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東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 更新前の公正証書により更新後発生の債権が強制執行できなかった事例

2007年03月23日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 更新前の賃貸借契約に関して作成された公正証書に基づいて更新後の賃貸借契約により発生した債権を請求債権とする強制執行ができないとされた事例 (東京地裁平成8年1月31日判決。判例時報1584号124頁)

 (事案の概要)
 X(借主)とY(貸主)は、1988年、建物賃貸借契約を締結し、90年の更新に際し賃貸借契約に基づく金銭債務に関する執行認諾約款を含む公正証書を作成した。92年の更新では、賃料や保証金等については合意が成立したが、契約締結方式について合意ができぬままXはYに新賃料を支払い続けた。

 Yは、92年の更新が合意更新で94年に法定更新され、Xに更新料及び保証金償却分の支払義務があるとして、90年に作成された公正証書に基づき強制執行した。Xは右強制執行が許されないとして提訴した。

 (判決の概要)
 本判決は、「公正証書の債務名義として効力の及ぶ範囲は、当該公正証書の記載に従い客観的に決すべきである。本件公正証書についていかなる請求権が特定掲記されているかを見ると、期間満了前の賃貸借関係から発生する賃料債権等は表示されているが、更新された後の債権については、わずかに「次回」の契約更新のときにおける新賃料及び保証金について触れられているにすぎず、「次回」の字義もあいまいであり、しかも、その内容は、最低でも旧家賃の10%に増額するとか、双方協議の上増額するというに留まり、特定に欠けるものであって、結局、更新された後の債権については何ら特定掲記がされていないということができる。そして、他に本件公正証書の記載から、更新前の賃貸借条項がそのまま更新後の賃貸借に適用され、かつ、これについて執行認諾約款を付すなど、将来の更新によって発生すべき賃料請求等を特定表示しているものと認められるに足りる事情も窺えないから、本件証書は、……中略……これらについては債務名義とならない」と判示して、強制執行を認めなかった。

 (寸評)
 執行認諾約款を含む(通常公正証書にはついている)公正証書は、金銭債権について判決と同様の効力をもつもので、賃貸借契約についていえば、家賃の不払などがあった場合、公正証書を使えば裁判をせずに不払家賃取立の強制執行ができることになる。

 公正証書の効力が及ぶ範囲については、公正証書の記載自体だけから判断されるべきだとされており、本判決もこの考え方を前提に更新後の賃料や保証金の追加について特定に欠けており強制執行はできないとしたもので、賃貸契約書が公正証書で作成されているケースについて参考になる判決である。

 なお、本件では、92年の更新が合意更新か法定更新かについても争点となっており、どのような事実があれば法定更新となるか判断されており、この点にていても参考になる判決である。

( 1997.03.)   

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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増改築・更新料特約を新たに借地契約書に挿入する事を要求 (東京・豊島区)

2006年12月01日 | 契約・更新・特約

 豊島区上池袋に住む田中さんは、50年位前に借地権付建売住宅を購入した。

 10数年前に契約更新と地代の値上げ問題で争いとなり、供託となった。昨年、父親が死亡し、母親と2人で相続した。共同で相続した事を通知したところ、地主の代理人である弁護士から「こちらも契約者である地主が死亡し、相続人の息子さんが、話合いによる解決を望んでいる」というので話合いに応じることにした。

 その後、弁護士からは「①供託した地代と地主側が請求した地代との差額を支払うこと。②10数年前の更新料を支払うこと」の提案が送付されてきた。

 到底受け入れられない更新料の請求なども含まれ手いるなどの問題点もあったが、建替え承諾などの合意などで話合いを継続していく事にした。地代の差額の計算、更新料の基礎となる時価なども調べるなどして相手に通知し、相手の連絡を待っていた。

 ところが相手弁護士から、何の合意もしていないなかで土地賃貸契約書の案が送付されてきた。中味は、今までの契約書にない「増改築に際して地主の承諾が必要とする条項や契約更新に際して法定、合意の更新を問わず、賃借人は適正な更新料を支払う。更新料に争いがあるときは鑑定士に鑑定してもらう条項」などが記載されていた。

 組合からの指摘されたとおりの展開になった中で、田中さんは「組合と相談して現行どおりの契約書案を作成し、相手の言いなりにならいで頑張る」と決意を固めた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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借地契約期間10年は無効 (東京・江東区)

2006年11月25日 | 契約・更新・特約

 江東区牡丹3丁目で値札製造の仕事をしているHさんは、新規の借地契約を昭和52(1977)年12月に権利金50万円を払って約11坪を期間10年、賃料は昭和62(1987)年まで年間5万円という内容の契約を交わした。

