし 公社、最高裁で逆転敗訴 (朝日)

2010年06月01日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 宅地用に購入した土地に環境基準を超えるフッ素が含まれていたとして、東京都足立区の土地開発公社が売り主の化学メーカー「AGCセイミケミカル」(神奈川県茅ケ崎市)に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が1日、最高裁であった。第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は、約4億4900万円の支払いを命じた二審・東京高裁判決を破棄し、改めて公社側の請求を退ける判決を言い渡した。公社側の逆転敗訴が確定した。

 売買契約後に品質の欠陥が見つかった場合、売り主が責任を負うという民法の規定が適用できるかが争点になった。第三小法廷は、売買される商品がどのような品質を持つべきかについて「契約当時に取引にかかわった人の一般的な認識」を基準にすべきだとの初判断を示した。その上で、契約された1991年当時はフッ素による健康被害の危険性が社会的に認識されていなかったことから、売り主側の賠償責任を否定した。

 08年9月の二審判決は当時の認識にかかわらず、土地が持つべき客観的な安全性を重視し、「後から危険性が分かったとしても、売り主が負担すべきだ」と判断していた。

 判決によると、公社は91年3月、「日暮里・舎人ライナー」用の代替地を取得するため、足立区新田のAGC社の工場跡地約3600平方メートルを約23億3600万円で購入。ところが、2001~03年になって、健康被害を起こすおそれがあるとして条例制定や法改正でフッ素が有害物質に指定され、05年の再調査でこの土地にも環境基準を超えて含まれていることが判明した。再調査したところ、40地点でフッ素が基準を超えて検出され、最高で基準の1200倍に達した。

 このため住民への代替地にできなくなり、公園用地に変更。公社側は土壌汚染対策工事の費用にかかった約4億6千万円の賠償を求めていた。

 

2010年6月01日 asahi.com(朝日新聞社)

 

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【判例】 滞納管理費請求訴訟・弁護士費用敗訴者負担 (東京簡裁平成20年3月25日判決)

2010年05月21日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判例紹介

◇ 事件番号  平成19(ハ)28255
◇ 件名  管理費等
◇ 裁判所  東京簡易裁判所 民事第5室
◇ 裁判年月日  平成20年03月25日

 

  平成20年3月25日判決言渡 東京簡易裁判所
  平成19年(ハ)第28255号 管理費等請求事件

 

判       決

主       文

 

 1 被告は,原告に対し,8609円を支払え。

 2 被告は,原告に対し,2万6250円及びこれに対する平成20年1月7日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

 3 訴訟費用は被告の負担とする。

 4 この判決は,1項及び2項に限り仮に執行することができる。

 

事実及び理由

 

第1 請     求   主文と同旨

第2 事案の概要

 1 請求の原因

   別紙記載のとおり

  (7) 平成20年2月4日,被告は原告に対し,31万2360円を支払ったので,原告は未払管理費等に充当した。

  (8) よって,原告は被告に対し,平成19年1月分から同年12月分までの未払管理費等の合計31万2360円に対する平成19年12月分の管理費等の支払期限(平成19年11月27日)の翌日である平成19年11月28日から平成20年2月4日までの年14.6パーセントの割合による確定遅延損害金として8609円及び弁護士費用として2万6250円及びこれに対する平成20年1月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。

2 争点
  原告は被告に対し,原告の弁護士費用を請求できるかどうか。

  (原告の主張の要旨)
  原告の管理規約には違約金として弁護士費用を請求できると定められている。また国土交通省標準管理規約等においても同様の規定がある。これ らの規定は,建物の区分所有等に関する法律 (以下 「区分所有法」 という。)30条1項に定める「建物の管理に関する事項」であり,被告は本件以前にも管理費等の未払いを繰り返してきたのであるから,訴訟提起のために要した弁護士費用を負担させることは何ら不合理ではない。


  (被告の主張の要旨)
  我が国において敗訴者が弁護士費用を含めた訴訟費用を負担するという制度を取っておらず,法改正等で議論されているところである。従って,管理規約に弁護士費用を請求できる旨の記載があるとしても,その規定自体が違法なものであって,被告が負担すべきものではない。

  また,簡易裁判所の事案であり,原告は本人として訴訟をすることができるのであるから,本件請求は棄却されるべきである。


第3 当裁判所の判断

 1 請求原因事実のうち,1ないし4,5(1)及び7の事実については当事者間に争いがない。

  請求原因事実のうち,5(2)及び6の事実については,証拠によってこれを認めることができる。


 2 争点について
  (1) 証拠によれば,原告の管理規約62条2項には,管理組合は,区分所有者等が管理費等を納付しない場合には,未払管理費等に加えて,年14.6パーセント以内の約定の遅延損害金及び違約金としての弁護士費用を請求することができると記載されていることが認められる。

