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自主的に組織された借地借家人のための組合です。
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契約書には中途解約のことが
何も書かれてはいないが解約は可能なのか
(問) まだ1年程契約期間が残っているが、経済的理由から廃業する。だが契約書には中途解約に関する条項が何も書かれていない。貸主は残存期間家賃を全額払えば中途解約に応じると答えたが、家賃を払わないと中途解約出来ないのか。
(答) 一般的な居住用借家契約書であれば、例えば国土交通省が推奨する「賃貸住宅標準契約書」では、「乙(借主)は甲(貸主)に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。」と書かれている。大概の借家契約書に同趣旨のことが書き込まれている筈である。この特約期間を遵守すれば、いつでも契約期間内の中途解約は可能である。
中途解約を禁止する特約がある場合は借主の利益を一方的に害する特約として消費者契約法10条に違反し、特約は無効になる。それにより借主からの中途解約は認められる。
しかし中途解約について何も契約書に書かれていない場合はどうなるか。
民法は、「期間の定めの無い契約」の場合、3か月の解約予告で契約は終了すると規定する(民法617条)。
また期間の定めのある契約で解約権の留保がある場合にも3か月の予告期間で中途解約を認めている(民法618条)。
しかし、借地借家法30条の強行規定では「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」という規定がある。貸主の場合、3か月の予告期間での中途解約は、借地借家法26条1項に抵触するので特約は無効となる。貸主の場合は借地借家法26条1項により期間の満了の1年前から6月前までの間に解約の通知をしなければならない。従って、貸主の3か月の予告期間での解約は認められない。
期間の定めがある場合、借主の場合は借地借家法30条の強行規定に反しないので、3か月の予告期間で中途解約はできる。
しかし、特約が無い場合、中途解約は許されない。一方の当事者は他の当事者に契約違反がない限り、一方的に借家契約を終了させることが出来ない。勿論、当事者が合意すれば中途解約は可能である。
最近は店舗が空いた場合、次の借り手が長期間決まらないことから貸主は契約の継続を望み、合意解約には応じない。その場合、契約期間が終了するまで契約は継続し、家賃の支払義務も当然終了しない。
以上のことから期間の定めのある借家契約は、契約期間内では借主から解約の申入れが出来ないという結論になる。
相談者の場合、解約が出来ないとしたら解約のために契約違反をするしかない。借主の緊急避難策は、家賃の支払を遅滞して貸主からの契約解除を待つ方法である。だが、この方法では敷金や保証金の返還でトラブルになるのは確実だ。
相談者の場合、解約が全く出来ないのか。
定期借家契約は原則として契約の中途解約を認めていない。しかし借地借家法38条5項では200㎡未満の居住用に限られるが、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情がある場合は解約の申入れをすることができ、解約予告から1箇月で契約は終了すると規定されている。
これは契約後の事情変更により契約の継続が困難になった場合にまで家賃の支払義務を負わせ続けるのは借主にとって過酷過ぎるということで契約上、特約が無くても強行規定で借主の中途解約を認めている。借主の中途解約権を保障した規定に反する特約で借主に不利なものは無効とされる(借地借家法38条6項)。
従って、相談者の場合も当事者の予測困難な事情の変化によって借家契約を継続することが著しく困難になった場合に該当するので、「事情変更の法理」により解約が認められる可能性が高い。
(参考例)
契約書に中途解約の予告期間と解約の制裁金が書かれている場合
契約書に中途解約する場合は、6箇月前までに書面で通知するか、或は 6箇月分の賃料(予告期間の損料)を支払うという約定に従って貸主が6箇月分の損料(564万円)を借主の保証人に請求した。
その支払で争われた裁判では、解約は双方の合意に基づくもので、損料支払はあくまで一方的な解約権行使を補償するものなのであるから、この件では損料の支払は不要という判断をした(東京地裁1993年6月14日判決)。家賃の6箇月分の約定損料を過大と判断した結果である。
民法
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
1 土地の賃貸借 1年
2 建物の賃貸借 3箇月
3 動産及び貸席の賃貸借 1日
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
借地借家法
第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