 昭和62(1987)年、この時の借地契約の10年間の期限が来たことと、地主自身が新築の建物を建てたいという理由で借地の明渡しを請求された。

 しかし、建物を建てて未だ10年であり、地主の要求はどう考えても非常識な要求である。投下資金の回収も出来ていない状態で建物を明渡すことは出来ないので地主の不当な要求を無視し続けた。

 だが地主も執拗に悪質この上ない明渡要求を言い続け、数年が経過しても不当な要求を執念でし続けた。Hさんは、ほとほと困り果てて平成5年に組合に入会した。

 組合は契約期間を10年とした場合は、最高裁の判例から「借地法2条の法定存続期間の20年に満たないため、借地法11条の規定に反し無効され、期間の定めがなかったものとして取扱われ借地権の存続期間は30年となる」ことから、平成19(2007)年まで借地期間は存続することをHさんに説明した。

 従って、借地契約の更新まで未だ14年も先のことなので、心配する事はないと激励した。加えて地主が建物を新築するために、わざわざ借地人を退けてまでする必然性があるとは到底思えないし、新築理由が借地明渡しの正当事由には当然の事としてなり得ない事を説明した。

 組合では早速話合いのために地主宅へ向かった。地主は「そちらが他人を立てるなら」と、地主は弁護士を代理人に立ててきた。その年の9月にHさんは組合役員と共に弁護士事務所で話し合った。
 代理人は「昭和62年の契約書の期間を20年とし、平成4年以降の賃料は免除する」。「但し地主が新築する場合と本件契約期間は更新しない」旨の確認書を渡されて是非協力してほしいと言われたが、Hさんは「新規契約は結びません」と契約を拒否し、そのまま今日に至った。

 地主の考える20年の契約期間、平成19(2007)年が近づいて来た為か、はたまた、前回の昭和62(1987)年の更新料の空振りの反省からか、地主は、「来年の事ではあるが、契約期間の満了が近づいて来たのでそろそろ借地の明渡しか、更新料を払って契約を更新するかのどちらかに決めておくように」と言ってきた。

 Hさんは今回も組合とよく相談し、組合と連携をとりながら更新料支払拒否を貫き、借地契約の更新を成功させる覚悟でいる。 

 

東京借地借家人新聞より

 


 

  借地期間が法定の20年より短い期間を契約で定めた場合、法律的にはどうなるのかという事に関しては、 こちらを参照して下さい。

 

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借家人の抵抗で家主は不当条項を全面撤回 (東京・荒川区)

2006年11月23日 | 契約・更新・特約

 荒川区西尾久2丁目で昭和48年から店舗を借りて中華料理を営んでいるSさんは、昨年9月末で3年間の借家契約の期間が満了した。その際、家主から「再契約するには特約で3年間の期間限定とし、その時点で家主側に更新する気があれば継続できるが、そうでない場合は一切の立退料を請求せずに明渡すこと」また「更新する契約書には更新料支払特約を入れる」という条件なら更新してやると言われた。

 Sさんは、とても納得できず借地借家人組合と相談しながら何度も家主と話合い、最終的に裁判も辞さない覚悟で「借家人に不利な契約書には一切サインはしない」と通告した。

 家主は最近になってやっと諦めがついたのか、当初の条件だった3年後の更新拒否や更新料支払特約等を総て撤回し、Sさんと組合とが借家人に不利益な契約条項を削除・修正した契約書に基づいて契約をすることを認めた。

 

東京借地借家人新聞より

 

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80歳を超える借地人には無理難題な契約条件を強要 (東京・台東区)

2006年11月16日 | 契約・更新・特約

 台東区根岸に住むGさんは、80歳を超える年齢で、既にご主人に先立たれ、子供もいない全くの単身生活である。50坪の借地の殆どを駐車場及び倉庫として賃貸し、その賃料が生活費になっている。

 3月末借地契約が満了し、その更新に際して地主から新しい契約条件を提示された。その内容は①地代は月当り15万円を4万円値上げの19万円に改定する②更新料は500万円とする③特約として相続を認めない契約者本人一代限りの契約とする、というものであった。現在の暮らしからはとても金額的に呑めるような条件ではなく、一人途方にくれていた。

 近所に住み日頃身の回りの世話をしている姪御さんがこの話を聞きつけ借地借家人組合に相談し加入した。その後、地主代理人の弁護士から話合いをしたいとの申し入れがあり、Gさんはご高齢なので姪御さんが組合指導の下に代理交渉に臨み、提示された3点には応じられない旨を伝え、従前の契約内容で更新したい意思も伝えた。

 しかし、地主側弁護士は3条件を呑んで貰えないのであれば、更新に応じられないという態度を崩さない。結局、話合いは物別れに終った。

 その後、取敢えず、4月以降の地代を地主に送金し、加えて借地法4条に基づく「借地更新請求」を配達証明付き内容証明郵便を送り付けた。

 今後の対応は組合の顧問弁護士と相談しながら進めていくことを確認した。

 

