ニューヨーク生まれのシンガー、ジュディー・アントンによる1980年の作品。彼女は生粋のアメリカ人でありながら父の仕事の関係で13才で来日しており、一時期は11PMのカバー・ガールやTBSの朝の情報番組のお天気キャスターを務めたこともあるそうですが、本作はそんな彼女が日本のフュージョン界の面々と吹き込んだ一枚で、その筋では非常に人気の高いアルバムです。昨今の和モノ復刻ブームを見ていて、近いうちに再発されるだろうと思っていたら案の定来月にはめでたくCDリイシューがされるそう。AORというよりはフュージョン~スムースジャズと表現した方が適切なアルバムですが、数ある和モノ作品の中でもトップクラスの名盤であることは間違いないので、既にオリジナル盤を所有している身としても今回のCD化は素直に嬉しいです。収録曲8曲のうち日本語詞が4曲。日本で芸能活動をしていたことを考えれば当然なのですが、日本語での歌唱にまったく違和感がないことに驚きます。ガイド本なのでよく取り上げられているA-1のLiving In The Cityも普通に日本語詞。AB'sの松下誠によるアレンジで、見事なまでにシティポップを表現しています。間奏で入るスクエアの伊東たけしによるサックスも、いかにもと言った雰囲気で良い感じ。和モノ関連のフリークならば、まず間違いなく一発でノックアウトでしょう。ただ個人的には、彼女自身が英詞で作詞したA-2のBaby Don't You Cryがアルバム中でもっともお気に入り。ある種の神々しささえ感じる天使のような歌声が印象的なミッドテンポのメロウナンバーです。やさしく美しいメロディーラインが耳に心地よく癖になる一曲。カーペンターズあたりが好きな人はまず間違いなく好みでしょう。ちなみにB-1のThe River Must Flowはジノ・ヴァネリのカバーで、こちらもガイド本によるリコメンドの常連。タイトなリズムが気持ちいいライトメロウなブラコン調ナンバーに仕上がっており、その筋で人気があるのも頷けます。オリジナル盤はそれなりに高額となっているため、正直広く一般にはお勧め出来るような類の盤ではありませんが、CD化されるとなれば話は別。まだ聴いたことないという方は今回のCDリイシュー時に是非チェックしてみてください。
去年くらいからやたらと盛んになっている和モノCDリイシューの一環として、先ごろ初の銀盤化も果たしたmimiこと宮本典子の4thアルバム。リリースは1982年でポリスター/カサブランカから発売されていたようです。内容的には歌謡色強めのディスコ~AORサウンド。今回のリイシューにあたり店頭ポップなどでは何だかやたらと褒めちぎられていますが、個人的にはこの独特の歌謡色が苦手なので正直アルバム通して好きと宣言するには少し辛いです。どことなく胡散臭さ漂う昭和ムード歌謡独特の雰囲気が好きな人ならば気に入ると思いますが、僕の場合は和モノと言えども同時代の洋楽的な洗練さが感じられないとダメな性質なので、この手の歌謡系作品は守備範囲外。ただ、そんな中でも実は1曲だけ直球ストライクで気になる曲が入っており、それがA-4に収録されたLovely City。全体に歌謡テイスト漂う本作中では異色のナンバーで、同時期のブラコンサウンドに通じる洗練された和製グルーヴィー・メロウ・ソウルです。同じような雰囲気の曲では、先日同様にリイシューを果たしオリジナル盤はここ1~2年異常な価格で取引されている井田リエの2ndに収録されていた「パーティーを抜け出して」と双璧。正直この一曲のためだけに聴く価値ある作品だと思います。今回のリイシューでどうなるか分かりませんが、今のところはオリジナル盤もそれほどでもない価格で取引されているので、気になる人は思い切ってLPで買ってしまっても問題はないかと。僕自身2年ほど前に、最近この手の和モノに異常な価格を付けている都内某店で800円で購入しました。この頃の傾向を見る限り、今だと3800円くらいしそうですが…。数年前には二束三文で売られていた作品が一気にプレミアム価格で取引されるという現象はこの世界では当たり前で、商品の需要と供給を考えればある意味しかたのないことなのかもしれませんが、個人的にはやはりあまり良い印象はありません。特にこうした作品は、町の中古レコ屋で見つかれば普通に1000円以下で買えると思うので、変に専門店で買うよりおとなしくそちらで探した方が良いかと思います。