第38条
5 第1項の規定(定期借家)による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
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埼玉県新座に住む向井さんは、今から2年前にこのマンションに入居した。入居の際のトラブルやその後の結露などの問題で借地借家人組合に入会。
向井さんは、今年の8月末で期間満了となり更新をして、新しい契約を締結するつもりでいた。
契約書には「更新時には、更新は新賃料の1ヶ月分を支払って更新することが出来る。又、更新手数料は借主、貸主から0.5ヶ月分ずつとする。火災保険は管理業者指定した**保険とする。」と記載されていた。
更新に際して、請求できることは、貸主にきちんと伝えようということになり、本人が「(1)更新料支払い特約の削除。(2)管理会社は貸主の代理人であるから、更新手数料は貸主に請求すること。(3)火災保険についてはもっと掛け金の安い全労災にするので管理会社の要求には応じられない。(4)借地借家人組合に入会しているので今後の窓口は組合にする。」と記した通知書を出した。
早速、貸主からは「更新料削除や火災保険会社の変更など、貴殿の一方的な主張は認められないので契約を解除する」とする内容証明書が送られてきた。
向井さんは組合と相談し、「契約更新は双方がその契約条件などで要望や請求を出し合い話し合うのが筋で気に入らないからといって契約を解除することこそ一方的である」とする文書を用意していた。
ところが、貸主からこちらの主張を全面的に認める更新契約書を送ってきた。
「やはりがんばるものだ」と向井さんの感想である。
東京借地借家人新聞より
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更新料の授受は慣習に多く頼っており、地域差が非常に大きいという理由から「借地借家法」においても更新料の規定は置かれなかった。更新料については法律には何の規定もない。
従って法律上は、賃借人が更新料支払の義務を負っている訳ではないし、また賃貸人が更新料を請求する権利を持っている訳でもない。
最高裁は更新料に関して「賃借期間満了に際し賃貸人の一方的な請求に基づき当然に賃借人に賃貸人に対する更新料支払義務を生じさせる事実たる慣習が存在するものとは認められない」(最高裁1978年1月24日判決)と判断した。
即ち、予め更新料の支払約束が無い場合は賃貸人が賃借人に対して更新料を請求することが出来ない。前記最高裁判決後、借地・借家に関して更新料支払合意が無い場合には更新料支払を認めた判例は存在しない。
それでは、契約書に更新料支払特約がある場合、賃借人は更新料の支払義務を負うのか。
更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、
(A)賃料の不足を補充する趣旨
(B)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価
(C)合意更新された期間は解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、
以上三点である。
更新料支払特約がある場合、契約を合意更新せずに、法定更新するとどうなるか。
①「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち、更新料特約が有る場合、賃借人は更新料支払の義務がある。
②「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。
借家の場合において、最高裁は②の立場から「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は特段の事情の認められない以上、専ら賃貸借契約が合意される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(1982年4月15日判決)と明快な判断をしている。
更新料支払特約は合意更新を想定したもので、法定更新には適用されない。法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。
これは当然の結論である。借地借家法は経済的負担の無い法定更新を定めている。更新料特約は法の趣旨に反して借主に不利益な経済的負担を課している。特約が法定更新の場合にも適用されるとすれば、それは実質的に経済負担を強制する合意更新を義務付け、無償の法定更新を排除するに等しい。換言すれば法定更新制度の否定である。
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契約書がないまま亡父が昭和25年に
借地した土地の明渡しを要求された