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更新後の借地期間を契約書に10年間と記載される (東京・練馬区)

2006年11月14日 | 契約・更新・特約

借地の契約期限を10年と地主記載

 練馬区旭丘で借地して40年を経過した酒井さんは、この10月で期間が満了し、更新の時期を迎えた。 地主から今回、更新後の契約書が送られてきた。契約書案には、その第2条で、契約期間を10年とするというものであった。

 組合の新聞その他で、借地借家法が改定される以前に契約したものは旧借地法が適用されると聞いていた酒井さんは、心配になった組合事務所に相談に来た。

 組合では、酒井さんが賃借している借地は旧借地法が適用されること並びにその期間については20年以上とすること。それ以下の期限を定めた場合はその条項は無効となり、期限の定めのない契約となって、堅固でない木造の場合は20年となることを説明した。(

 相手の地主は、平成4年に施行された借地借家法で2回目以降の更新は10年とするという条項を勘違いして契約書に記載してきたものと考えられるとし、相手の地主に通知することにした。

 酒井さんは「これで安心しました。ゆっくり眠れます」と話した。

 

東京借地借家人新聞より

 


 

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【判例紹介】 中途解約した場合の違約金条項が公序良俗に違反し一部無効とされた事例

2006年10月06日 | 契約・更新・特約

  判例紹介

 期間の定めのある賃貸借契約において、中途解約した場合の違約金条項が賃借人に著しく不利益であるとして、公序良俗違反を理由に一部無効とされた事例 東京地裁平成8年8月22日判決、判例タイムズ933号)

 (事案)
 期間4年の賃貸借契約をした借家人が10か月後に契約を解約した。期間満了前に解約する場合は、解約予告日の翌日より期間満了までの賃料相当額を違約金として支払う」旨の特約条項があった。家主は、右特約に基づき、3年2か月分の賃料相当額である6321万円余の違約金を請求した。

 (判決要旨)
 「建物賃貸借契約において1年以上20年(注)以内の期間と定め、期間途中での賃借人からの解約を禁止、期間途中又は解除があった場合には、違約金を支払う旨の約定自体は有効である。しかし、違約金の金額が高額になると、賃借人からの解約が事実上不可能になり経済的に弱い立場にあることが多い賃借人に著しい不利益を与えるとともに、賃借人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い結果になるから、諸般の事情を考慮した上で、公序良俗に反して無効と評価される部分もある。
 本件で請求されている違約金は、被告会社が本件建物の6階部分を解約したことにより、実際に6階部分を明渡した日から契約期間満了日まで3年2カ月分の賃料及び共益費相当額である。被告会社が本件建物の6階部分を解約したのは、賃料の支払を継続することが困難であったからである。原告は、契約期間内に解約された場合には、次の賃借人を確保するには相当期間を要すると主張しているが、被告会社が明渡した本件建物について、次の賃借人を確保するまでの要した期間は、実際には数カ月程度であり1年以上の期間を要したことはない。以上の事実によると、約3年2カ月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人である被告会社に著しく不利であリ、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできず、1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効である。

 (説明)
 賃貸契約書では、賃借期間中の賃料は月額132万円から311万円の増額が予め定められていた。賃料が払えないから解約しているのに借家人から契約期間全部の賃料を違約金名目で取り上げることは借家人に著しく不利であり、家主はその間第三者に賃貸して賃料を得ることができる。賃料の二重取りを許す本件特約は不公正で無効と判断した。
 テナントビルの入居率が下がっている状況の中で一度入居した借家人からとことん儲けようとする特約に歯止めをかけた判決である。

(1997.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 (注)2000年法律153号により、定期借家制度の導入に併せて、借地借家法第29条に第2項が加えられた。即ち、「民法第604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない」。これにより賃貸借の最長期間を20年に制限する民法604条は、建物の賃貸借には適用されないことになったので、期間が20年を超す借家契約も認められることになった。2001(平成12)年3月1日から実施されている。

 

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【Q&A】 店舗契約における営業委託契約には要注意

2006年10月03日 | 契約・更新・特約

    店舗契約では借地借家法を回避する
     脱法的な営業委託契約があるので要注意

 (問) 6年前から建物所有者から厨房設備一式を居抜きで引継ぎ、テイクアウトの焼餃子屋を営業しているが、最近、期間が満了したから明渡してくれと言われている。契約は建物賃貸借ではなく、営業委託となっている。しかし、貸主は営業には全く関与していない。契約時から委託料は定額となっており、事実上は家賃である。従って、実質は建物賃貸借と思われるので、私の場合、借地借家法の適用を受けるのではないか。