  (2) 敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させるかどうかについては,法制度上議論のあるところであり,今だ敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させる旨の法律が制定されていないことは,公知の事実である。しかし,現行法制上においても,敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させる旨の合意等(本件規約を含む)を定めることは,一律に違法とまではいうべきではなく,既存の法律の趣旨,条項に違反しない限りは,その効力を認めるべきである。

  ところで,管理費等の未納者に対し,規約において違約金を定めることは,原告のようなマンション管理組合が区分所有であるマンションを管理運営する上で必要な事項であり,区分所有法30条1項に定める「建物の管理に関する事項」に該当するというべきである。

  そして,規約において,弁護士費用相当額を違約金として規定することについては,管理費等の未納者に対しその支払いを求める場合において,事案に応じて,その手続を弁護士に依頼する場合が想定され,弁護士に依頼をすれば相応の弁護士費用がかかることになり,その費用を違約金として規約に定めること自体は合理性があり,区分所有法の趣旨に反するものではないというべきである。

 また,本件では,被告は本件以前にも管理費等の未払いがあり,本件訴訟提起後においても管理費等の未払いの状態が一定期間続いていたこと,違約金として弁護士費用相当額が2万6250円であること等を考慮すると,弁護士に対して簡易裁判所へ本件の訴えを提起することを依頼したことについて不合理であるとの点は認められない。

  (3) よって,原告の主張は理由がある。

 3 その他,原告の請求を妨げるに足りる証拠もない。

 4 よって,原告の請求は理由があるので認容し,主文のとおり判決する。


         東京簡易裁判所民事第5室

                 裁 判 官   河  野  文  孝

 

 

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NHK、受信料滞納者に初の強制執行へ 8人に予告通知 (朝日)

2010年05月15日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 NHKは14日、受信料を滞納している契約者8人に対し、財産を差し押さえる強制執行に踏み切ることを決めた。予告通知書を同日郵送、21日までに支払いがなければ裁判所に手続きを申し立てる。受信料回収のため強制執行に訴えるのは初めて。

 NHKは2006年から、受信料の支払いを強く拒否している滞納者に対し、民事訴訟法に基づく支払い督促を始めた。裁判などの手続きを経て支払いが確定した滞納者は、今年3月末までで90人に上る。この中から銀行口座の有無などを調べ、財産の差し押さえが可能と判断した8人を今回の対象に選んだ。

 8人の居住地は東京、千葉、大阪、兵庫、愛知、岡山、福島、高知の各都府県。滞納期間は54~26カ月で、請求金額は12万3254~6万1706円となっている。訪問や文書、電話などで繰り返し支払いを求めてきたが、「他にも支払っていない人がいるのに不公平だ」などとして応じてこなかったという。

 NHKの受信料は、職員の不祥事が相次いだ影響で04年以降、支払い拒否が広がった。80%近かった支払率は05年度末で69.2%に低下。このためNHKは訴訟も辞さない姿勢で徴収を強化した。支払率は09年度末で72.2%まで戻っている。(村瀬信也)

 

2010年5月15日 asahi.com

  NHKに関する参考判例

 

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【判例】 NHK受信料請求事件 (札幌地裁平成22年3月19日判決)1

2010年05月11日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判例紹介

◆ 事件番号  平成20(ワ)1449
◆ 事件名  放送受信料請求事件
◆ 裁判所  札幌地方裁判所 民事第2部
◆ 裁判年月日  平成22年03月19日

 被告の妻はNHKと受信契約を結んで受信料10か月分は支払ったが、その後受信料の支払いを拒否した。NHKは未払受信料(52か月分12万1680円)があるとして、夫である被告にその支払いを求めて提訴した。

 これに対し、被告はNHKとは受信契約は締結していない。妻が勝手に夫名義で受信契約に署名・捺印したもので、被告とNHKとの間では受信契約は成立していないと反論した。

 NHKは、被告の妻が行った受信契約は民法761条、民法110条により有効であると主張した。

 しかし札幌地裁はその主張を認めず、NHKの受信料請求を棄却した。

 

 

主       文

 

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

事       実

 

第1 当事者の求めた裁判

1 請求の趣旨

 (1) 被告は,原告に対し,12万1680円及びこれに対する平成20年6月1日から完済日が奇数月に属するときはその月の前々月末日まで,完済日が偶数月に属するときはその月の前月末日まで,2か月当たり2%の割合による金員を支払え。

 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。

 (3) 仮執行宣言

2 請求の趣旨に対する答弁

  主文と同旨

第2 当事者の主張

1 事案の概要

 放送受信契約を締結したのに受信料の未払があると主張する原告が,被告に対して未払受信料12万1680円及びこれに対する約定利率による遅延損害金の支払を求めた事案である。

