(前回からの続き)
前回、アメリカのドナルド・トランプ大統領率いる新政権は、「アメリカ第一」実践すなわち自国経済再生を最優先させるために、巨大な規模の軍事予算のかなりの部分(?)を米国内のインフラ整備等に振り向けるのではないか、といった個人的予想を綴りました。実際にそうなればこれはトランプ流「リバランス政策」(連邦政府予算の再均衡)といった感じですね。ちなみに・・・元祖(?)リバランス政策とは、アメリカの世界戦略の重点を成長著しいアジア・太平洋地域にシフトしようというもので、2011年以降、現オバマ現政権が展開しているわけですが・・・
ところが・・・トランプ氏はいっぽうで米軍兵力はさらに強化すべき、と主張しているみたい!? 報道によれば同氏は、陸軍兵数や航空機・軍艦・潜水艦の数をいま以上に増やすほか、海兵隊も現在の32から36へ増強すると述べています。となれば当然、国防費支出にはそれだけ増加圧力がかかってしまうことに・・・。
うーん、よく分かりませんね・・・。これでは軍事費は減るどころか、かえって膨らんでしまい、上記の国内ニーズに回すおカネが捻出できなくなってしまいます。ではいったい何をカットする気なのだろう?となると・・・トランプ氏のこれまでの発言から考えるならば、まずは同盟各国に展開している米軍の駐留経費ということになりそうです。ようするに同氏は、この費用を駐留先の国に全額負担させることで浮かそう、という腹積もりなのでしょう。
ちなみに、日本の今年度の在日米軍関係経費は約7600億円もの巨大さ。しかもこあれらのなかには「思いやり予算」―――米基地内の光熱費や日本人の労賃など、本来はアメリカが支払うべき費用―――にともなう支出(約1900億円)も含まれています。これらの総コストに対する割合は約75%にもなるそうです(ドイツの約30%、イタリア・韓国の約40%をはるかに上回っている)。ということは、これを日本が全額負担するとなると、残りの25%つまりあと3千億円近く、国民負担が増える計算になりますが・・・
・・・このあたりについて日本政府はトランプ氏の要求(?)を拒否するもようです。実際、稲田防衛相は11日の記者会見で同経費に関して「現状で負担すべきものはしっかり負担している」と述べ、安倍首相も14日「日米間で適切な分担が図られるべきだ」(参院TPP特別委員会)と答えています。まあ当然と言えば当然の回答ですが、あらためてお二人のこの発言を支持したいと思います。
・・・といった感じで今後、日本ばかりかドイツや韓国といったアメリカの同盟国に対し、トランプ新政権が駐留米軍の経費負担増を求めてくる可能性は高いでしょう。ですが・・・たとえこれらを全部、同盟国側に支払わせることができたとしても、それでひねり出せる金額なんぞ、上記財政の「大盤振る舞い」に比べれば微々たるもの。これっぽっちではまったく足りない、ということです。したがってトランプ氏が本気で法人減税とかインフラ再生を派手にやるつもりなら、国防費の大リストラ断行は避けられないはずですが・・・
・・・早くも大きな矛盾が露呈した印象はぬぐえませんが、トランプ氏がこのへんをどうしようというのか、注目したいものです。