(問) 地主から、今年は借地期間が満了するから明渡してくれと言われた。借地の契約書は作っていなかった。亡父の話しでは昭和25(1950)年9月に土地を借り木造の家を建てて住み始めたと聞いている。地主の請求に対しどう対処したらいいか。
(答) 借地権を設定する際に、当事者の間で存続期間を定めなかった場合には、その借地権の存続期間を「借地法」で法定している。相談者の場合も「借地法」の適用となり、同法第2条1項の規定により非堅固の木造建物の場合、借地期間は30年となる。
従って30年後の1980年に一旦契約期間は満了する。だが、その時点で建物が朽廃しておらず、また借地人が土地の使用を継続し、地主が遅滞なく異議を述べないと、借地権は前契約と同一の条件をもって設定されたものとみなされる。契約書が無くても借地契約は更新されたものと扱われる。それを法定更新といい、その場合の期間は木造の場合は20年と法定される(「借地法」第6条1項)。そうすると、借地契約は2000年に再び法定更新され、2020年まで期間が延長されている。
但し借地契約が40年以上も前になされ、契約書も無く関係者も死亡して、借地契約の始期を明確に知り難い事情が有ったという事案において、裁判所の審理の結果判明した満了時より1年半を経過して述べられた異議も遅滞の無いものとして、「遅滞なく」を緩やかに解した最高裁の判例(1964年10月16日判決)もある。
相談のケースでは、借地契約書も無く、地主の方でも先代の地主が死亡したりして、正確な更新時期がよく解らないとしても5年も経過している以上、遅滞なく異議を述べたとは言えない。契約は2020年まで法定更新されている以上、土地の明渡に応じる必要はない。
なお、契約期間が満了し地主から遅滞なく更新拒絶の異議の申立てがあった場合でも、地主の述べる異議には正当事由が必要である。正当事由があるか否かは、裁判所によって借地関係の存続を希望する借地人と、終了を望む地主との双方の土地を使用する事情等を総合的に考慮して判断される。裁判所は地主の正当事由を簡単には認めていないので借地の明渡が認められる事は先ず有り得ない。
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(問) 父の代から土地を借りています。10年前に父が亡くなり、長男である私が借地権を相続し、地代を支払っています。父が土地を借りてから70年以上が経過し、建物も相当古くなっていますが、修理しながら建物を維持し生活しています。契約書は全く作成せず口約束で借りていて、地代の領収印が押された通い帳が契約時から全部残っています。
地主も代替りし、最近になって契約書を作成したいと言って、契約書の案文を郵送してきました。それを見ると契約期間は10年となっていて「更新時には借地権価格の10%の更新料を支払うことによって契約を更新することができる」「建物の増改築は一切行わないこと」と書かれています。どうしたらいいでしょうか。
(答) 土地や家の賃貸借契約は口約束でも契約は成立する。借地借家法が一部改正され、更新のない定期借地や定期借家契約が法律で認められたが、定期借地や定期借家契約の場合は書面で契約して置かないと契約として認められない。それ以外の普通の借地や借家の契約は、地代なり家賃の領収書があれば立派に契約は成立する。
契約書を作成して置かないといつ追出されるか不安だと思っている人もいて、契約書の内容が借地人にとって不利なものであっても判を押してしまう人がいる。契約書は契約内容を証明する一つの手段に過ぎない。貸主側が作成する契約書の多くは、借地人の権利を拘束し、義務ばかり押付けた不利なものが多く、作成したために後で取り返しの付かないことになり兼ねない。
契約書の特約の中で借地借家法の強行規定に反する条文は無効である。例えば、契約の更新、契約期間に関しては、平成4(1992)年8月1日施行の「借地借家法」以前に締結された借地契約は「借地借家法」附則6条の「借地契約の更新に関する経過措置」(*)により旧借地法が適用される。
契約存続期間は、旧「借地法」第2条2項(強行規定)が適用され非堅固な建物では20年、堅固な建物では30年以上の契約期間でなければならない。これよりも短い存続期間を定めた場合は、「借地法」2条2項の最短期間制限に抵触することになる。借地法11条「借地権者に不利なものは定めなかってものとして取扱う」により無効となる。但し、借地契約自体が無効になるわけではない。存続期間が何年になるかが従来から問題になっていた。
存続期間を定めなかった場合として、堅固建物は60年、非堅固建物は30年の規定(借地法2条1項)を適用するのか。或いは、当事者が最短期間を約束したという趣旨を尊重して堅固建物は30年、非堅固建物は20年の規定(同法2条2項)を適用するかで見解が分かれていた。
最高裁大法廷(昭和44(1969)年11月26日判決)は、「借地法2条1項本文に反する契約条件であって、借地人にとって不利なものであるから、借地法11条により存続期間については当事者間に何らの合意が存在しなかったものとして取扱い、その存続期間は、借地法2条1項により堅固建物あれば60年、非堅固建物であれば30年に法定される」という見解で統一された。従って、今回の場合であれば、10年の借地期間で契約すれば、30年の契約期間として取扱われる。