 これに対して,被告は,原告との間に放送受信契約を締結した事実はなく,妻が被告に無断で被告名義にて放送受信契約書に署名押印したにすぎないと反論している。そこで,原告は,妻の行為が日常家事債務(民法761条)に含まれるので夫である被告は連帯責任を負うこと,被告は妻へ代理権を授与していたこと,表見代理(民法110条)が成立すること,被告が妻の行為を追認したこと,のいずれかにより放送受信契約の効力が被告に及ぶと主張している。

2 請求原因
 (1) 法及び規約

 原告は,放送法に基づいて設置された法人であり,放送法32条3項に基づき,総務大臣の認可を受けて,別紙「日本放送協会放送受信規約概要」(添付省略)記載のとおり,放送受信契約の内容を定めた日本放送協会放送受信規約(以下「規約」という。)を定めている。

 なお,「期」とは,規約6条に定める2か月ごとの支払期間をいい,4月及び5月を第1期とし,以後第6期まで同様である。

 (2) 契約の締結
 ア 日常家事債務の連帯責任
  原告は,平成15年2月7日,被告との間で,放送受信契約(以下,原告と被告との間で締結された放送受信契約を「本件契約」といい,一般的な放送受信契約とは区別する。)を締結した。その際,被告の妻であるA(以下「A」という。)が,被告名で放送受信契約書に署名押印し,被告名義で平成15年2月及び3月の受信料4680円を支払った。

  本件契約の締結は,民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)の日常の家事に関する法律行為に含まれるので,その法律効果は被告に帰属する。すなわち,放送受信契約の締結は,現在の日常生活に不可欠のテレビ放送に関する契約であること,原告の放送を受信できる受信設備を設置した者は放送法32条1項により放送受信契約を締結すべき法的義務を負っていること,放送受信契約を締結した場合の一月当たりの負担額も2400円であることなどからすれば,「日常の家事」に含まれることは明白である。

 イ 代理権
  Aは,本件契約当時,本件契約の締結について代理権を与えられていた。すなわち,被告は,Aに対し,夫婦にとって何らかの方針決定が必要な法律行為を除く日常生活に伴う法律行為等について,その要否の判断を委ね,代理権を授与していたものであり,本件契約の締結は,夫婦にとって何らかの方針決定が必要な法律行為ではなく,日常生活に伴う法律行為であるから,Aが被告から与えられていた代理権の範囲に含まれる。

 ウ 表見代理
  仮に,本件契約の締結がAの代理権の範囲に属さないとしても,表見代理が成立し,本件契約は有効に被告に帰属する。すなわち,被告は,Aに対し,夫婦にとって何らかの方針決定が必要な法律行為を除く公共料金に関することなど被告の家庭にとって日常生活に伴う法律行為等について,その要否の判断を委ね,代理権を授与していたものであり(基本代理権の授与),本件契約の締結がAの代理権に属さないとした場合,本件契約の締結は,基本代理権を超えて締結されたことになる。しかし,Aは本件契約の締結が自らの代理権の範囲内にあると信じており,かつ同人が本件契約の締結を行う際の態度に不自然不信な点はなく,「B」という印鑑を用いて押印し,2か月分の放送受信料4680円を支払った。一方,原告の契約取次者は,マニュアルに従い適切に本件契約を締結した。また,原告の契約取次者は,Aと面談する時,契約者名を夫婦のいずれにするかについては,誰の名前で契約して欲しいとのお願いはせず,Aの判断を尊重していた。したがって,本件契約の締結に際し,放送受信契約の締結がAの代理権の範囲に属さないことにつき,原告の善意無過失は明らかである。

 エ 追認
  仮に,本件契約の締結がAの代理権の範囲に属さないとしても,本件契約は被告により追認された。すなわち,被告は,原告と放送受信契約を締結したくないと考えていたが,それにもかかわらず,Aは,放送受信契約の締結がAの代理権の範囲に属すると信じ,本件契約の締結について被告に報告する必要はないと考えていた。これらの事実を考え合わせると,被告夫婦の間には放送受信契約の締結について決定的なそごが生じていたことになる。ところが,Aはおよそ10か月にわたり放送受信料を支払い続けたのであり,これほど長きにわたって,夫婦間のそごが顕在化しなかったとは考えにくい。そうすると,4回の被告名義での放送受信料の支払のいずれかの回からは,本件契約の存在が被告の知るところとなり,被告の了解の下に放送受信料の支払が行われたと解するのが自然である。したがって,仮に本件契約の締結がAの代理権の範囲に属さないとしても,本件契約は被告により追認されたと考えられる。

 (3) 未払
 被告は,平成15年12月1日から平成20年3月31日まで(平成15年度第5期から平成19年度第6期まで)の52か月分の放送受信料合計12万1680円を支払っていない。