ライトメロウなJ-AORをもう一枚。「おどるポンポコリン」や「夢のENDはいつも目覚まし!」で有名なビーイングの企画系バンド「B.B.クイーンズ」のヴォーカリスト、坪倉唯子によるソロ名義の2ndアルバムです。リリースされた時期は「おどる~」の1ヶ月前となる1990年3月。知らない人が聴くと驚くこと間違いないと思いますが、これが実はearly 90's J-AORの隠れ名盤だったりします。どうしてもB.B.クイーンズの印象が強い彼女ですが、もともとはデビュー前に桑名晴子のベーカーズショップに参加してたこともある本格派。そんなこともありソロ作品では、本来の中低音ヴォーカルを活かしてしっかりとAORシンガーをやっています。ドラムの音色が強調された90年代特有のデジタルレコーディングですが、演奏自体はしっかり生音。おまけに演奏陣が青山純(ds)や伊藤広規(b)、そして土岐英史(Sax)など山下達郎のツアーメンバーとしてもお馴染みの凄腕スタジオミュージシャンで構成されているため、サウンド自体の完成度が非常に高く、玄人が聴いても充分に納得できる一枚と言えるでしょう。特に件のLight Mellow和モノ669でもピックアップされていたM-5のTaxiーDriverは、(リリース自体はこちらの方が先ですが)シャーデーのKiss Of Lifeにも通じる絶品アーバン・ミディアムに仕上がっているため、この類の音楽が好きな人ならば確実に一撃でノックアウトされるはず。この時期の作品ながらしっかりとグルーヴを感じられるところがポイントで、個人的には古内東子のPeach Melbaと並ぶ90年代J-AORの名曲と言って良いかと思います。CDオンリーの作品ですが特段珍しいというわけでもなく、普通に安価で中古屋に転がっているため、まだ聴いたことのないという方は騙されたと思って是非チェックしてみてください。特に90年代サウンドにアレルギーがある方にこそお勧めのナンバーです。
先日の児島未散からVAPレーベル繋がりでもう一枚。1989年から現在に至るまで合計22作が制作され、子供から大人まで非常に人気の高いルパン三世のTVスペシャルの記念すべき第一作、「バイバイ・リバティー危機一髪!」の主題歌が収められた7インチのシングル盤です。1999年に発売されたLupin The 3rd Jazzがヒットして以降、最近はすっかりジャズ色が強くなってしまいましたが、大野雄二はもともとフュージョン畑でこそ本領を発揮するミュージシャン。本作はシングル盤ながら、彼らしいJ-Fusionを堪能出来る一枚になっています。A面のタイトル曲はヴォーカルに慶田朱美を起用した摩天楼風味のミディアム・ナンバー。王道のバラード路線で聴かせることが多いTVSPシリーズの主題歌としては異色ですが、この時期らしい都会的かつライトメロウな一曲に仕上がっているため、シティポップス~J-AORが好きな人はおそらく気に入るはず。最近の風潮として、この辺りのJ-AOR人気の本流は70年代モノから80年代モノにシフトしている感があるため、まだ聴いたことがないという人はチェックしてみると良いかもしれません。ただ本作の目玉はB面に収録された「ルパン三世のテーマ」。タイトルだけでは分かりませんが、これは後にTheme from Lupin III '89と呼ばれることになるヴァージョンで、数あるこの曲のアレンジの中でも一際ゴージャスでグルーヴィーな名演です。エルボウ・ボーンズのA Night In New Yorkを意識したかのようなアレンジが見事で、個人的にこの曲はこのヴァージョンが最も好き。歴代TVSPでも最も使用頻度が高いナンバーのためCDには良く収録されているのですが、アナログで聴けるのはおそらくこの盤のみと思われます。ちょうどレコードからCDへの移行期の作品でプレス数も少なく、おまけにシングル盤なので探すのはそれなりに難しいと思いますが、この89年アレンジのOP曲が収録されているということでマニアなら探す価値のある一枚。僕は普通に町の中古レコード店で300円くらいで見つけたので、もし見つかれば安く手に入ると思います。それほどルパン三世に思い入れのない方はCDで充分かもしれませんが、気になる方は是非探してみてください。