更新料の支払特約は判例上、一概に無効とは言えない。借地人の中には契約の更新時に莫大な更新料を支払った上に、著しく不利益な契約書を作成し、後で後悔している人が見かけられる。
借地契約は地主との合意がなくても、契約書を作成しなくても、更新料を支払わなくとも「借地法」4条或いは同法6条の規定によって、例えば、木造建物の場合であれば、前契約と同一条件で、存続期間20年の契約で、法律的に契約を更新したものとして取り扱われる。このように地主の意思に拘わりなく契約の更新が条文の規定により自動的に更新される。これを法定更新制度と言い、地主の無茶な要求を拒否できる規定あり、借地人の権利を守る法規定である。
地主が幾ら契約の更新をしていないと叫んだとしても、また「契約解除だ」と喚き散らそうとも、借地契約の更新を法的に覆すことは難しい。借地人は、安心して、例えば「借地法」4条による「借地の更新請求」を選択すれば、短期間で借地の更新は終了する。地主との煩わしい契約交渉や更新料の金額交渉を一切せずに、一方的に借地の更新を達成できる。
いずれにしても、借地人にとって不利な特約は削除させるか、削除に応じない場合は契約書の作成は拒否した方が得策だ。もしも、契約書を作成する場合でも、前以って組合に相談し、充分に点検して貰ってから押印することをお薦めする。
(*)『借地借家法』附則6条(借地契約の更新に関する経過措置)「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による」によって、平成4年8月1日(「借地借家法」施行)以前に締結された借地契約は、以後更新を繰り返しても、更新に関しては「借地借家法」の規定は適用されず、旧「借地法」の規定が適用される。
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法定更新の選択を通知すると
家主は特約の削除に合意
池袋駅から歩いて5分の繁華街の一角で6年前から美容室を営業している小池さんは、この1月で契約期間が満了する。
昨年12月に家主から契約更新にともない「原契約にあるとおり、賃料の15%の増額、更新料の2ヵ月分の支払をお願いいたします」と通知してきた。
小池さんはこの不景気の中で家賃は下がっているのに「契約書には更新時に15%の値上げの特約」があるために毎回値上げを認めていたのでは、5回更新すれば最初の家賃の2倍になってしまう。 そこでなんとかしなければと思って組合事務所にやって来た。
組合は「更新には、両者が合意して更新する合意更新と合意が出来ない場合、法律が自動的に更新してしまう法定更新があることを説明し、この法定更新では期限の定めのない契約になり更新というものがなくなってしまう事」を説明した。
小池さんは直ちに家主に現契約書に書いている更新時に、賃料の15%値上げの特約を削除しなければ、法定更新にすることを家主に通知した。
すると家主側はこの特約を削除する事で合意したいと言ってきた。
小池さんは「最初は不安だったが、組合の言うとおりに交渉したら、一発で解決した。さすが組合だ。困った時は組合に行きなさいと今度は私が宣伝して回ります」と喜んで語った。
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マンション:短期滞在型の中途解約トラブル増える
「敷金・礼金不要」?よく確認を
「システム権利金」って何?
敷金・礼金なしで部屋を月単位、週単位で貸すいわゆる「短期滞在型マンション」で、中途解約時の返金をめぐるトラブルが増えている。前払いの料金に含まれる権利金・保証金の扱いがあいまいなことが原因だ。
国民生活センターや東京都消費生活総合センターには最近、「契約期間前に解約したが、残金を返してくれない」「契約前に入金してキャンセルしたところ、大部分が返金されない」という相談が相次いでいる。
相談の対象は「ウィークリー」「マンスリー」の名前で全国展開する大手業者。都消費生活総合センターによると、この業者は契約時に短期利用システムを使うための「システム権利金」を部屋代と合わせて請求し、中途解約の場合は権利金の部分を返金せず、部屋代のみを返す精算方法をとっている。
同センターが主な5業者を調べると、この大手業者の精算方法がとりわけ複雑で、契約時に解約条件や返還金額について十分な説明をしていないケースがあった。このため、同センターが仲裁に入って未利用分の返還を求めた。この業者は「十分説明したつもりだったが、中には納得いただけなかったケースもあったようだ。今後は誤解のない契約を結びたい」(同社賃貸事業本部)と残額を返金した。
同センターの法律アドバイザーで消費者問題に詳しい弁護士の高見沢重昭さんによると、消費者契約法に照らせば、中途解約に際して客側に一方的な損害を与えかねない契約条項は無効と判断されることがある。また、返金についての説明が不十分な場合も、重要事項の説明義務違反にあたり、契約を取り消すことが可能という。