 (4) よって,原告は,被告に対し,本件契約に基づき,12万1680円及びこれに対する訴えの変更申立書送達日の属する期の翌期の初日である平成20年6月1日から支払済みの日が属する期の前の期の末日まで,約定の利率である2か月当たり2%の割合による遅延損害金の支払を求める。

3 請求原因に対する認否及び主張

 (1) 請求原因(1)は知らない。

 (2) 請求原因(2)アのうち,Aが被告名で放送受信契約書に署名押印し,被告名で受信料4680円を支払ったことは認め,被告がAに放送受信契約の締結の代理権を授与したことは否認し,原告と被告との間で本件契約が締結されたとの主張は争う。

  イの主張は争う。

  ウの主張は争う。表見代理は成立しない。

  エの主張は争う。

 (3) 請求原因(3)は認める。

 (4) 被告の主張(日常家事債務について)
  ア 民法761条は,実質的には夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為について他方を代理する権限を有することを規定している。そして,「日常の家事」とは,夫婦共同生活に必要とされる一切の事務であり,その具体的範囲は,夫婦の社会的地位,職業,資産,収入,夫婦が生活する地域社会の慣習等の個別事情のほか,当該法律行為の種類,性質等の客観的事情を考慮して定められるべきものである。

 日常の家事とは,衣食住という夫婦の共同生活の基本的部分にかかわるものをいい,こうした夫婦の基本的部分について,夫婦の生活状況に照らして必要かつ相当な支出を伴う契約の締結が日常の家事の範囲とされるべきである。

 これに対し,夫婦の共同生活の基本的部分にかかわらないものや,夫婦の生活状況に照らして,不必要ないし不相当な支出を伴う契約の締結は,日常家事の範囲外とされるべきである。そして,契約の目的物の必要性の判断や支出の相当性の判断には,個々の夫婦の意思や事情も考慮されるべきである。

 イ 被告ら夫婦は,同年代の一般家庭と同等の生活水準にある。そして,本件契約に基づく受信料は,月額2340円と,月単位でみればそれほど高額とは言い難いが,本件契約は継続的に支払義務が生ずる契約であり,1年間でも2万8080円,居住年数によってはそれを優に超える金員の支払を求められる契約である。原告は,12か月前払の方式も受け付けており,この場合,12か月の受信料は2万6100円である。

 放送受信契約は,放送の受信に関する契約であるところ,放送に関しては,その情報が視聴者個々人の思想信条の形成に大きな影響を与えるものであり,その情報の入手源の選択も,個々人の判断に委ねられる必要性が高いものである。したがって,受信契約の締結が,夫婦共同生活に必要であるとして,夫婦間に代理権を認めたり,連帯責任を負わせたりすることは,受信したくない放送を受信し,その対価を支払って受信したくない放送の製作に助力することを強いることになりかねず,個人としての思想信条の保護に欠けることとなる。すなわち,放送受信契約は,そもそも,その性質上,夫婦であるからといって,一方に代理権を与えてよいような性質の法律行為ではない。また,被告は,近年,原告において度重なる不祥事が生じていたこともあり,原告が放送する番組を視聴することはなかったし,放送受信契約を締結することにも反対していた。

 さらに,昨今のインターネットの普及や他のテレビ放送網の充実により,公共放送から情報を得なければならない必要性はなくなっている。

 ウ 以上のとおり,放送受信契約は,衣食住にかかわる契約ではないこと,被告夫婦に長期間にわたり相当な金銭的負担を強いるものであること,個人の思想信条にかかわる部分が大きいことの事情を考慮すると,夫婦間で代理権を認めるのにふさわしくない性質の契約であるといえる。その上,被告は,放送受信契約の締結を希望しておらず,現に,原告が放送する番組を視聴しておらず,本件契約を締結しなくても,被告夫婦の生活には支障がなく,放送受信契約を締結する必要性に乏しく,放送受信契約の締結が日常家事の範囲に含まれるとはいえない。

 原告の契約担当者は,本件契約の締結が日常家事の範囲内に属するものかどうか,すなわち,被告の妻に代理権があるのかについて疑念を差し挟む余地があったといえるにもかかわらず,契約書に被告の妻が被告の名を署名押印していても,このような疑念を払拭するに足る措置を何ら講じていないのであるから,本件契約の締結が日常家事の範囲内であると信ずるについて正当な理由があったといえない。

 エ そもそも,受信料支払債務は,法律で,受信装置を設置した者に対し,必然的に契約をさせ発生する債務であり,しかも,片務的に発生するものである(受信装置の設置に対し発生し,対価として徴収するものではない。)。民法761条が想定するのは,原則的には双務契約の相手方というべきであり,判例,裁判例で日常家事債務を認められたものもそうである。