知っている人は知っている林哲司プロデュースによる1989年の一枚。いわゆる二世タレントであるというこの児島未散さんのことは残念ながら存じ上げませんが、これがなかなかに良質なJ-AOR作品となっており、たまたま安く見つけたので購入してみました。1989年と言うとちょうどレコードからCDへの移行期にあたる時期ですが、おそらくこれはCDでのリリースのみ。ただ特段珍しい作品というわけではないので、ブックオフ等で見かけたら普通に250円で買えると思います。気になる内容ですが、プロデューサーの林哲司を始め、コーラス&編曲を務める東北新幹線の山川恵津子や、作曲で参加する村田和人など脇を固めるメンバーが豪華なので、この辺りの名前にピンと来る人には見逃せない仕上がりとなっています。少しアイドルっぽい歌声で聴かせる児島未散のヴォーカルがまた良い雰囲気で、特徴こそないもののシティポップス寄りのアイドル歌謡としては満点。時代がら打ち込みも多用されていますが、サノトモミさん時代の流線系の雰囲気が好きな人ならば多分気に入ると思います。特に素晴らしいのはM-1のタイトル曲。まるで間宮貴子の「真夜中のジョーク」のようなミディアムテンポのライトファンクに仕上がっており、アダルト・コンテンポラリー路線のアレンジと少女のようなヴォーカルの対比が見事です。その他の曲では、山川恵津子が書いたM-2の「なまいきCinq」や杉真理が書いたM-6のSweetest jokerあたりが、いかにもアイドルと言った雰囲気な元気いっぱいのポップナンバーで良い感じ。この手のシティポップス系アイドル歌謡の場合、気合を入れて作った演奏自体は良くても、肝心のヴォーカルがあまりに下手過ぎて、音楽好きが聴くには少し厳しいというような作品も多々ありますが、この作品についてはそうした心配は無用です。アイドル歌謡自体に抵抗がある人はNGかもしれませんが、それ以外の人には是非聴いてみてもらいたい一枚。「Light Mellow 和モノ669」でこの辺りの音に興味を持った世代にはぴったりな作品だと思います。
サーフィンを題材とした同名のドキュメンタリー映画のサウンドトラックとして制作された1984年の作品。あいにく映画の方は見ていませんが、アルバム自体の出来は非常に良く、この次のPocket Music以降デジタル録音に移行し若干作風が変わる山下達郎の、いわゆる「夏だ、海だ、タツローだ!」系列作品の総決算として楽しめる一枚となっています。A面が過去の作品からの焼き直しを含むオリジナル楽曲、B面がビーチボーイズのカヴァーという構成になっていますが、サントラということで全体を通しての統一感は保たれており、非常に夏を感じられる完成度の高いアルバム。オリジナル曲を含め全てが英語詞であるということもあり、数ある彼の作品中でも雰囲気を楽しむBGM的な聴き方に最適な一枚です。Joy 1.5にライヴ・ヴァージョンが収録されていたA-1のThe Theme From Big WaveとA-3のOnly With You、人気曲の英語版となるA-2のJodyあたりもいいですが、何よりオイシイのはこのアルバムのみに収録されているA-4のMagic Ways。きらきらしたギターのカッティングと一人多重コーラスが最高に気持ちいいクラブ世代好みの跳ね系AOR~ライトファンクの逸品で、英語で歌われていることを含め、おそらく彼の楽曲中でもっともフロアプレイに適したナンバーでしょう。2番で♪And when you want me you just clap your hands~と歌われた後の手拍子3回が気持ち良過ぎます。人気曲でフロアでも特大クラシックなSparkleやLove Spaceの影に隠れてあまり話題になることはないのが残念ですが、個人的には一押しのキラー・チューン。このブログを見てる方で知らないという人も少ないかと思いますが、既に知ってる方も良かったら是非聴き直してみてください。どこのレコード屋でも数百円で買える盤ですが内容は極上。コストパフォーマンス的にも最高なお勧めの一枚です。
