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東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

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抵当権付物件を借りるときは注意しないと大変なことになる (大阪・住吉区)

2007年12月14日 | 契約・更新・特約

 大阪市住吉区東粉浜3丁目の賃貸マンションの1階部分を期間2年の契約で平成14年5月にスケルトンで賃借した森田義雄さんは、貸主の了解で「ふぐ料理店」を開業するために2000万円を費やし改装しました。

 その後、賃貸借契約は平成16年5月に法定更新され、期間の定めのない建物賃貸借になっていました。

 平成18年8月、突然大阪地裁から「債権差押命令申立事件」の「通知書」が送られ、平成18年9月「債権差押命」が届けられてきました。同時に、大阪地裁は、森田さんへ「事情届」用紙も送ってきました。

 森田さんは、当時はその「通知書」が何を意味しているのか理解できず、その後も月額20万円の家賃を振込み続けていました。

 さらに、平成19年1月、大阪地裁から債権者の変更の「通知書」が送られてきました。
 そして、同時にこれまで聞いたことのない株式会社虎ノ門債権回収という企業から、家賃の支払先を明示した通知書が送られ、さらに、平成19年8月にニッシン債権回収株式会社と名乗る企業からも家賃の振込先を通知してきました。

 その上に、平成19年10月大阪地裁から「債権申立事件」の「取下書」が森田さんへ送られ、新所有者の代理人と称する株式会社リブ・マックスから「賃借権が抵当権設定後であるため、不動産の速やかな引渡しを求める」旨の連絡書が送られてきました。

 森田さんは、これまで家賃の滞納もなく、改装費の返済もできる見通しができ、何とか事業も軌道に乗ったと思っていた矢先の出来事でした。

 <抵当権付と聞いたが、よくわからなかった>
 11月22日、民主商工会の紹介で住吉借地借家人組合の千葉事務局長に相談し、深刻な事態になっていることを初めて知りました。

 森田さんは、平成14年5月30日付けの賃貸借契約書を確認すると、仲介業者を通じて貸主代理人(管理会社)との間で契約しており、建物所有者とは契約していないことが解りました。

 建物所有者は、平成2年7月に抵当権を設定して金融機関から融資を受けており、森田さんが賃貸借契約を締結する際、仲介業者から抵当権が設定されていることを知らされいましたが、抵当権の意味が理解できず競売後の新所有者に対抗力もなく、200万円の敷金も返還されないことも知りませんでした。

 森田さんは、「賃貸借契約時に仲介業者から競売になった場合、新所有者から明渡を求められと無条件で解約されることを事前に詳しく説明を受けておれば、契約しなかっただろうし、父親に連帯保証人になってもらってまで改装費用を工面をしなくて済んでいたのに」と悔やんでいます。

 森田さんは、弁護士に相談し、今後の対策を検討することになりました。 

 <短期賃貸借まではほとんど説明しない>
 
仲介業者を指導している大阪府建築振興課は「重要事項説明書に抵当権設定を記載していても、短期賃貸借制度についてまで仲介業者は詳しく説明していないと思われる。本来仲介業者は、説明するべきであろうが、ほとんどの物件に抵当権が設定されている中で、そこまで説明すると成約できないのではないだろうか。今後機会ある毎に業界を指導していく」と語っています。

 

全国借地借家人新聞より  


  平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。

 

 しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。従って、平成16年3月31日までに締結された契約に関しては、現在も短期賃貸借の保護制度は適用されている

 即ち、「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。」(「短期賃貸借に関する経過措置」附則第5条)。

旧民法
395条
 602条に定めた期間(*)を超えない賃貸借は、抵当権の登記後に登記したものであっても、抵当権者に対抗することができる。但し、その賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは、裁判所は、抵当権者の請求によって、その解除を命ずることができる。

(*) 土地の賃貸借は5年、建物の賃貸借は3年
 

 

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【判例紹介】 1年毎に更新されてきた土地賃貸借が一時使用目的とされた事例

2007年12月08日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 20年以上にわたり1年毎に更新されてきた建物所有を目的とする土地賃貸借が一時使用目的とされた事例 東京地裁平成6年7月6日判決、判例時報1534号)