 (答) 貸店舗では、契約内容によって借地借家法の保護を受けるかどうかで大きな差異がある。
①純然たる店舗賃貸借契約。使用者が場所使用の対価として賃料を支払う。これに対しては借地借家法が適用される。

経営或は営業委託契約。店舗使用者(借主)は、売上の一定割合を報酬として営業委託者(貸主)に支払う。この場合は、借地借家法の保護はなく、貸主はいつでも営業委託契約を解除し、借主に対し店舗からの立退きを請求出来る。使用契約が容易なため、借地借家法を回避するための方法として利用されている。

 今回の相談者と同様の問題で争われた裁判例で検討してみる。賃借人は契約書では経営委託契約になっているが、実質は建物賃貸借であると主張し、賃借権の確認を求めて提訴した。一審では賃借人が敗訴し、二審で逆転勝訴した。

 裁判所は「本件契約書では店舗経営委託契約とされているものの、そこでの店舗の経営は経営者の名義で、その計算と裁量により行われ、建物オーナーがその経営に関与することはなく、分配金、共益費の名義の金員は店舗経営による収益にかかわりなく定額であることからすると、本契約は、店舗経営委託契約の性格を持たず、かえって経営者に本件物件を内装、器具を飲食店のために自由に使用収益して、その収益の取得することを許し、その対価として一定額の金員を受領することとする建物賃貸借の性格を有することは明らかである」(大阪高裁1997年1月17日判決

 委託か賃貸借かの分かれ目は、経営権の実質が受託者(借主)にあって委託者(貸主)は一定額の金銭を受領するに過ぎないものであるか否かということにある。相談者の場合は、判例に照らしても明らかのように、借地借家法の適用がある建物賃貸借と認められる。

  借地借家法の適用があるということになると、期間が満了したからといって当然には契約関係は終了しない。貸主に正当事由がなければ解約の申入れは出来ず、契約は自動的に法定更新される(借地借家法法26・28条)。従って相談者は営業を引続き行えることになる。

 

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【判例紹介】 ビルの賃貸借で借主から貸主に対する電気料金の水増分の返還が認められた

2006年09月17日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 ビルの賃貸借契約において、賃借人から賃貸人に対する電気料金の不当利得返還請求が認められた事例 (東京地裁平成14年8月26日判決、判例タイムス1119号)

 (事案の概要)
 賃借人は、宝石・貴金属の加工販売をするため、ビルの7階部分を賃借していたが、契約が終了した後、契約期間中、電気料金を払いすぎていた、として返還請求訴訟を提起した。

 貸主は、1階から8階までの各テナント部分及びエレベーター等の共用部分の電気使用料を各テナントに割り振って徴収していた。本件賃借人は、自分の賃借部分以外の共用部分の電気料金合計111万円は支払義務がなかった、と主張。

 本件では、賃借人が支払わなければならない電気料金は、本件事務所内で使用した電気料金だけか、それとも、ビル全体の共用部分についての受電配電設備の保守点検費、受電配電設備の維持管理修繕費用、検針費用等の費用をも分担して支払わなければならないのか、という点が問題になった。

  (判決の要旨)
 本件賃貸借契約においては、月額賃料は32万9000円のままとするが、管理費、共益の負担を求めない条件で契約が成立したこと、賃借人が遵守しなければならない管理規定によれば、本件事務所内で使用する電気料金は賃借人が負担し、その電気料金の支払い方法については、東京電力によるその月分の検針日を基準として、設置メーターの検針量により実費計算して請求することとされていたこと、本件管理規定によれば、共用部分で使用する照明、その他動力に使用する電気料金は、管理費に含めるものとすることとされていたことが認められる。以上の認定事実によると、本件事務所の賃借人は、本件事務所内で使用した電気料の負担をすればよく、本件ビルの管理に要したあるいは要する費用、共益費については支払い義務がないという条件で本件賃貸借契約を締結したと認めるのが相当である。そうだとすると、共用部分についての負担金等は通常管理費に含まれるものとして、これらを電気料金に含めて請求する賃貸人の主張は理由がないというべきである。

 (解説)
 テナントビルの賃借について、家主がビル全体の電気料、水道料等の光熱費、管理費などを賃借人から徴収し、賃料値上や解約時の保証金清算時に、賃借人が、その計算方法や徴収方法について、不明朗さを問題にすることがある。賃借部分以外の共用の光熱費について、支払い義務があるかどうかは、賃貸者契約においてどのように定められているかが判定の第一基準である。本件では共用費用の負担の約束がないという点で賃借人勝訴となったが、契約書には支払義務規定があるが、その解釈が問題になるケースもある。

(2004.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 第三者に経営全般の管理をさせ一定の金銭の支払を受けていると営業委任であるとされた事例