山下達郎のツアーメンバーだったこともあるキーボーディスト野力奏一を中心としたフュージョン系バンド、Norikiによる1983年のデビュー作。帯に「時代にフィットしたポップ感覚、ノリキ・フレッシュ・デビュー!!」と書いてある通り、とてもポップかつライトなフュージョン作品で、個人的に非常に気に入っている一枚です。この手の80年代国産フュージョンは実はあまり詳しくなく、70年代の本場ジャズファンクと共に正直守備範囲外だったりもするため、他には大野雄二のSpace Kidくらいしか持っていなかったりするのですが、この時代のデジタル録音特有の洗練されたシャープな音色に魅力があることも事実で、こうして時々針を落としてみると改めてその魅力に気付かされます。特にライトなジャズファンクで紡がれるA-2のAnywayやA-4のCozy's Melody、アーバンな香り漂うB-2のBalladeやB-4のGo Over The Hillあたりはリゾート感覚で聴ける良質なフュージョンとしてクォリティ高め。ジャンルの特性上、耳に強烈な印象を残すというナンバーではありませんが、その分とても耳馴染みが良く日々のBGMとしてお勧めです。ただAORファン的に本作で注目すべきは何と言ってもA-1のYou Need Me。ゲストヴォーカルに国分友里恵を迎えた跳ね系ライトメロウソングで、この手のJ-AOR作品の中でも頭一つ抜けたクォリティを誇るナンバーとなっています。以前紹介した自作コンピでも締めとして使いましたが、全英語詞で歌われているため洋楽AORの中で混ぜてかけても違和感が少ないのが個人的には高得点。和モノだと曲は良くても歌が入ると途端にダサくなるものが多い中、普通にキラーナンバーとして機能するため、AOR系のDJ諸氏(今の時代そんな人いるのか分かりませんが…)には是非お勧めの一曲です。ちなみにオリジナルのLPは多少レアで、中古市場でもそれなりの値段が付いていますが、実はこっそりitunesにアップされていたりもします。とりあえず曲だけ手元に欲しいという方は、Youtubeで聴いてみた後itunesで購入するというのが良いかもしれません。
あの林哲司のバックアップで1980年にシティポップス作品を残す「大宮京子&オレンジ」の元リーダー、三浦年一による1983年作。45回転5曲入りの12インチという変わった体裁でリリースされており、ミニアルバムと言うよりは今で言うところのマキシシングル的な作品です。ちなみにタイトルにはIと付いていますが、あいにくII以降がリリースされているという話は聞いたことがないので、セールス的にはそれほど振るわなかったのでしょう。三浦年一なるシンガーのその後についても良く分かりません。ただこの12インチを聴く限り、角松敏生やオメガトライブあたりに通じるオーシャン系J-AORとして内容的にも充実しており、本人の作曲力や歌唱力も水準以上なので、個人的にはこの一枚だけで消えってしまったのが悔やまれます。さて、そんな不遇な本作ではありますが、何気に一部のJ-AOR愛好家からはカルト的人気があり、中古市場でも一定以上の価格で取引されていたりするので知らないと言う方は要注目。実は演奏と編曲でAB'sが全面参加しており、シンガー三浦年一の作品というよりはむしろ松下誠在籍時の全盛期AB's関連作品として、その筋では注目を浴びているようです。なかでもとりわけ人気があるのがB-1のFriday Night。アレンジを務めるのはバンドの中心人物である芳野藤丸や松下誠ではなくベーシストの渡辺直樹ですが、これがライトメロウな跳ね系ミディアムで、爽快感のあるJ-AORとして非常に秀逸な作品に仕上がっています。正直この1曲のためだけに買ってしまっても損はないくらいですが、その他の曲でも芳野藤丸がアレンジを務めるB-2のWedding Bellや、松下誠がアレンジを施したA-2のTokyo Flightはこの手の80年代J-AORとしては水準が高く、トータルとしてコストパフォーマンスが高い一枚と言っていいでしょう。discomateなるマイナーレーベルからリリースされており、前述のようにセールス的にも振るわなかった作品のため、あまりどこにでもあるという類のレコードではありませんが、興味のある方は是非探してみてください。あいにく運命のいたずらによって角松敏生や杉山清貴にはなれなかったシンガーの作品ですが、このまま埋もれさせてしまうには少しばかりもったいないかと。。。