 オ 放送受信契約の締結には,民法761条は適用されないので本件契約の効力が被告に帰属することはない。


4 被告の主張に対する原告の反論

 (1) 民法761条は,日常の家事の範囲内において,夫婦の一方と取引関係に立つ第三者を保護することを目的とする規定であると解すべきであるから,問題になる特定の法律行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為に属するか否かは,その夫婦の立場のみに立って判定するのは相当ではなく,その夫婦と取引関係に立つ第三者の立場にも立って,これを客観的に判定すべきである。したがって,社会通念上生活必需品とされる食糧,衣類,燃料の買い入れ,夫婦の共同生活に不可欠な家賃,地代,電気水道料金の支払等の法律行為や,相当な範囲内での家族の保健,娯楽,医療,未成熟の子女の養育,教育等に関する法律行為は,その行為をする夫婦の主観的意思にかかわらず,民法761条所定の日常の家事に関する法律行為であると解するべきである。他方,日常の生活費としては客観的に妥当な範囲を超える借金をしたり,夫婦の特有財産である不動産を担保に供したり,それを売却するような行為は,日常の家事に関する法律行為に属しないものと解するべきである。

 テレビ放送や原告との間の本件契約の締結は,相当な範囲内での家族の娯楽に関する法律行為というべきであり,また,テレビニュース等により日常生活にかかわる情報や主権の行使にかかわる情報を迅速かつ簡易に取得することは,日常生活に不可欠というべきであるから,放送受信契約を締結する行為は民法761条の日常家事の範囲内の法律行為といえる。

 (2) 例えば,食糧,衣類,燃料については,これを継続的に購入するような契約を締結するような場合,個々の購入が社会通念上相当といえるのであれば,日常の家事の範囲内というべきであるから,契約の継続性をもって日常家事に該当しないということはない。

 被告は,受信料について,1年間では2万8080円になると指摘するが,このような事情は,食糧,衣類,燃料を継続的に購入する場合も同様であって,長期間の受信料の額を通算することに何ら意味はない。

 (3) 放送受信契約は,受信設備を廃棄(廃止)すれば,直ちに解約が認められる上,仮に,放送受信契約が締結されていても視聴自体を強制させるわけではない以上,何ら個人の思想信条の保護を奪うものではない。むしろ,受信機を設置した場合に原告との間で放送受信契約を締結すべきことは法律で定められていることであり(放送法32条1項),一般の家庭で日常的に行われていることである。夫に代わってその配偶者が契約することも珍しくない。これを認めなければ,夫が不在がちの家庭では放送受信契約の締結という法律上の義務を果たす機会が制限されることになる。

 (4) 被告は,本件契約の締結を望んでおらず,また,本件契約を締結しなくても,夫婦の生活に支障はなく,本件契約を締結する必要性に乏しかったと主張する。

 しかし,民法761条は,上記のとおり,夫婦の一方と取引関係に立つ第三者を保護することを目的とする規定であると解すべきであるから,日常家事の範囲については,その夫婦の立場のみに立って判定するのは相当でなく,その夫婦と取引関係に立つ第三者の立場にも立ってこれを客観的に判定すべきである。被告の主張は,民法761条の趣旨を没却するものであり妥当ではない。

 また,被告が放送を視聴しているか否かは,受信料支払義務の成否とは直接関係がない。すなわち,放送法32条1項を受けた規約5条は,受信料支払義務の発生要件について受信機の設置を要件としているのであって,放送番組の有無を要件とはしていない。

 (5) 放送受信契約は,公法上の契約ではなく,私法上の契約であり,放送法に特段の規定がないときは民法が適用される。また,放送受信契約は,双務契約ではなく,片務契約である。さらに,放送受信契約の成立日は,規約では受信機設置の日とされているが,運用上,放送受信契約の締結時としている。

  (以下へ続く


【判例】 NHK受信料請求事件 (札幌地裁平成22年3月19日判決) 2

2010年05月11日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

第3 証拠
  証拠関係は,本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから,これを引用する。

 

 理      由

 

1 認定事実
 請求原因(2)アのうちAが被告名で放送受信契約書に署名押印し,被告名で受信料4680円を支払ったこと,請求原因(3)の事実は当事者間に争いがなく,この争いのない事実に加え,証拠(甲1,2,6,9ないし12,16,証人Cの証言,証人A(1回,2回),被告本人尋問の結果(1回,2回))及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,この認定事実に反する証拠は採用しない。事実認定に供した主な証拠は再掲する。

 なお,原告は,放送受信契約書(甲1)を提出し,作成者として被告,立証趣旨として放送受信契約の成立を主張していた。ところが,被告が被告作成部分の成立を争い,被告の署名はAがしたものであり,印章もAのものであると主張したのを受けて,原告は,原告と被告が直接,本件契約を締結したとする主張を撤回し,Aによる代理行為等により原告と被告との間に本件契約が締結されたとの主張に限定したので,放送受信契約書(甲1)の被告作成部分はAが被告名義で署名押印したものとして扱うこととする。