2006年08月18日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 店舗賃借人が第三者に経営全般の管理をさせ一定の金銭の支払を受けていた関係が、営業の委任であって転貸でないとされた事例 神戸地裁平成4年6月19日判決、判例時報1451号136頁)

 (事案)
 乙は甲から店舗を借り、牛丼の吉野家との間でフランチャイズ契約を締結し牛丼屋を経営してきた。昭和55年吉野家が会社更生法に基づく更生会社となり乙はフランチャイズ契約の対象から外された。

 そこで乙はレストラン等を経営する丙に、吉野家と同様の形態で牛丼屋を経営していきたいと助力を求め、丙との間で新たに牛丼専門店の経営委託に関する契約を締結した。店舗の屋号は「牛丼屋」とした。

 「牛丼屋」の経営実態は、丙が材料の仕入れ、派遣従業員の手配、店舗営業全般の管理を行い、且つ費用の計算、支払及び売上代金の管理等を丙の預金口座を使用して行い、これらの管理、計算に基づき、売上代金から所定の経費、経営管理の対価を差し引いた金額(1月と12月は70万円、その他の月は50万円)を乙に対し支払っている。

 また、店舗の営業許可は乙において取得しており、メニューは乙の意向により吉野家時代と同じく牛丼のみとし、丙が他所で経営している食堂とは異なっている。

 (判決要旨)
 「本件建物における牛丼屋の営業について、乙は最終的な決定権を有しており、その経営主体であるということができ、乙と丙との関係はあくまでも牛丼屋の営業に関してその業務の一部を委任するものであって、丙にその経営を全面的に委ねたものではないし、営業を賃貸したものでないと認められる。従って乙と丙との間には本件建物についての賃貸借契約は存在せず、丙の同建物の利用は、乙が有する賃借権についての履行補助者ないしは占有補助者としてのものであると評することができ、独立の占有権限又は独立の占有を有しているものではないと解されるから、甲主張の転貸の事実を認めることはできない」

 (寸評 )
 営業の委任か転貸かは、まぎらわしことが多い。形式は営業の委任と銘うっていても実際は転貸に当たる場合もある。要は経営実態によって判断するほかはなくその場合の着眼点は、営業に対する賃借人の支配の程度、第三者の店舗使用の独立性、営業名義、委託料の決め方などであるが、結局はそれらを総合して判断することになる。

 この判決の事案は、大変微妙だと思われる。判決の認定する経営実態も、営業許可名義とメニューの点を除けば、第三者丙に殆ど任せっぱなしとみることもできるし、それに丙から賃借人乙に対する支払も毎月定額であることと、水道使用契約は丙となっていることなどを考え合わせると丙の独立性もかなりあるように思われる。私の言いたいのは、分店を第三者に「任せる」ときは、その内容を十分慎重にしないと転貸と認定されて元も子もなくなってしまうといことだ。

(1993.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

 ここで採り上げた判例は、後日、控訴審の大阪高裁(平成5年4月21日判決)で営業委任契約が否認され、転貸と認定された。控訴審判決は、こちらのの「判例紹介」扱ったものである。

 

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【判例紹介】 ビルの一室の使用が店舗経営委託契約ではなく、賃貸借契約と認められた事例

2006年08月17日 | 契約・更新・特約

  判例紹介

 ビルの一室の使用関係が、店舗経営委託契約ではなく、賃貸借契約と認められた事例 大阪高裁平成9年1月17日判決、判例タイムズ941号)

 (事案)
 賃借人はビルの一室を賃借してスナックを経営していたが、契約書は店舗経営委託契約書であった。そして、契約書には、次のことが定められていた。
 ①経営の委託であること、②経営者が保証料250万円を預けること、③内装工事は建物オーナーが施工して、冷蔵庫、ガスレンジ、棚セット、シンク台、ガス台、イス、湯沸し器、おしぼり器などの設備を引き渡すこと、④経営者は建物オーナーに分配金として月13万2000円,共益費1万円を支払うこと、⑥本契約を更新する場合は、分配金は5%増額すること。

 しかし、スナックの飲食店営業許可は賃借人の名義で取得し、電話、ガスの契約名義も賃借人であった。スナックの営業時間、営業日の決定変更、従業員の採用、売上の収受、経費の支払もすべて賃借人が自分の裁量で行っていた。収支決算の報告については建物オーナーからの要求は一度もなく収支決算報告をしたこともなかった。スナックの所得税申告も賃借人が行い、税金も賃借人が支払っていた。