J-AOR界の貴公子、角松敏生による1981年のデビューアルバム。よく言われるようにヤマタツフォロワー色の強い一枚です。彼と山下達郎との近似性についてはデビュー当時から一貫して指摘されていますが、本作を含む初期の3作については、同時期にリリースされていたRide On Time~For Youあたりのいわゆる「夏だ、海だ、タツローだ!」的サウンドの焼き直し感が顕著。そういう意味では熱心な達郎ファンの方から「パクリ」と揶揄されるのも仕方がないと思います。ただ、だからと言って駄作というわけでは決してなく、作品の完成度としては同時期のJ-AORと比べてもむしろ高め。ドラムの村上''ポンタ''秀一やギターの鈴木茂を始めとしたその筋での豪華バックミュージシャンを従え、心地よいリゾートサウンドを全編にわたり展開しています。さすがに本家の達郎に比べれば一枚落ちますが、それでもシティポップス~J-AORとしては充分過ぎるほどのクォリティ。特に跳ね系サウンドが気持ちいいA-2のElenaやどことなくアイランドメロウ感漂う3連ロッカバラードで演奏されるA-4のSurf Break、それから波の音が聴こえてきそうな美しいAORバラードのB-2、Still,I'm In Love With Youあたりは耳が肥えたリスナーでも満足出来るナンバーだと思います。その優男風のルックスとも相まってサウンド的にも非常に洗練された雰囲気で、ある意味では山下達郎より都会的というかバブリーな印象。賛否両論はあると思いますが、「波の数だけ抱きしめて」のサントラ的展開を地で行っている音作りは個人的に好感を持てます。今聴くと80年代特有のダサかっこよさが逆に新鮮なんですよね。ちなみに本作、知っている人もいるかもしれませんが、カマサミコングのDJを交えたいわゆるDJスペシャル版も存在します。正規リリースはテープのみだったようで、LPはプロモ限定のようですが、こちらも同時期に出た山下達郎のCome Alongを思いっ切り意識した内容で良い雰囲気。Come Along同様KIKIのジングルとカマサミコングの軽快なトークを交えながら、思いっ切り夏仕様で絶品ナンバーを届けてくれます。このDJスペシャル版については、今のところ未CD化かつ将来もおそらくCD化の予定はないと思いますが、個人的には是非CD化をお願いしたい作品です。アナログで買うとプロモオンリーの宿命で非常にレアかつ高額。オリジナル版は正直そこまで大枚を叩いてまで買うのはいかがなものかと思いますが、CDになったら誰でも気楽に手にすることが出来るようになると思われますので。。。
僕たちの世代では「新世紀エヴァンゲリオン」の音楽担当としても知られる作曲家/マルチプロデューサー、鷺巣詩郎氏による1979年のデビュー作品。例のLight Mellow和モノ669掲載後、一部で話題となったことがきっかけで、2年ほど前にdisk unionのThink!からCD化済みの作品です。実はCD化の際に一度試聴するも今ひとつピンと来ずスルーしていたのですが、最近たまたま入った地元のレコード屋で帯付きLPが安く売られていたので買ってみました。一通り聴いてみた印象としては、全体的に悪くはないものの地味。いわゆるフュージョン~クロスオーヴァー畑の人がやっている和製AORとしてはなかなかの佳作で全体的に隙もないのですが、なんというかこのモノクロ写真のジャケット含め全体的に華がないので、きっとどこまで行ってもマニアックな作品止まりで、広く世に知られる作品になることはなさそうです。おそらくリイシューCD自体もそれほど極端には売れていないはず。ただ、そうした中でもA-3の「黒い雪」はやはり名曲。吉田美奈子あたりにも通じる和製メロウグルーヴで、須貝恵子嬢のヴォーカル・ワークを含めJ-AOR前夜のシティポップスとしてはかなりの完成度を誇っているため、一部マニアの間で人気があるのも頷けます。その他の曲では村川ジミー聡とのデュエットで歌われるB-2のLong Peaceも程よくポップなナンバーで良い感じ。途中のテナーサックスによるソロも雰囲気抜群です。いわゆる和モノ系DJが好みそうなのは全英語詞で歌われるダンサンブルなB-3のFly!。個人的には音の質感含めあまり好みの雰囲気ではありませんが、これはこれで和製ディスコブギーとしてクラブではそれなりに機能するのでしょう。個人的にはわざわざ大枚叩いて購入するほどの作品ではないと思いますが、もしも僕のようにどこかで安く発見できたら買ってみても損はない一枚。もしも興味があれば街のレコード屋さんを気長に探してみてください。