(1) 取次者
 Cは,平成12年12月から平成18年11月までの間,原告(札幌放送局)の契約取次業務に従事していた。この期間のうち,平成12年12月から平成14年3月までは株式会社Dに,平成14年4月から平成15年3月までは株式会社Eに派遣社員として所属していたが,この2つの会社はいずれも原告から契約取次業務の法人受託を受けており,5人前後の社員が従事していた。(甲6)

 Cは,平成15年2月7日当時,原告から業務委託を受けた株式会社Eに所属して,2か月間で約800件の未契約者宅を割り当てられた上で,1日に100から200の住宅を訪問し,約20の住宅の方と面会していた。Cは,このように多数の取扱件数を受け持っており,個々具体的な事例についての記憶はないものの,被告が居住する地区を担当したのが,平成15年2月,3月である上,被告の居住するマンションが高級マンションであったことから,被告方を訪問したことだけは記憶している。(甲6)

 Cは,原告のマニュアルに従い,世帯主の妻であっても,放送受信契約を締結することができると考えていた。(証人C)

 原告と放送受信契約を締結している世帯は,全国的には70%程度であるが,東北地方では90%を超えているところがある一方で,札幌市内では,世帯の入れ代わりが多いことから,全国平均よりも低い。(証人C)

(2) 訪問
 Cは,平成15年2月7日,被告方を訪問して,Aと面談した。Cは,Aに対し,放送受信契約書『受信契約者』欄の「フリガナ」「お名前」「ご住所」「電話」「口座通帳名義」「指定口座」欄に自らピンク色のマーカーで着色した放送受信契約書を示して,記入を求めた。(甲1,6,証人C)

 Cは,放送受信契約書の右側半分にある「家屋コード」欄に「l」,「氏名」欄に「H」,「収納金額」欄に「4680」,「期間(平成)」欄に「15年2月~15年3月」,「契約・転入・変更年月」欄に「1502」と記載していた。(甲1,証人C)

 Aは,Cにいわれ,放送受信契約書『受信契約者』欄の「フリガナ」欄に「F」,「お名前」欄に「H」,「ご住所」欄に「a-b 札幌市c区de丁目f-g-h G」,「電話」欄に「i-j-k」,『お支払いは便利でお得な口座振替でどうぞ』欄の「フリガナ」欄に「F」,「口座通帳名義」欄に「H」,「指定口座」の「銀行等」欄に「I」と記載し,「お名前」欄の「H」の横にある印(○を付した文字)欄に「B」印を押印した。Aが被告の名前を記載したのは,被告が世帯主だからである。(甲1,証人A1回)

 なお,Aは,放送受信契約書の冒頭の日付欄に「平成14年2月7日」と記載している(甲1)が,これは誤記である。(A2回)

(3) 支払
 Aは,平成15年2月7日,Cに対し,同年2月3月分の受信料として,4680円を支払った。(争いがない)

 Aは,平成15年4月5月分,6月7月分,8月9月分,10月11月分の支払として各4680円ずつ支払った。その後,Aは,周囲の人や友人の少なくとも10人以上に受信料を支払っているかについて質問したところ,ほとんどが受信料を支払っていなかった。そこで,Aは,原告に対し,電話で受信料の徴収が不公平ではないかと問い合わせた。原告の担当者は,受信料を支払っているほうが多いと回答したが,Aは払っていない人もいるという事実を確認して不公平であると思い,以後,原告に対する受信料の支払を止めた。(甲2,証人A1回,2回)

 Aは,原告から受信料の請求書が郵送されてきても,被告に見せることなく捨てていた。(証人A1回)

 被告は,平成15年12月1日から平成20年3月31日までの52か月分の放送受信料12万1680円を支払っていない。(争いがない)

(4) 方針
 被告は,平成7年ころ,住所地のマンションに転居してきた。被告は,平成11年ころ,原告の取次者が訪問して,放送受信契約を締結した上,受信料を支払うよう要請されたが,これを拒絶した。(被告1回)

 被告は,平成11年12月,Aと婚姻した。被告夫婦は共働きである。Aは婚姻する少し前から,住所地のマンションで被告と暮らしている。電気,ガス,水道等はAが同居する以前から被告名義であった。(証人A1回,2回,被告)

 Aは,平成14年9月18日,出産し,3か月前から産休を取得し,平成16年1月ころまで育児休暇を取得し,同年2月から職場に復帰した。(証人A1回)

 被告は,住所地のマンションに転居する以前からテレビを購入し,Aと婚姻する前から,主に映画を見るためにJに加入し,月額5880円の視聴料を支払うとともに,Jを通じて放送を視聴している。現在のテレビは,1,2年前に購入したものである。(証人A,被告2回)