 賃借人は、この契約は経営委託ではなく、建物賃貸借であると主張して、賃借権の確認を求めて提訴した。一審では、賃借人が敗訴。高裁で逆転して賃借権が認められた。

 (判決趣旨)
 「本件契約書では店舗経営委託契約とされているものの、そこでの店舗の経営は経営者の名義で、その計算と裁量により行われ、建物オーナーがその経営に関与することはなく、分配金、共益費の名義の金員は店舗経営による収益費にかかわりなく定額であることからすると、本契約は、店舗経営委託契約の性格を持たず、かえって経営者に本件物件と内装、器具を飲食店のために自由に使用収益して、その収益の取得することを許し、その対価として一定額の金員を受領することとする建物賃貸借の性格を有することは明らかである

 (説明)
 飲食店の賃貸借については、店舗を貸す専門の業者がいて、自分で内装、設備を整え、設備込みの賃料で賃貸する。
 契約書は、賃貸契約にしないで、店舗経営委託名義にするというケースがある。そして、契約更新のときなどに、更新の条件で折り合いがとれないと、本件のような係争になる。

 一審の判決は、契約書の文面を形式的に読んで、賃貸借でないとしたが、高裁では、営業の実態を見て実質的に賃貸借契約であることを認めた。

 ポイントは建物オーナーへの支払が毎月決まった額であること、店舗の経営のあれこれをすべて賃借人の裁量で行っている点である。      

(1998.07.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 第三者に営業全般の管理を委ね、月々一定の金銭の支払を受けている場合は転貸とされた事例

2006年08月16日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 賃借建物で店舗営業をするにあたり第三者に営業全般の管理をゆだね月々一定の金銭の支払を受けている場合に建物の転貸にあたるとされた事例 大阪高裁平成5年4月21日判決。判例時報1471号93頁)

 (事案)
 Y
(借家人)はX(家主)から賃借する建物(以下本件建物という)で飲食店(牛丼屋)を営業するにあたり、Zとの間で経営委託契約を締結してZに営業全般の管理をまかせ、営業の賃借の対価として月々50万円(1月と12月は70万円)をZから受け取っている。

 Xは、YXの承諾なく本件建物をZに転貸しZが本件建物で飲食店を経営しているとして、無断転貸を理由に賃貸借契約を解除しY及びZに対して本件建物の明渡等を求めた。

 Yらは飲食店はYがオーナーとして経営するもので転貸の事実はないとして争った。

 第1審判決(神戸地裁平成4年6月19日判決。1993年7月15日付本紙の「判例紹介」欄で紹介)は、店舗の営業許可はYが取得していることメニューはYの意向で牛丼のみとされ、本件建物での店舗経営の最終判断権はYに帰属しており、営業の一部の委任に過ぎず転貸に該当しないとしてXの請求を棄却し、Xはこれを不服として控訴。

 (判決)
 判決は、「(ZYに対し、毎月定額の50万円(1月と12月は70万円)を支払うものとされ、現実にこれまで支払われてきたこと、(Yは本件建物での牛丼屋の経営に関与していないこと、Zが営業全般の管理を行っているが、その営業事績の報告はされていないこと、(中略)右定額の金員はZの計算と危険負担のもとに、右営業による損益や利益金の多少にかかわらずYに支払われるものであることが推認されること、()本件店舗における牛丼屋の営業、すなわち、材料の仕入れ、派遣従業員の給料、光熱費その他必要経費の支払や売上代金の管理等は、すべてZの計算においてなされ、Zの預金口座を利用して行われていること」の点を重視し、YZ間の契約は「Zの計算で営業を行う狭義の経営の委任契約であり、実質は営業の賃貸借であると認めるのが相当である」としたうえで、「右契約の効果として、YとZに対し営業の基盤である本件建物の利用を可能ならしめる義務を負い、そのためには本件建物の占有を移転することを要し、Zは本件建物を利用して賃借営業を自己の計算で営むことができるが、そのうちの本件建物の利用関係の移転はXとの関係では建物の転貸借に当たる」として、Xの主張を認めた。

 (寸評)
 本件のような経営委任契約が建物の転貸にあたるかどうかについては、営業に対する賃借人の支配の程度・営業の名義・賃借人に支払われる金員の決め方などによって総合的に判断するとされているが、その判断は微妙である。本件のように賃借人に対する月々の支払が定額で第三者に営業全般の管理を委ねているような場合には転貸と認められる可能性が大きい考えたほうが良い。

(1994.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 更新料の支払を要求され、断るつもりだが借地契約はどうなるか

2006年08月03日 | 契約・更新・特約

 (問)今年の7月12日で20年間の借地契約期間が満了します。地主は近所の不動産屋を通じて更新料を坪10万円、34坪で総額340万円請求してきた。
 20年前は坪1万円だったし、私はまだ若く収入もそれなりにあったので支払いをしたが、現在、収入は年金だけで、とても地主の請求に応じられない。
 借地借家人組合では、更新料は支払義務がないと言っていますが、更新料を支払わないと新しい契約書がもらえないと思います。その場合、借地契約はどうなるのでしょうか。 