 (事案)
 1、Xは昭和46年12月にアルミサッシ等を製造販売することを目的として設立された株式会社で、当時作業場等を建てる土地探していた。Yは本件土地はいずれは自宅を建てるつもりでいたので他に賃貸することは考えていなかった。X会社をYに紹介した者が明渡請求があればいつでも明渡すことを保証すると言明、またXの社長も最近独立したばかりで用地の確保に困っており一時貸しでも良いから是非貸してほしいと懇願した。そこでYは一時貸しを条件にXの申入れに応じることにした。

 2、このような経緯でYはXに対し、昭和47年4月1日、一時的建物所有の目的、期間1年、賃料1か月10万円で本件土地を賃貸する旨の契約書を取交して賃貸した。その際一時使用のための賃貸借とすることを明確にする趣旨でXはYに対し、Yから明渡請求があったら速やかに原状回復して明渡す旨の誓約書を差入れ、紹介者も保証人として署名捺印した。なお、権利金や敷金の類の金銭の授受は一切なかった。

 3、X(賃借人)は早速本件土地に組立てハウス(軽量鉄骨カラー鉄板葺き)平屋建倉庫作業場約190㎡を建築し、以後これをXの倉庫、事務所作業所として使用してきた。

 4、その後本件賃貸借契約は「土地一時使用賃貸借契約書」を毎年取交して更新され、結果的には平成5年3月31日まで20年以上にわたって継続してきた。

 5、Y(賃貸人)が右期間満了後の本件土地明渡を求めたため、Xが昭和47年4月1日から30年の借地権の確認を求めて提訴、Yは反訴として建物収去土地明渡を求めた。


 (判旨)
 「以上認定の事実によれば、本件賃貸借契約は当初から、暫定的にXが倉庫作業所を建築使用するために、一時使用の目的で締結されたものであることが明らかであり、Yが借地法の規定を潜脱する意図に出たものとは到底認められないから、本件賃貸借関係が結果的には20年余の長きにわたって継続してきたものであるが、借地法9条にいう「一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合ニ該当スル」としてYの主張を容れ、Xに建物収去土地明渡を命じる判決をした。


 (寸評)
 本件の特徴は、1年後とに一時使用契約を締結してきたが、それが20年以上経ったのだから、実質的には一時使用のためではなく、借地法が適用になる普通の借地契約なのではないかという点にある。本件事案の全体を読むと(例えばXは既に代替地を取得してあまり必要がなくなった)判決の結論はやむを得ない感じがする。

(1995.11.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 借家人の相続人と家主とが合意解除しても内縁の夫は住み続けることができる

2007年12月04日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 借家の相続人が家主との間で借家契約を合意で解除しても、原則として借家人の内縁の夫は依然住み続けることができる 東京地裁昭和63年4月25日判決、判例時報1327号)

 (事案)
 B子は子供3人と共に借家に居住。昭和23年C男と再婚。C男がB子の家族共同体の一員として借家に住むようになった。子供達は結婚するなどして家を出ていき、Bは53年に死亡した。BとCは世間一般の夫婦と何ら異ならなかったが、事情があって入籍しない、いわゆる内縁の夫婦であった。

 したがって、この夫CはBの相続人になれず(内縁を何10年続けても絶対に相続人になれない。内縁の配偶者に何か残したいと思えば遺言するしかない)Bと先夫との間に出来た子供達がBの相続人でありこの子供達がB名義の借家権を相続した(借家権も相続されることは周知のとおり)。

 しかし、子供達は家主Aとの間で、相続した借家権を合意で解除してしまった。そこでAは、Bが死亡したあとも1人で居住し続けているCに借家の明渡を求めた。Cは立退く必要があるのか

 (判決要旨)
 このような場合、Cは、Bの相続人(右の子供達)が相続した借家権を「援用」して建物に居住し続ける権利を家主Aに対抗することができる(ということは、Cは立退かなくてもよいということ)。では、相続人がこの借家権をAと合意で解除してしまった場合はどうか。Cは「援用」すべき対象を失い、結局立退かなければならないか。判決は、次のような理由でCを救った。

 「相続人と家主とが合意解除した以上、常にCは立退かなければならないとすると、借家権援用者Cの立場ははなはだ不安定なものになる。また合意解除の濫用を招いたりする。そうすると借家権の援用を認めた意味がなくなるおそれがある。したがって、合意解除があっても家主は、借家権の援用者Cに立退を求めることはできないというべきである。ただし、援用者Cに不信行為があるなど、相続人と家主とが合意解除することに特段の事情がある場合は、家主は合意解除を理由にCに立退を求めることができる。本件では右の特段の事情はないからAのCに対する立退請求は認められない」。