 被告夫婦は,いずれもあまりテレビは視聴せず,原告の番組もあえて視聴しようとは思わなかった。(証人A1回,被告1回)

 被告夫婦は,札幌簡易裁判所から被告に対して支払督促申立書の送達があるまで,原告との契約,原告から受信料請求について話題にしたことがなかった。(証人A,被告)

(5) 提訴
 原告は,平成20年3月7日,札幌簡易裁判所に対して,支払督促申立書を提出した。(顕著事実)

 被告は,同月25日,札幌簡易裁判所に対し,支払督促異議申立書を提出した。被告は,同申立書に異議事項として,過去数度にわたりNHKから支払催促の電話及び訪問を受けましたが,その度に次の内容を伝えた。①そもそもNHKは見ていないこと,②一般企業の加入案内等と比較してNHKから消費者の意思を無視した強引で過度の営業を受けており,精神的に苦痛を覚えていること,③受信契約の覚えがないので,契約書の提示を求めたこと,④BSの受信設備もなく,Jとの契約があり,NHKと直接契約をする理由がないこと,⑤NHKの度重なる不祥事を理解できず,NHKの受信意思がないこと。(被
告1回)

 札幌簡易裁判所は,同年5月16日,第1回口頭弁論期日において,本件を民事訴訟法18条に基づき,札幌地方裁判所に移送した。(顕著事実)

 札幌地方裁判所は,同年7月18日,第2回口頭弁論期日において,被告に対し,弁護士に委任することを検討するよう指示したところ,被告は,同月23日,中村誠也弁護士及び淺松千寿弁護士を訴訟代理人とする委任状を提出した。(顕著事実)

 札幌地方裁判所は,平成20年10月22日,双方の代理人を通じて,原告及び被告に対し,被告が原告との間で新たに放送受信(衛星)契約を締結して,本件訴訟を終局的に解決することを勧告したところ,被告は,裁判所の和解勧告に応じたものの,原告は,同年11月13日付け上申書により裁判所の和解勧告に応じなかった。(被告1回,顕著事実)

 札幌地方裁判所は,平成21年7月13日の第4回口頭弁論期日において,弁論を終結し,同年9月18日を判決言渡期日と指定したが,原告は,同年8月21日,弁論再開の申立てをした。原告の同日付け「弁論再開の上申書」には,再開の理由として,同年7月28日に言い渡された東京地方裁判所の判決書及び放送受信契約の締結は日常家事債務に関する法律学者の意見書の取調べのほか,被告に対する請求とは別に,Aに対する請求の追加提起を挙げている。(顕著事実)

(6) 放送法
 ア 当時の電波監理長官であるK政府委員は,衆議院電気通信委員会において,放送法の特色及び受信料について,次のとおり答弁している。(甲9,16)

 第一にはわが国の放送事業の事業形態を全国津々浦々に至るまであまねく放送を聴取できるように放送設備を施設しまして,全国民の要望を満たすような放送番組を放送する任務を持ちます国民的な公共的な放送企業体と,個人の創意と工夫とにより自由かっ達に放送文化を建設高揚する自由な事業としての文化放送企業体,いわゆる一般放送局又は民間放送局というものでありますが,それとの2本建としまして,おのおのその長所を発揮するとともに,互いに他を啓蒙し,おのおのその欠点を補い,放送により国民が十分福祉を享受できるように図っている(昭和25年1月24日開催の第7回国会衆議院電気通信委員会議録第一号20頁)。

 今後わが国におきますところの一般放送の受信をすることのできる受信機を設置した国民は,何人にかかわらず全部この放送協会と契約を結んで,聴取料を放送協会に納めなければならないことになっておるのであります。これは今後民間放送が出て参りましたときに,放送協会の事業を継続する。しかもこの放送協会がもうかるともうからないとにかかわらず,全国的に電波を出さなければならないという使命を負わされた放送協会といたしまして,この聴取料の徴収ができない場合には,協会の事業は成り立って行かないことは明らかでありまして,従ってぜひともこういう聴取料を強制的に徴収するということが必要になって参るのであります。ところでこれを立場を変えまして,国民の側から見まする時に,仮に日本放送協会の放送を聞かず,もっぱら民間放送だけを聞いている場合でも,この聴取料を納めなければならないのでありまして,いわばこれは放送の受信機を持っているということのための,一種の税金みたいなものではないかという意見も出て参るのであります(昭和25年2月2日開催の第7回国会衆議院電気通信委員会議録第4号3頁)。

 イ 放送法逐条解説(金澤薫著・財団法人電気通信振興会・平成18年4月1日発行)は,受信料について,次のとおり説明している。(甲12)