  (答)「借地借家法」は1992(平成4)年8月1日から施行されているが、平成4年8月1日以前に借地契約が締結された借地契約については、「借地借家法」附則4条~9条等によって、借地借家法3条~9条、13条2~3項、15条1項、18条は適応されない。借地契約を今後何度更新しても、同様に取り扱われ、旧「借地法」1条~11条が引き続き適用される。

借地契約の更新には、
 ①地主と借地人が更新契約条件に合意して、新しい契約書に署名捺印する「合意更新」(借地法5条と、これに対して地主と借地人との間で契約条件の合意が得られない場合でも、②借地人が土地の使用を継続する場合、契約期間が満了すると法律の定めで、新しい契約書を作らなくても従前の借地の契約条件で自動的に更新してしまう「法定更新」借地法6条)と、期間満了に際して ③地主に契約更新を拒否する正当な理由がない場合、借地人の一方的な更新請求だけで借地更新が認められる「請求による更新」借地法4条1項)との3通りの更新がある。

 「法定更新」借地法6条)と「請求による更新」借地法4条1項)の場合の契約条件は、借地上の建物が鉄骨建などの堅固建物ならば契約期間は30年、木造など非堅固建物ならば契約期間は20年に法定されている。その他の契約条件は従前の契約と同一で自動更新される(借地法4条1項、6条1項)。

  更新料は地主に契約更新合意の対価として支払うものであり、更新は地主との契約の合意がなくても法律の規定で自動的に出来るものであり、更新料を支払う根拠はない。また地主は更新料を請求する根拠として「更新料の授受は世間の慣習だ」と主張したが、最高裁判所で慣習説は否定され、借地更新料は支払義務なしとされた最高裁判所昭和51年10月1日および昭和53年1月24日判決)。

 借地更新料支払いの法律的根拠はない。更新料を支払わなくても借地人が後に不利益を蒙ることはなく、すでに更新料を支払わなかった借地人は大勢おり、今も従前どおり借地を続けている。

 具体的にすることは借地法4条1項に基づいて①契約期間満了後も従前どおり引き続き借りたいとの更新請求をする。②更新料の請求を断わる、の2点で組合を通じて行えば一層効果的。


 以下は、借地人からの契約更新請求通知書の文面例

 

            借地契約更新請求書

 私と貴殿との間で締結した東京都*区*丁目*番地の宅地*㎡についての借地契約の借地期間は、平成*年*月*日に満了致します。宅地上にはなお建物が存在しますので、前契約と同一の条件で借地契約を更新して戴きたくご請求致します。

 平成*年*月*日

                                  東京都*区*丁目*番地

                                      鈴木 一朗 (印) 

 東京都**区**丁目**番地

   田中 次郎 様 

(注) 後日、トラブルにならないためにも、文書は内容証明郵便・配達証明付きで出すのが最善の方法。

 

借地法
第2条
 借地権ノ存続期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ之ニ類スル堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ60年、其ノ他ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ30年トス
但シ建物カ此ノ期間満了前朽廃シタルトキハ借地権ハ之ニ因リテ消滅ス
 契約ヲ以テ堅固ノ建物ニ付30年以上、其ノ他ノ建物ニ付20年以上ノ存続期間ヲ定メタルトキハ借地権ハ前項ノ規定ニ拘ラス其ノ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス

第4条 借地権消滅ノ場合ニ於テ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス
但シ土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ於テ遅滞ナク異議ヲ述ヘタルトキハ此ノ限ニ在ラス
 
第5条 当事者カ契約ヲ更新スル場合ニ於テハ借地権ノ存続期間ハ更新ノ時ヨリ起算シ堅固ノ建物ニ付テハ30年、其ノ他ノ建物ニ付テハ20年トス
此ノ場合ニ於テハ第2条第1項但書ノ規定ヲ準用ス
 当事者カ前項ニ規定スル期間ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ其ノ定ニ従フ
 
第6条 借地権者借地権ノ消滅後土地ノ使用ヲ継続スル場合ニ於テ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス
此ノ場合ニ於テハ前条第1項ノ規定ヲ準用ス
 前項ノ場合ニ於テ建物アルトキハ土地所有ハ第4条第1項但書ニ規定スル事由アルニ非サレハ異議ヲ述フルコトヲ得ス
 

 

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【Q&A】 法定借地期間より短い契約期間を特約した場合は