高見沢さんは「敷金・礼金不要という宣伝をうのみにせず、契約時に中途解約条件をよく確認することが大切」とアドバイスする。短期滞在型マンションは全国に約10万室あると見られる。宿泊施設か賃貸住宅かの法律上の線引きがあいまいで、業界の統一ルールもない。強引な契約を結ぶ一部業者が問題化している。
毎日新聞 2004年4月2日
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借家相談事例(更新料・家賃の値上げ要求・建物明渡し)
組合員の借家相談事例(更新料・家賃の値上げ要求・建物明渡し等)の殆どは、「法定更新」で対応できる。
①期間満了の1年前~6ヶ月前までの法定通知期間に、当事者双方から何らの更新拒絶の申出がない場合には、前の契約と同一条件で借家契約は継続する。更新拒絶の申出が法定通知期間内になされていない場合は、満了の6ヶ月前に法定更新される事が決定され、家主は反証を挙げて更新を否定することは出来ない。
これが借地借家法26条1項(旧借家法2条1項)による法定更新である。家主または不動産業者は通常、契約満了の2~3ヶ月前に契約の更新の通知をして来る。だが、この時点で期間満了の1年前~6ヶ月前までの法定通知期間の条件を充たしていない。従って借家契約は法定更新される。
②仮に、家主が法定通知期間内に更新拒絶の通知をした場合でも、借家人が期間満了後も借用を継続しているのに家主が遅滞なく異議を述べないと①同様、法定更新される。
③家主が遅滞なく異議を述べても、更新拒絶に対する正当事由を裁判所が認定しなければ、契約は法定更新される。 更新料の支払い請求に対しては、契約が法定更新されてしまえば、更新料の支払いを拒否すればいい。
家賃の値上げ要求に対しては、既に契約が更新されているので家賃の値上げ要求は拒否して従来の家賃を支払えばいい。家主が家賃の受領を拒否したら供託すればいい。調停・裁判で適正家賃(*)が決まるまで供託を続けていればいい。家賃の増額請求の消滅時効は5年である。5年以上の差額家賃の請求はない。
建物明渡し請求に対しては、組合の顧問弁護士を頼んで明渡し裁判で徹底的に争えば結果が出るまで地方裁判所で4~5年は掛かる。高等裁判所まで争えば明渡し裁判をやた目的はほぼ達成したも同然である。
(*)借地借家法 第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
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修理特約があろうとも小修理以外は家主負担
台東借組の組合員である松岡さんは、水道局の検査で借家の水道管が漏水していることが判明した。
漏水箇所は床下。水道工事店に見積をしてもらった。自己負担で修繕するには費用が過重である。
契約書に「修繕は借主の費用負担で行う」と書かれている。加えて現在家主から家屋の明渡請求を通告され、家賃は供託している。こんな状況で、家主に修繕を要求しても無視されるのは自明である。
どうすればよいか借地借家人組合に相談した。組合の回答は「修理特約があっても、その範囲は小修理に限られる。当然修理義務は家主にあり、その修理費用は勿論家主が負担する」というものであった。
工事代金の回収方法も教えてもらい、業者の見積もり金額を書き期限を切って、家主に修繕依頼の配達証明付き内容証明を送付した。
その内容は、指定した日までに着工されない場合は自費で修繕し、その費用は供託家賃と相殺することを通告するものである。
指定日に家主から工事費を全額支払うと連絡があり、銀行の口座に工事代金が振り込まれていた。家主に領収書を郵送して、今回の水道工事は無事に決着した。
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台東借地借家人組合への電話相談
8月の或る日。台東借組へ相談の電話があった。
相談者がマンションの賃貸借契約の解除をするために家主に電話を入れた。すると、家主は大声で「中途解約は認められない、解約は駄目だ。もしも、それでも解約するというのなら、2年契約の残りの契約期間(約1年)分の家賃を全額払え。それなら解約を了承する」と言ったという。こんな理不尽なことが通用するのかという相談であった。
契約書に中途解約の条項が無ければ家主の主張は肯定される。だが契約書には「期間途中の解約は相当の予告期間をおいて申し出ること」と書かれていて、期間途中での解約が出来ることになっている。けれど、契約書には解約の申入れの予告期間が定められていない。いわゆる「期間の定めのある契約で解約を留保する特約」があるという事例だ。
この場合は、民法618条の規定で解約の申入れをすれば、3ヶ月の予告期間(民法617条準用)が過ぎると契約は終了する。これが法律の規定である。従って家主の主張に従う必要はない。当然、家主の要求する家賃を支払う必要は無い。
相談者の場合は、既に家主に解約の申入れを伝えている。だが後日トラブルにならないためにも、解約申入の通知書を配達証明付内容証明郵便で出して措くように説明した。