 (短評)
 結婚の届出をしないという形式的理由だけで内縁の配偶者に一切の権利を認めないというのはいかにも不合理である。本件でもCが立退かなければならなとすれば酷である。そこでCの権利を保護するためにいろいろな学説がとなえられてきた。

 この判決は「援用」の対象たる借家権そのものが合意解除されても原則としてCの立場には影響はないとしたものである。妥当な考え方である。一旦自分の上に合法的に他人の権利が直接又は間接にでも乗った以上、やたらその他人の権利を無視することはできないということである。

(1990.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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(問題10) マンションの会社契約からの変更

2007年10月22日 | 契約・更新・特約

 (問題10) マンションの会社契約からの変更
 賃貸マンションを会社契約しているが家賃は個人で家主に支払っている。都合により会社を退職した。個人の契約にして今まで通り住み続けたいが、家主は新規契約なので敷金と礼金を支払うよう請求されたが支払わないといけないか。


  (①支払って契約する。 ②支払う必要はない。)


  
 (解答)
 ①支払って契約する

  (解説)
 会社から家賃補助を得て個人で家賃を支払っていたとしても,それは賃借人である会社の家賃支払債務を個人が第3者払いしていた関係で,契約当事者はあくまで会社なので,個人に変更したいときは,新規契約となる。

 

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(問題3) 貸店舗の退去時の保証金の償却

2007年10月06日 | 契約・更新・特約

 (問題3) 貸店舗の退去時の保証金の償却
 店舗の賃貸借契約で借主の都合で解約する場合には、預けてある保証金(家賃の10か月分)のうち3か月分を退去時に償却する約定を締結しているが、更新料を更新の度に支払っているので不当ではないか。返してもらえるか。


  (①償却した保証金は返してもらえる。 ②返してもらえない

 解答・解説は田見高秀弁護士(東借連常任弁護団)です。

 (解答) 返してもらえない

 (解説)
 更新の都度,更新料を受け取りながら,さらに加えて「借主の都合で解約する場合に,保証金の30パーセントを償却する約定」は,借家人に不利な約定として無効にならないか(民法90条:公序良俗違反・暴利行為)。

  借家期間の中途で借主都合で解約されると,残期間,家賃が入ると思っていた家主側の期待がやぶられることから,保証金の一定割合を控除するという約定も有効とされます。

 

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更新料支払特約が追加された契約書 (東京・足立区)

2007年09月22日 | 契約・更新・特約

 足立区江北に住んでいるAさんは、今年の6月が借地の更新時期だった。

 ご多分にもれず更新料の支払いを求められ、最初は自分で交渉していたが、なかなか詳しい地主で、負けそうになってしまい組合に飛び込んできた。

 組合と一緒になって交渉してきたが「払ってもらう」の一点張り。仕方がないので、東借連の新聞の判例紹介(借地法定更新で更新料支払いの慣習は認められない)の部分を見せたらあっさりと諦め、契約書を持ってきた。

 契約書には次回の更新時には更新料を支払う旨の特約があったので、現契約書と同じ内容にするよう申し入れたら「この次もまた払わない気だな」と言って地代の受領を拒否されてしまった。Aさんは「仕方ないので供託して頑張ります」と言っている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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地代通帳に損害金と書込む (東京・足立区)

2007年09月21日 | 契約・更新・特約

 足立区中川に住んでいるAさんは、平成13年11月で借地の更新の時期だった。

 地主からは何の連絡もなくAさん自身もすっかり忘れていたため、毎月月末になると地代を持って行っていた。

 今年の7月に、いつものように地代を支払いに行ったら地主は「昨年の11月で契約期限が切れているから更新料を払って貰う」と言われた。Aさんは突然のことだったので「ええ、じゃもう法定更新してますね」と口から出てしまった。すると地主いわく「ふざけんじゃねえ」と言って、持参した地代の通帳に平成13年11月までさかのぼって損害金と書き込まれてしまった。

 すぐに撤回を求めに行ったが聞き入れてくれないので、地代として支払った旨と今後は供託すると通知をだした。

 

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明渡特約が新設された更新契約を撤回させる (東京・足立区)

