東京・台東借地借家人組合1

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スルガ社、「所有権移転」文書配布 光誉と一体で仮装か (朝日)

2008年03月06日 | 住宅・不動産ニュース

   スルガ社、「所有権移転」文書配布 光誉と一体で仮装か


 2008年03月05日  朝日新聞 

 

 東証2部上場の不動産・建設会社スルガコーポレーション(横浜市)が所有していた都心のビルを巡る弁護士法違反事件で、同社がビルの入居者に、ビルの所有権が不動産会社「光誉実業」(大阪市)に移ったと仮装する文書を送付していたことがわかった。立ち退き交渉にあたった光誉は入居者に、実態の伴わない売買契約書などを示していた。警視庁は、これらの文書は地上げを進めるためスルガ社と光誉が一体となって作成したとみている。

 スルガ社の岩田一雄会長(代表取締役社長を辞任)は4日の記者会見で、光誉との「仮装売買」を認め、「(仮装を)知った上で書類に決裁印を押した」と述べた。警視庁はスルガ社側が違法性を認識した上で光誉に立ち退き交渉を依頼していたとみて、スルガ社関係者の事情聴取を進めている。

 組織犯罪対策4課などの調べでは、事件の舞台となった東京都千代田区麹町の「秀和紀尾井町TBRビル」と土地の所有権は05年9月、外資系投資銀行からスルガ社に移った。直後の同年10月上旬、ビル入居者に岩田社長名の「お知らせ」と題する文書が送られた。同月11日付で所有者が光誉と都内の住宅販売会社に移り、翌11月から家賃の支払先が変更になる、との内容だった。

 同じころ、ビルがスルガ社から光誉などに転売されたとする「不動産売買契約書」の写しが、光誉から入居者に送られた。また、光誉とともにビルの所有者となった形の住宅販売会社が、テナント賃料の代理受領を光誉に依頼するとした「委任状」も入居者に届けられたという。

 当時入居していた弁護士の話では、文書を受け取ったあと不動産登記簿などを確認したところ、所有権はスルガ社のままになっていた。このため同社に10月26日付の内容証明郵便で所有権移転の真偽を照会した。2日後、スルガ社から「所有権は移転しているため、賃料は光誉実業の口座に振り込んでください」と回答があったという。

 こうした文書が入居者に届けられた05年10月以降、光誉の朝治博容疑者(59)らは立ち退き交渉を本格化させたという。

 調べでは、スルガ社が光誉に地上げを依頼したほかの物件を巡っても、同様に売買を仮装した書類が使われたという。

 この事件で警視庁は12人を逮捕。5日午前、スルガ社を家宅捜索した。

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“わけあり物件”の取得で急成長   バブル経済の崩壊とともに、地上げ屋は表舞台から姿を消した。その地上げ屋が再び息を吹き返したのは1990年代後半のことだ。その要因の1つは不動産ファンドの急増である。

 

  1990年代後半になると、地価下落で割安になった不動産を購入する海外のファンドが増え始めた。その後、国内系ファンドも登場し、雨後の竹の子のように増えたファンドがオフィスビルやマンションを買いあさった。動き出した東京の不動産市場。大阪を地盤にしてきた地上げ屋が東上を始めたのはビジネスチャンスを嗅ぎ取ったからだろう。

  こうしたファンドの旺盛な需要を満たすため、不動産開発業者は競うように物件を建築した。その結果、用地価格は高騰。取得費用を抑えるため、入居者のいる物件を安価に購入し、専門業者を使って立ち退かせるデベロッパーが相次いで出た。光誉はまさに、この専門業者。その意味では、昨今の不動産バブルが生んだあだ花である。

 そして、光誉に立ち退き交渉を依頼したスルガコーポも不動産市場の活況の中で急成長を遂げた。 

  スルガコーポは入居者の立ち退きが進まない“わけあり物件”を積極的に取得するデベロッパーとして業界では広く知られていた。例えば、東京・銀座の中央通りに面したとあるビル。現在はスウォッチの路面店が入居しているが、この物件の再開発にかかわったのもスルガコーポである。

  この物件が建つ前にあったビルを米投資銀行、モルガン・スタンレー証券が購入したのは2000年のこと。ただ、立ち退き交渉が難航し、2003年にスルガコーポに売却した。一部のテナントが退去せず、難しい不動産だったが、取得したスルガコーポは半年あまりで立ち退きを完了させ、スウォッチに転売している。

 権利調整の複雑な物件を割安に購入し、デベロッパーやファンドに転売する――。2003年3月期以降、スルガはこの不動産ソリューション事業で急拡大した。

  2003年3月期に約172億円だった不動産ソリューション事業の売上高は、約209億円(2004年3月期)、約284億円(2005年3月期)、約508億円(2006年3月期)、約609億円(2007年3月期)と右肩上がりに伸びた。2008年3月期には中間期だけで778億円を計上している。2008年3月期中間決算の場で、スルガコーポは通期の売上高予想1180億円を1400億円に20%近く上方修正した。その原動力となったのは不動産ソリューション事業である。

  代表権を返上した岩田一雄会長と共に、取締役を退任した高城竜彦氏がこの不動産事業を手がけていた。住友不動産の社長や会長を務めた高城申一郎氏の親族として知る人ぞ知る存在だ。岩田会長の息子、岩田剛取締役の妻も高城氏とは血縁関係にある。

  「大阪流の熱意のある会社と思っていた」。4日夜の会見で岩田会長は光誉との取引の経緯を苦渋に満ちた表情で語った。金融機関から“フロント企業”と伝えられ、2007年に取引を打ち切ったという話だが、ソリューション事業のトップだった竜彦氏がそれまで知らなかったとは考えにくい。曰くつきの案件をまとめるにはそれなりの背景がなければ難しい。

  東証2部上場会社が絡んだ弁護士法違反事件は、ここ数年の不動産市場の過熱が生んだと言っても過言ではない。だが、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の影響もあり、現状の東京の不動産市場は以前ほどの熱はなく、不動産ファンドの買いは落ち込んでいる。ここ数年の不動産市場を鮮やかに彩った地上げ屋とデベロッパーの蹉跌は、不動産市場が冬景色になったことを誰の目にも明らかにした。

                      

 追伸、スルガ社は、今回の事件が原因で金融機関から融資を止められ、2008年6月下旬に倒産した。

 

全国借地借家人新聞より

 

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