参考法令 民法
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
1.土地の賃貸借 1年
2.建物の賃貸借 3箇月
3.動産及び貸席の賃貸借 1日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
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契約の更新に際し、契約条件の改悪を
要求されたら法定更新を選択する
(問) 3年契約で店舗を借りています。5月末日で契約期間が満了になります。2月に不動産会社が「6月の契約から3年の定期借家契約で」と言ってきました。どうしたらいいでしょうか。
(答) 営業用店舗は2000年3月1日以降の契約更新の場合、合意があれば定期借家契約への切り替えは出来る。定期借家契約を拒否するには賃借人としては法定更新に持込み今まで通りの普通借家契約を続けるのが営業権を守る安全策であろう。
以下の①②は借地借家法の法定更新規定の要旨である。
①期間の定めのある借家契約で期間満了の1年前から6ヶ月前(法定通知期間)までに賃貸人が賃借人に対して、更新拒絶の通知または条件変更の通知をしていなかった場合は、従前の契約と同一の条件で自動的に借家契約が更新され、借家関係は継続される。尚、更新拒絶の通知をするには、正当事由が必要である(借地借家法28条)。
②またその通知をした場合でも、期間満了後、賃借人が継続して建物を利用していることに対して賃貸人が遅滞なく異議を述べないと①と同様に従前の契約と同一の条件で自動的に更新される(借地借家法法26条)。
①と②は当事者の意思の如何に拘らず、法律上当然に借家契約が更新されるので、これを「法定更新」という。
相談者の場合は、不動産会社が「法定通知期間」内に適法な更新拒絶の通知を何ら行なっていないので、借家契約は既に従前の契約と同一条件で「普通借家契約」として法定更新されることが確定される。
このように期間満了の6ヶ月前までに通知をしていないと、その時点で既に契約更新がなされることが法的に決定される。この更新を賃貸人が覆すことは出来ない。
相談者は不動産会社から繰り返し定期借家契約への切替を執拗に要求されるであろうが、「法定更新は法律上自動的に更新するもので賃借人の回答を必要としない」(東京高裁1955年1月21日判決)のであるから、期間満了の5月末日に法定更新が確定するまで、ただ沈黙していればいい。
法定更新後の借家契約は期間の定めのないものとして扱われるので原則的に更新問題は起こりえず、定期借家への切替や更新料で揉めることもなくなる。
参考条文
借地借家法
第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
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建物の朽廃で借地権は消滅するので
契約の更新を拒絶するといわれたが
(問) 過去に2回借地の更新をしている。18年前に合意更新した借地契約の更新が迫っている。地主は建物が老朽化して朽廃状態なので契約の更新はしないから明渡しの準備をするよう言って来た。
(答) 「借地借家法」 (1992年8月1日施行)には「朽廃」に関する規定は置かれなかった。そのため建物が朽廃しても借地権は消滅しない(同法3条)。朽廃は「滅失」の場合として処理され、借地権の消滅原因ではなくなった。
しかし、「借地借家法」施行以前に設定された借地権に関しては、、「借地上の建物の朽廃に関する経過措置」(借地借家法附則5条)によって「借地法」の「朽廃」規定が適用され、法定の存続期間の満了前に建物が自然に老朽化して建物としての効用を喪失した状態になった時点で借地権は消滅する(借地法2条1項但書)。
朽廃というのは、一般的にいう建物に生じた自然的腐蝕状態によって建物の社会的・経済的効用を失った場合をいう。火災・地震・台風・水害等外部からの力で倒壊した場合の「滅失」とは異なる概念である。改築するために建物を取壊す場合も滅失になる。建物が「滅失」しても勿論借地権は消滅しない。
更新後に「朽廃」の規定が問題になるのは、借地権の存続期間が当事者の合意よるものではなく法律の定めによって確定したものの場合である。
例えば、
(1)継続使用による法定更新の場合(借地法6条1項)、
(2)更新請求による更新の場合(同法4条1項)、
(3)合意更新で期間を定めなかった場合(同法5条1項)、
(4)期間を取決めたが法定期間(堅固建物は30年、その他の建物は20年)よりも短い期間を定めた場合、
以上(1)~(4)の法定存続期間中に建物が「朽廃」すると借地権は消滅する。
しかし、「存続期間の約定のある借地権は、本条(借地法2条)1項により存続期間を法定された借地権とは違って、その存続中に借地上の建物が朽廃しても消滅しないのであり、約定の残存期間があれば、その間は存続する」(最高裁1962年7月19日判決、最高裁判所民事判例集10巻8号1566頁)。