2007年09月14日 | 契約・更新・特約

 足立区千住緑町に住んでいる佐伯さんは、2年前に現在の建物に入居した。1戸建ての2階部分をアパート風にしていて、庭もあるし住み心地満点で大変気に入っていた。

 しかし、8月の更新の時に、2年後に明渡す新設特約付の更新契約書を持って不動産業者が、平然とやってきた。

 とりあえず受け取って、契約書を作成したが、納得がいかず区の消費者センターに相談すると、組合を紹介された。

 組合で不動産業者に2年後明け渡しの契約書を撤回し、従来の契約書に戻すよう交渉したら「あ、分りました、ご本人が何も言わないのでいいかと思いました」と一件落着。 契約書を渡す前で良かったとほっとしている。

 

東京借地借家人新聞より

 

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家賃は2倍、2年後の更新排除特約の書き入れを要求 (東京・大田区)

2007年09月13日 | 契約・更新・特約

 大田区南雪谷*丁目に居住する新井さんは、木造瓦葺平屋1戸建床面積13.58坪を賃借し家賃は月額6万円である。

 また、隣接する木造トタン1部瓦葺2階建居宅1戸建床面積23.5坪を賃借の津田さんは、家主の承諾を得て2階部分を自らの費用で増築したので家賃は新井さんと同額とのこと。

 両名は家主から居住する建物は古く老朽化しているとの理由で、今年6月末日の期間満了の契約更新に当り、2年期間で契約解除明渡すとの約定を記載した契約書に署名捺印を強要され、知人に組合を紹介されて相談に来た。

 長年居住しているので古い建物ではあるが、朽廃の状況ではなく、日常生活に充分耐えられるということなので、両名は、家主にそのことを伝えて明渡し拒否の通告をした。

 家主の対応は、明渡しの約定を撤回せずに2倍の家賃を求める厚かましさ。受領拒否の家賃を供託して、新井さんと津田さんは「建物が耐える限り頑張ります」と決意している。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 建物所有目的の賃貸借契約が一時使用のものでないと認定された事例

2007年05月31日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 木造建物所有目的の賃貸借契約が一時使用のものでないと認定された事例 (東京高裁平成8年11月13日判決、判例時報1589号50頁)

 事実)
 地主・借地人株式会社間に、昭和62年12月、土地登記簿上の項目は畑を、期間2年、賃料月額金2万円の約の賃貸借契約が成立した。右土地賃貸借契約書には標題に、「土地一時使用賃貸借契約書」と記載されており、使用目的には、「仮設事務所用地但しブロック基礎とする」と記載されていた。

 右賃貸借契約はその後2回改定され、平成3年12月、賃料月額が金3万円に増額された。地主がAを代理人として借地人に土地の明渡を求めたところ、借地人はAの説明により本件土地賃貸借契約が一時使用のもので明渡義務があるものと信じ、右土地を平成6年5月末日に明渡す旨の約定書を作成した。そして、地主は借地人に対し、右約定に基づき、一時使用の土地賃貸借契約が終了したとして建物収去土地明渡および賃料相当損害金の支払を求めて本訴を提起した。

 これに対し、借地人は地主に対し、右明渡約定は要素の錯誤により無効であるとして借地権存在確認の反訴を提起した。

 原判決(横浜地裁平成8年4月11日判決)は、借地人会社の代表者個人が本件土地を昭和59年から賃借していたこと、借地人会社との契約後、右土地に木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建事務所兼倉庫を建てたが地主は異議を述べなかったことなどから、右土地賃貸借契約は一時使用の目的でされたことが明らかであるとはいえないとして借地人会社の要素の錯誤の主張を認め地主の本訴請求を棄却し、借地人会社の反訴請求を容認した。

 争点)
 本件の争点は、本件土地の賃貸借契約が一時使用のものか否か。

 判決要旨)
 東京高裁は、借地人会社が市の指定水道業者として金200万円を投じて本件建物を新築し、本店事務所兼資材置場として利用しており、契約当初から短期間に限って本件土地を借り受ける意思であったとは認められないこと、地主に早期に本件土地の返還を受けなければない特段の事情があったとは認められないこと、権利金の授受はなかったが、本件契約に当たり賃料が2倍に増額され、その後も更に増額されていることなどの事情を付加して、原判決と同様地主の控訴を棄却した。

 (短評)
 一時使用の賃貸借か否かは、単に借地期間の長短だけでなく、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造等を総合的に判断すべきであるとされている(最高裁昭和43年3月28日判決、判例除法518号50頁)。

 本判決は、土地賃貸借契約書記載の一時使用の文言にもかかわらず総合的に判断して一時使用の目的を否定したもので、他の事例の参考になるものである。

(1997.04.)

