夏なのでたまにはこんなレコードも紹介してみましょう。これがリリースされた当時、サーファー達の間で一世を風靡したという噂のカラパナによる76年の2ndアルバムです。「ワイキキの熱い砂」とトホホな邦題が付いていたり、どう考えてもダサいジャケットだったりと、まぁ色々と突っ込みどころはありますが、そんな部分もある意味この時代特有のご愛嬌。肝心の中身の方は、今聴いても全然古くないエヴァー・グリーンなものになっているのでご安心を。注目はやはりマッキー・フェアリーがリード・ヴォーカルを取る曲。特にオープニングを飾るA-1のLove 'Emは、これぞマッキー節とでも言うべきメロウAORの大傑作です。この後にソロで発表するA Million Stars直系の曲調で、その甘く力強い歌声も相まり、アルバム中でも屈指のアーバン・リゾート感を誇る作品。日本人でこういう曲が嫌いな人、多分いないのではないでしょうか。幻想的なミッド・バラードで聴かせるB-1、Moon And Starsも最強の名曲。こちらもやはりマッキーの甘い歌声が光ります。間奏でのフルート・ソロも涼しげで良い感じですね。また、ソフト・ブラジリアンなB-5のJulietteは、アコースティック・ピアノのきらきらした音色が印象的な佳曲。どこか昭和歌謡的な雰囲気もありますが、こういうのも好きな人には堪らないのではないでしょうか。また、アップ・テンポな楽曲ではA-2のFreedomが良い感じ。こちらはもう一人のヴォーカルであるマラニ・ビリューとのデュオ曲ですが、白人っぽい声質のマラニと黒人っぽい声質のマッキーの掛け合いが面白い一曲になっています。全体的にも良い曲揃いなので、この季節に聴くにはオススメの一枚ですね。何より安いですし…(笑) ちなみにマッキーは、このアルバムを最後にバンドを去ることになります。
「キャノンボール」ことジュリアン・アダレイが、セルジオ・メンデス率いるボッサ・リオ・セクステットを従え録音した1枚。ゲッツとジョアンによる共演盤からシングル・カットされた「イパネマの娘」のヒットにより、ボサノバが世界的なブームになっていくのとほぼ同時期の63年に吹き込まれた作品で、ファンの間ではわりと良く知られたボサジャズの傑作盤です。冒頭から気だるさ全開で始まるA-1のCloudsや、続くA-2のO Amor Em Pazは夏の木陰のブラジリアンといった趣きの佳作。また、一転してアップ・テンポで楽しげなA-3のMinha SaudadeやA-4のSambopもなかなかに良い感じですね。しかし、この盤最大のハイライトは何と言ってもB-1に収録されたGroovy Samba。クラブ的にはDanish Jazzballet Society Emsembleによるカヴァーがラウンジ・クラシックとして知られていますが、本家のこちらもそれに劣らない素晴らしい一曲に仕上がっています。カツカツと打つボッサ・ビートに乗る哀愁に満ちたテーマ・フレーズが最高にエキゾチック。キャノンボール~セルメンと続くソロも素敵です。個人的には、セルメンの長いキャリアの中でもこれがベスト・ワークだと思うのですが如何でしょう。いずれにしろ初期セルメンを代表する1曲であることは確かだと思います。ただ、残念ながらこの曲はモノラルで聴かないと魅力が半減してしまうので要注意。管が1本しか入っていないので、左右に音を振り分けた擬似ステレオ盤だと、聴感上なんだか妙な違和感を覚えてしまうんですよね。前々から知ってはいたものの紹介が遅れてしまったのも、実はそうした違和感が気に入らず、今までレコード自体を持っていなかったためです。ちなみに掲載しているジャケットは蘭Fontanaからライセンス・リリースされているもの。原盤は言うまでもなく米Riversideですが、個人的にはこのヒップなジャケットの方が断然気に入っています。真夏の暑い季節、こんな小粋なボサジャズを聴きながら、のんびりと夜を過ごすのも良いのではないでしょうか。