 受信料の法的性格は臨時放送関係法制調査会の報告において明らかにされている考え方が一般的に受け入れられている。その報告においては,「受信料とは,協会の業務を行うための一種の国民的な負担であって法律により国が協会に徴収権を認めたものである。国がその一般的な支出にあてるために徴収する租税ではなく,国が徴収するいわゆる目的税でもない。国家機関でない独特の法人として認められた協会に徴収権が認められたところの,その維持運営のための受信料という名の特殊な負担金と解すべきである。」としている。このため,協会の放送を受信することができる受信設備を設置した者は,実際に放送を受信し視聴しているか否かにかかわらず,協会と契約し受信料を支払わなければならない。この意味で,受信料は放送の視聴に対する対価ではない。協会の財政的基礎を受信料に負うこととしたのは,協会は,あまねく全国に豊かでかつ良い放送番組を提供するために設立された公共的機関であり,言論報道機関であることから,その財源は,あまねく全国に放送することを可能とするものであるとともに,国,広告主等の影響をできるだけ避け自立的に番組編集を行えるものとする必要があり,このことを実現するために,税や広告収入ではなく,特殊な負担金である受信料制度によることが望ましいと判断したものである(149頁)。

 受信契約は公法上の契約ではなく,私法上の契約である。受信料の支払を遅滞した場合等の事態が生じた場合は,民事訴訟法の定める手続によることになる(153頁)。

 なお,著者である金澤薫は,平成14年から総務省事務次官に就任し,平成18年現在,日本電信電話株式会社顧問である(著者紹介)。

2 放送受信契約について検討する。

 (1) 放送法は,次のとおり規定する。なお,放送法にいう協会とは,日本放送協会(本件の原告)を指す(2条2の2の2,第二章)。

 ア 協会の放送を受信できる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない(32条1項本文)。

 イ 協会は,あらかじめ総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ,前項の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない(32条2項)。

 ウ 協会は,第1項の契約の条項については,あらかじめ総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更使用とするときも同様とする(32条3項)。

(2) 放送法施行規則6条は,放送法32条3項の契約の条項には、少くとも次に掲げる事項を定めるものとする,と規定する。

 ア 受信契約の締結方法
 イ 受信契約の単位
 ウ 受信料の徴収方法
 エ 受信契約者の表示に関すること
 オ 受信契約の解約及び受信契約者の名義若しくは住所変更の手続
 カ 受信料の免除に関すること
 キ 受信契約の締結を怠つた場合及び受信料の支払を延滞した場合における受信料の追徴方法
 ク 協会の免責事項及び責任事項
 ケ 契約条項の周知方法

(3) 規約(昭和43年4月1日全部改正版)は,次のとおり規定する。(甲11)

 ア 放送受信契約は,世帯ごとに行うものとする。ただし,同一の世帯に属する2以上の住居に設置する受信機については,その受信機を設置する住居ごととする(2条1項)。

 イ 受信機を設置した者は,遅滞なく,次の事項を記載した放送受信契約書を放送局に提出しなければならない。ただし,新規に契約することを要しない場合を除く(3条1項)。

  (ア) 受信機の設置者の氏名及び住所
  (イ) 受信機の設置の日
  (ウ) 放送受信契約の種別
  (エ) 受信することのできる放送の種類及び受信機の数
  (オ) 受信機の住所以外の場所に設置した場合はその場所

 ウ 放送受信契約は,受信機の設置の日に成立するものとする(4条1項)。

(4) 放送法の規定,放送法施行規則の規定,規約の規定からすれば,放送受信契約は,次の特質を有する公法的色彩の強い団体主義が加味された特殊な契約であるということができる。

 ア 原告の放送を受信できる受信設備を設置した国民は,原告と放送受信契約を締結しなければならない。

 イ 放送受信契約は,受信設備を設置した日に成立する。

 ウ 受信設備(受信機)を設置した国民は,受信契約書を放送局に提出しなければならない。

 エ 放送受信契約は世帯ごとに行う。

 オ 受信料の免除は,あらかじめ総務大臣の許可を得た基準による。

(5) 放送法の立法担当者の説明,放送法逐条解説(放送法の有権的解釈を行うことができる者による解説と解される。)による説明及び原告の本件訴訟における主張によれば,放送受信契約は,次のように解釈,運用されている個人主義を基調として私法上の契約ということができる。

 ア 受信料は,国民の特殊な負担金であって,聴取に対する対価ではない。原告は,放送法により,特殊な負担金を国民から徴収することの権能を付与されている。

 イ 放送受信契約は,契約当事者間に対価関係のない片務契約である。

 ウ 放送受信契約の成立は,受信設備を設置した日ではなく,放送受信契約を締結した日からである。

 エ 放送受信契約には解除という概念がなく,受信料支払義務を消滅させるには,受信装置の設置を撤去するか,受信料を原告から免除してもらうことになる。

 オ 原告は,特殊な負担金の徴収手段として特別な徴収方法が認められず,民事訴訟法によるべきこととされている。

  (以下へ続く