(東借連常任弁護団)

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【判例紹介】 和解調書による賃料滞納等に基づく契約解除が許されないとされた事例

2007年05月28日 | 契約・更新・特約

 判例紹介

 和解調書における賃料滞納等による無催告解除特約に基づく解除が許されないとされた事例 東京地裁平成3年8月30日判決、判例集未搭載)

 (事案)
 ビルの一室を借りて喫茶店を営む賃借人と家主との間には、かつて明渡請求の裁判があったが、賃貸借を継続することで和解が成立。その和解調書(判決と同じ効力=強制執行力がある)には、「賃料の支払いを1か月以上遅滞したとき又は和解条項に定める義務に違反したときは、家主は何らの通知催告をしないで契約を解除することができる」旨の特約があった。

 家主は、「賃借人は①賃料は毎月末日限り翌月分払いの約定にもかかわらず平成2年1月分の賃料2月13日に、2月分は19日に支払ってた。②客に酒類は提供しないとの約定なのにビールなどを出している。③ゴミは廃棄物処理業者に回収させる約定なのに最寄のゴミ集積所に出している」として右の特約にもとづいて、催告なしにいきなり賃貸借契約を解除し、店舗明渡の強制執行をしてきた。

 賃借人は、保証金を積んで強制執行の一時停止決定を得、本裁判で契約解除の無効、強制執行の違法性を争った。

 (判決)
 ①について。「前訴の和解条項による無催告解除の事由に当るのは1か月と13日にすぎないこと。そして賃借人は2月19日付の回答書をもって速やかに遅滞の弁明と遅滞分を支払った事実を通知したこと、当時働いていた女性従業員が辞め賃借人一人が営業にあたらざるをえない事情があったこと、3月分以降は遅滞なく支払っていること。このような賃料遅滞の程度態様からすれば賃料1か月の遅滞を理由に無催告解除することは許されない」

 ②にていて。「酒類の提供もビールとサワードリンクを従たる提供物として客に提供する態様で前訴の和解成立その前後から行われているものであり、社会通念上喫茶店としての営業形態を逸脱するようなものではなく、本件解除前に家主からこの点の違約をとがめられたこともない」

 ③について。「約定通りゴミを業者に回収依頼すると1回7000円くらいの費用を要する事情もあり、本件解除前にこの点の違約を家主から殊更問題にされたこともない」

 「以上の事実関係に照らすと、家主が本件賃貸借契約上の義務違反として主張する諸点は、それ自体として、賃貸借当事者間の信頼関係を破壊するに足りるほどのものではないので、契約解除は無効である」

 (寸評)
 この事件は和解調書違反を問われたものであるが、和解は裁判官の介入のもとにおける約定であるから、自ら一般契約書違反とは重きが違う。解除無効の理由付けもごく常識的であり説得力もある。

(1991.12.)

(東借連常任弁護団)

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【Q&A】 契約が満了した場合は契約の更新しないという特約条項書き込まれたが

2007年05月18日 | 契約・更新・特約

 (問) 店舗併用住宅を借りて食料品店を営んでいる。5年前の契約期間満了の際に明渡し問題で家主との間でトラブルがあった。その時は契約更新が出来たが、契約書に「期間が満了したら本契約は終了し、更新はしない」という特約条項を書き込まれた。その期間が先月で満了し、家主から強く明渡しの催促をされている。移転先の当てもないので、そのまま営業しているが、①店舗を明渡さなければならないのか。
 また先日、家賃を今まで通り銀行振込したところ、家主は内容証明郵便で「建物の明渡し要求と当月分の振込金は建物使用損害金として受領する。なお今後の振込まれるものも損害金として受領する」という旨の通知をして来た。損害金としえ受取るいうが、②このまま振込みを続けていればいいのか。


 (答) ①に関しては借家を明渡す法律上の必要義務はないというのが結論になる。理由は賃貸契約書に記載された「期間が満了したら本契約は終了し、更新はしない」という特約条項借地借家法第30条の強行規定に反するからである。即ち30条は「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」と規定している。従って借地借家法第26条の法定更新制度を否定する特約は当然、法律的に無効扱いになる。