即ち、借地契約で鉄骨建物等の堅固建物の存続期間を30年以上、木造建物等の非堅固建物の場合は20年以上と定めた場合は、その期間満了前に建物が朽廃しても残存期間があれば、借地権は消滅しないということである。
借地法2条2項では、「契約で存続期間を定めた借地権は、2条1項の朽廃規定に拘らず、その期間の満了によって消滅する」と規定されている。
法定存続期間以上の借地の存続期間を契約で定めている場合、相談者の借地契約は存続期間を20年と定めているので、借地上建物の朽廃があっても契約期間内であれば、借地権の消滅はありえない。従って、建物が朽廃しても再築は可能であり、地主は朽廃を理由に更新を拒絶することは出来ない。
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法定更新された場合は契約書で
特約した更新料を支払う必要があるのか
(問) 前回の更新の際、更新料支払が一方的に書き込まれていた借地契約書にサイン・押印してしまった。更新が2年後にあるが、更新料は、支払わなければならないのか。
(答) 更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、
(a)賃料の不足を補充する趣旨(例えば賃料の前払)
(b)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価
(c)合意更新された期間は明渡を求められず、法定更新の場合の、解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、以上三点である。 (a)は、最近余り強調されず、中心は(b)と(c)に移っている。
更新料特約の効力を法定更新した場合の裁判例で検討すると、
①「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち更新料特約が有る場合は賃借人は更新料支払の義務がある。
②「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合は賃借人に更新料支払の義務はない。
江東借地借家人組合の組合員(借地人)の実際の裁判例で検討してみたい。
裁判では、法定更新した場合の契約更新料の支払義務の有無が争点となった。借地人は裁判で前記②説の立場から更新料支払理由の前提となっている(b)と(c)の事実を欠くので地主の更新料請求は根拠がないと主張した。
だが東京地裁は更新料支払合意が法定更新の場合を除外するものとは認められないとして(b)と(c)を否定し、①の立場から更新料支払を命じた(2000年3月13日判決)。
それに対して、東京高裁は借地人の主張を認め、②の立場から借地人に更新料支払の義務はないと判示した(2000年9月27日判決)。借地に関してはこの見解が裁判例では有力になっている。
地主側は東京高裁の判断を不服として最高裁へ上告したが、最高裁は上告を棄却した(2002年2月22日)。これにより東京高裁の更新料特約があっても法定更新した場合は更新料の支払い義務がないという判断肯定された。
既に、②の見解に立つ同趣旨の借家に関する最高裁の判例(1982年4月15日)がある。
相談者は法定更新を選択すれば裁判例から更新料の不払は可能である。但し実行する場合は組合の顧問弁護士とよく相談する必要がある。
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更新を重ねた借地契約を合意解約し
新法(平成4年8月1日施行)適用の契約へ切替えられるのか
(問) 借地借家法施行(平成4年8月1日)前に締結した借地契約が更新を迎える。地主に借地契約を期間満了により合意で一旦終了させ、改めて借地借家法(新法)に基づく契約にして欲しいと言われた。
(答) 期間満了により一旦、契約を合意解約し、改めてその時点から新法(平成4年8月1日施行の「借地借家法」)による存続期間30年の借地契約を新規に締結することにより、新法が適用される契約内容にすることは可能である。
借地人が新法施行前に締結した借地契約を捨てて新法に基づく契約に切替えることに合理的な理由があり、借地人の真意に基づいて行われたという客観的な事実があれば切替えは可能である。
普通借地権は新法では堅固・非堅固建物という区別をせずに一律に借地権の存続期間を原則30年としているものの、最初の更新は20年で2回目以降は10年である。借地人は将来的には期間を短縮され、更新拒絶の主張、更新料請求の機会が増える。増改築の制限も強化され借地人にとって何の利点もない。
このように新法は旧法に比較すると全体として貸主側に有利に、借主側に不利なものになっている。そのため貸主が既存の借地契約を新法の適用のある契約にしたいと考えるのは当然であろう。