2006年08月02日 | 契約・更新・特約

 3階建ビルを建てる計画で借地契約を
 結んだが20年の契約期間であった

 (問)  昭和61(1986)年9月に30坪の土地を期間20年で借地契約を結び、鉄骨3階建の建物を建てて住んでいる。地主は、今年の8月に借地の更新をするのであれば更新料300万円(坪10万円)を支払えと言って来た。
 最近友人から、耳よりなことを聴いた。それは堅固建物の場合は、契約期間が30年以上と決まっているから、借地の更新は10年後の2016年だというのである。これは本当なのでしょうか。


 (答) 最高裁判所大法廷は、「建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地法2条2項所定より短い期間を定めた場合には、右存続期間の約定は同法11条により定めなかったものとみなされ、右賃貸借の存続期間は、借地法2条1項の本文によって定まる」(1969年11月26日判決)との統一解釈を示した。

 借地法2条1項は、借地権の存続期間について当事者間に約定がない場合は鉄骨や鉄筋コンクリート造り等の堅固建物の所有を目的とするものは60年、その他の非堅固建物は30年と法定存続期間を定めている。同法2項では当事者間に約定がある場合は最短期間を堅固建物は30年、非堅固建物は20年に制限している。この存続期間の定めに反する特約で借地人に不利なものは無効とされる(同法11条)。

 相談者の借地契約は平成4年8月1日以前の契約なので、旧借地法が適用される。相談者の場合は、堅固建物で借地期間が20年の契約なので、借地権の最短約定存続期間の30年に満たない。

  結論、最高裁の判例に基づけば、期間20年の約定は同法2条2項に抵触し、同法11条により借地人に不利な契約条件として無効になり、約定は定めなかったものとみなされる。存続期間については当事者間に何らの合意も存続しなかった場合として扱われ、同法2条1項本文から堅固建物所有目的の借地権は60年の存続期間となる。従って借地期間は後40年間存続することになる。即ち2046年まで継続する

 木造など非堅固建物の最低約定存続期間よりも短い期間(20年以下)を合意で定めた場合、例えば存続期間10年と契約しても、当事者の意思に関係なく30年ということになる。借地法の考え方には借地人に出来る限り長期の存続期間を確保しようという意図が根底にある。それ故、最短期間には制限があるが、最長期間に関しては制限がない。

 

 借地法
第2条 借地権ノ存続期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ之ニ類スル堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ60年、其ノ他ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ30年トス
但シ建物カ此ノ期間満了前朽廃シタルトキハ借地権ハ之ニ因リテ消滅ス

 契約ヲ以テ堅固ノ建物ニ付30年以上、其ノ他ノ建物ニ付20年以上ノ存続期間ヲ定メタルトキハ借地権ハ前項ノ規定ニ拘ラス其ノ期間ノ満了ニ因リテ消滅ス
 
第11条 第2条、第4条乃至第8条ノ2、第9条ノ2(第9条ノ4ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)及前条ノ規定ニ反スル契約条件ニシテ借地権者ニ不利ナルモノハ之ヲ定メサルモノト看做ス
 

 

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【判例紹介】 *賃料を1ヵ月分でも滞納したときは無催告解除の特約の有効性

2006年07月13日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 「賃借人が賃料の支払を1ヵ月分でも滞納したときは、催告なくして解除できる。」との特約が有効とされる限度最高裁昭和43年11月21日判決、判例時報542号48頁)

(事案の概要)
 賃貸人は、昭和37年3月15日、賃借人に対し、建物を賃料月額金15000円、毎月末日翌月分支払の約で賃貸し、同年9月14日、賃貸期間を昭和40年9月13日までと定めたが、その賃貸借契約には、賃料を1ヵ月でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨の特約条項があった

 ところが、賃借人が昭和38年11月分から同39年3月分までの賃料の支払を怠ったので、賃貸人は前記特約条項に基き無催告解除した。

(判決)
 最高裁判所は、「家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を1ヵ月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。したがって、原判示の特約条項は、右説示のごとき趣旨において無催告解除を認めたと解すべきであり、この限度においてその効力を肯定すべきものである。」と判示した。

(評論)
 建物賃貸借契約において、特約条項が定められる例はしばしば見られるところである。それは、賃借人が新たに借りる立場上契約締結に当たって特約の削除を求めることが困難なことに起因することも多い。その結果、両当事者間で特約条項について合意が成立したことになるが、合意したからといって、全ての特約条項が有効となるわけではない。借地借家法の強行規定に反する場合は無効とされるし、本件特約条項のように強行規定には反しないまでも、信義則上賃貸借契約の継続を期待することができないような状態となったことを要する趣旨と解されることもある。

 本件特約条項は、その意味で、例文として全く無効というものではなく、有効とする上での限度を設けられているということができる。
 実務的には、賃貸人から前記特約条項に基いて無催告解除された場合には、賃借人は、放置することなく、あらためて賃料を提供し受領拒否された場合には供託することが最も適切な措置といえる。

(2003.07.)

(東借連常任弁護団)

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