 ②に関しては家主が「損害金として受領する」というのは賃貸借契約の存在を否定し、賃料として受取らないという意思表示であるから、そのまま支払いをしてはならない。次回の家賃支払は法務局へ家賃弁済供託という方法で支払う。

 今回の従前通り銀行振込みにした家賃に関しては、次のような書式で「私が*日に振込んだ家賃に対し、貴殿から建物使用損害金として受領するとの御通知を受けましたが、私は*年*月分の家賃として支払ったものであることを通知します。」という趣旨の配達達証明付き内容証明郵便配で家主へ送っておく必要がある。

 次回弁済供託をする場合、供託事由の欄の記載は「明渡しを請求され、あらかじめ家賃の受領を拒否され目下係争中のため受領しないことが明らかである」と記載する。

 供託書を提出する時に「供託カード」の発行の申出をして下さい。カード発行を受けると次回のOCR供託書に記載する項目を大幅に省略できる。即ち①申請年月日②供託カード番号③供託者氏名④供託金額⑤供託する賃料欄の年月を記載するだけで済んでしまう。

 

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【Q&A】 家主が変って明渡し期限の付いた契約書の作成を求められているが…。

2007年04月30日 | 契約・更新・特約

(問) 30年前から1戸建の家に住んでいます。先頃家主が亡くなり、相続人の新しい家主が契約の更新をしたいと言ってきました。その条件として、①家賃は現状のままとする。②更新は今回のみとし、2年後の5月31日にて本契約は終了する等を提示してきました。家主は建物が老朽化し、これ以上賃貸建物としては耐え得ないと言っています。
 私達は年金暮しで、他へ移転すれば今払っている家賃の倍以上負担しなければならず、生活が成り立ちません。家は古くなっていますが、修繕すればまだ十分に住める家です。新家主の条件に従って契約しないといけないでしょうか。


(答) 結論から言えば、借地借家法26条の法定更新規定を否定する借家人に不利益な契約条件は借地借家法30条の強行規定()により無効になります。従って、そのような契約を結ぶ必要はありません。
 家主が変ったからといって、契約書を作り直す義務はありません。新しい契約書を作成しなければ、当然、従前作成した契約条件はそのまま引継がれ、契約期間のみ「期間の定めのない」状態で法定更新されます(借地借家法26条1項)。

 なお、期間の定めのない契約の場合は、家主が6か月前に予告すれば解約を申入れることができます(借地借家法27条1項)。しかし、借家人が更に建物を継続して使い続ける場合、家主は借家人に遅滞なく異議を述べなければ、契約は再び法定更新される(借地借家法26条2項)。解約申入の時から6か月間に、契約期間の定めがある契約で更新を拒絶する場合と同様に正当事由がなければなりません(借地借家法28条)。

 正当事由の判断に当っては、家主側の家屋使用の必要性と借家人側のそれとを比較して、その他諸般の事情を考慮して判断されます。家屋の老朽化の程度によっては、例えば、修繕工事よりも建替工事の方が費用が安い場合は建替えが必要と判断され、正当事由が認められるケースもあります。注意する必要があります。

 今の段階では、期限を切って家屋の明渡を約束する契約書や念書など書類の作成には応じないで相手の出方を見守りましょう。もし、家主が家賃の受領を拒否するようでしたら法務局へ供託する必要があります。今後は組合とよく相談して対応するようにしましょう。

    ()借地借家法30条強行規定「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利益なものは、無効とする」

 

東京借地借家人新聞より

 

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【Q&A】 堅固な建物所有を目的にした土地賃貸借契約書を作る場合の問題点

2007年04月28日 | 契約・更新・特約

 (問) 今年の10月20日で20年間の借地契約期間が満了します。契約更新の条件については、すでに地主との話はまとまっています。その内容は、私が地主に相当の承諾料(金額も合意した)を支払い、現存の木造建物を堅固建物に建替えるというものです。
 これから更新後の契約書を作成する段階で、私が契約書の案を作って提案することになっています。今回は条件が大分違うので従前と同様の契約書ではまずい気がします。どんな内容の契約書を作ればいいのか教えください。 