新法成立時の参議院附帯決議に「既存の借地関係には更新等の規定は適用されない旨及び特約で新法を適用させることは無効である旨を、マスコミその他あらゆる方法を通じて周知徹底させること」とあるように、新法施行前に締結された既存の借地契約は新法施行後においても旧法が適用される(借地借家法附則4条但書及び6条)。
そもそも、地主が新法に基づく借地契約に切替えることを借地人に要求する目的は、最終的には借地人の不利益になる契約内容に改悪するところに真の狙いがある。
従って、地主がこのような不当な要求を押し付けようとしても借地人はこれに応じる必要はない。仮に借地人の無知に乗じ、或は地主の圧力に屈して借地人が意に反して嫌々従前の借地契約を形式上合意解約し、改めて新規に新法に基づく契約を締結した場合でも、合意解約に特段の合理的理由が存在せず、また借地人の真意に基づかないものであれば、旧法11条の強行規定により借地人に不利な特約として無効とされる。
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(問) 最近借地契約を更新したが、契約内容に不安がある。更新は今回限りで借地期間は20年から10年に縮められ、次回の更新は認めないという契約である。10年後に借地を明渡さなければならないのか。
(答) 質問者の契約は平成4年8月1日以前の契約であるから、借地借家法附則4条及び6条により、借地の存続期間及び更新については旧借地法の規定によることになる。
先ず契約期間の10年について検討する。
既に存在している借地契約を当事者の合意によって更新する場合に当事者が借地権の存続期間を約定することは自由である。
だが、その最短期間は堅固な建物については30年、その他の建物は20年に制限されている(借地法5条2項)。それ以下の期間を定めても、例えば5年とか10年とかの期間で契約を結んでも、借地法5条2項の最短期間制限に抵触し、借地人に不利益な契約条件であるとして法律上効力がないものとして取扱われる(借地法11条)。
その結果は「合意による契約の更新において借地権の法定存続期間よりも短い期間を定めても、その特約は無効であり、堅固な建物については30年、非堅固な建物については20年の存続期間が与えられる」(東京高裁1955年5月30日判決)ということになる。従来の判例は存続期間をこのように借地法5条2項の規定に拠った解釈をしていた。
しかし最高裁判所は、「建物所有を目的にする土地の賃貸借契約において、借地法2条2項所定より短い期間を定めた場合には、右存続期間の約定は同法11条により定めがなかったものとみなされ、右賃貸借の存続期間は、借地法2条1項の本文によって定まる。」(最高裁1969年11月26日大法廷判決)という統一解釈を示した。
借地法2条1項は、借地権の存続期間は堅固建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物所有を目的とするものについては30年とすると法定存続期間を定めている。
従って、仮に当事者の合意で借地法2条2項の期間よりも短い存続期間を定めても、その約定は同法2条2項の規定に反する契約条件にして借地人に不利なもに該当し、同法11条の強行規定により、その定めは無効となり、当事者に合意がなかったものとして扱われ、非堅固建物を目的とした借地権であるので30年の存続期間が法定される。
次に「次回は一切更新しない」という特約について検討する。
借地法4条1項は、「借地権者が契約の更新を請求したときは、その借地上に建物がある場合に限って、従前の契約と同じ条件の借地権が設定されたものとみなす」と規定している。
同じく借地法6条1項は、「借地権者が、借地権の消滅後土地使用を継続する場合においては、土地の所有者が遅滞なく異議をを述べないときは、前の契約と同一の条件をもって、更に借地権を設定したものとみなす」という継続使用による法定更新の規定を定めている。これらの規定に反して、借地人の更新請求権や法定更新制度を予め排除する特約は、借地人に不利な契約条項として借地法11条により無効とされ、その効力は認められない。
結論は、特約自体が借地法の規定に違反し、合意がなかったものと取扱われるから10年後に借地を明渡す必要はない。借地期間は借地法5条によって30年の存続期間が認められる。また、30年後の更新も可能である。
参考法令
借地法
第2条 借地権の存続期間は石造、土造、煉瓦造又はこれに類する堅固な建物の所有を目的とするものについては60年、その他の建物の所有を目的とするものについては30年とする。但し建物がこの期間の満了前に朽廃したときは、借地権はこれによって消滅する。
2 契約で堅固な建物について30年以上、その他の建物について20年以上の存続期間を定めたときは、借地権は、前項の規定に拘らず、その期間の満了によって消滅する。
第11条 第2条、第4条~第8条の2、第9条の2(第9条の4でこれを準用する場合を含む)及び10条の規定に反する契約条件で、借地権者に不利なものはこれを定めなかったものとして扱う。
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