 (答) 今回の更新は、単に契約期間を更新するのではなく、非堅固な建物所有を目的にした借地から堅固建物所有を目的にした借地へ条件変更をし、同時に更新するというものです。ですから、従前の契約書と異なるのは借地の目的と契約期間だけで、この二点を書替えればいいのです。

 しかし、おそらく従前の契約書も含めて市販の契約書は一方的に借地人に対して義務や禁止条項ばかりが並んでいて公平なものとは言えません。左記の見本を参考にして、思いきり公平でスッキリしたものにしてください。

 「土地賃貸借契約書」 ○○○○を甲とし、○○○○を乙とし、甲乙間において、甲所有の後記物件目録記載の土地(以下本件土地という)の賃貸借に関し、次の通り契約する。

1、本件土地の賃貸借契約は、堅固な建物所有を目的とする。

2、この契約の期間は○○年○月○日から、30年間(30年以上の期間とすることも可能)とする。

3、地代は1ヶ月金○○円とし、乙は毎月末日までに甲方に持参して支払う(振込払いの場合はその旨を記載)。

4、乙が借地権を第三者に譲渡または転貸するときは、甲の承諾を受けなければならない。

5、この契約は、甲乙間の平成○○年○月○日に20年間の期間が満了した前契約を、堅固建物所有を目的に条件変更した上、更新したものである。

 以上に物件目録(測量図を添付すればなおよい)、契約の日付け、当事者の署名捺印で完成です。最後の第5項は、旧「借地法」が適用されている借地権であり、「借地借家法」による期間30年の借地契約でないことを確認するために付加えたものです。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 親子間の土地使用貸借契約が信頼関係が破壊されたとして解約された事例

2007年04月07日 | 契約・更新・特約

  判例紹介

 親子間の土地使用貸借契約が使用借人の扶養、監護の放棄によって信頼関係が完全に破壊されたとして解約された事例 大阪高裁平成9年5月29日判決、判例時報1618号)

 (事案の概要)
 本件土地はXが相続により取得したものであるが、長男Yがそこに建物を建築所有し第三者に賃貸して月78万円の家賃を得ていた。Xはその家賃収入をもって老母を扶養、監護し土地の固定資産税を支払ってきたが、平成7年8月の本件訴え提起当時は既に右扶養、監護をしなくなっていた。そこでXはYとの土地使用貸借契約を解約しYに対し建物を収去して土地を明渡すよう求めた。

 (判決要旨)
 土地所有者Xは長男Yの建物建築に格別不満を述べず黙認していたが、それは長男であるYが、Xの扶養、監護を確実に実行してくれるものと信じていたからに他ならない。そうであるから、右使用貸借契約の目的は、Yに本件土地使用の利益を与えることのみにあるのではない。むしろ、Yが得た収入からXを扶養、監護し、本件土地の固定資産税等の費用にも充てることを目的としていたものであるというべきである。

 ところがYは、従前Xに対して行ってきた扶養、監護を打ち切り、これを放棄した。その後YはXに対する仕送りなど一切していない。このためXは他の子供の世話になるなどしているものの、その生活は著しく困窮している。本件土地の固定資産税の支払いも滞納している。一方、Yはその経済状態から見て、Xに対する仕送りが困難な事情にあるとは到底いえない。

 そうであるとすると、本件土地使用貸借契約の当事者であるXとYとの間の信頼関係はYによって完全に破壊されたものというべきである。このような場合、XはYに対し、民法597条2項但書を類推適用し、右使用貸借契約の解約申入れをすることができる。したがって右使用貸借契約は解約申入れにより終了した。

 (解説)
 地代を払って土地を借りるのが賃貸借契約、ただで借りるのが使用貸借契約。本件は、世間によくある親の土地に息子が建物を建てる使用貸借は、いつ終るのかという問題。一旦息子に建物を立てることを承諾した以上、息子がどんな親不孝をしても土地は取り戻せないのか。

 使用貸借に期間の定めがあればその期間満了と同時に終了する。賃貸借のように法定更新はない。期間の定めがない本件のような場合は、民法は「使用収益をなすに足るべき期間を経過し足る時」に終了すると定める(597条2項但書)。

 本件の如き親に対する扶養、監護を打切って顧みない息子との使用貸借は、右の条文にそのままあてはまるわけではないが、判決はその趣旨を類推して契約の終了を認め、親不孝息子に鉄槌を下したものである。結論は常識的であり支持できる。

   (1998.05.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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