(前回からの続き)
前回までに綴ったように、足元のリスクオフ深刻化を食い止めるには主要中銀の金融緩和策しかなさそうですが、日銀の追加緩和は力不足、ECB(欧中中央銀行)はEU各国の足並みがそろわないなかで(?)サプライズは起こせそうもない、そして米FRBはQE(量的緩和策)を自ら封印した手前、おいそれとその再開を言い出せず・・・といった個別の事情から、今後に予想される緩和マネーの供給は市場のモードチェンジを促すに足る規模には遠く及ばないでしょう。
となると「双子のバブル」(債券と株のバブル)の崩壊はいっそう進むことになりそうです。信用リスクが高まるなか、ジャンク債の価格はますます下がり(利回りは急ピッチで上がり)、昨年終盤から本格的に始まった感じ(?)の世界的な株安傾向にも拍車がかかるでしょう。そしてこれが債券と株の資産効果に頼ったアメリカの家計の各種ローン返済を難しくさせます。やがてそれらの多くが債務不履行になってローン破綻件数が急増するとともに、ローン債権の不良化が一気に進んで米銀の資産内容も劣化の一途へ・・・
そんなわけで、クレジットカード、自動車、学資、そして住宅・・・米家計が抱えるローン(すなわち米銀の資産)はこの先、どれも非常に危険だな、と感じますが、もっともリスキーなのはやはり総額がいちばん大きな住宅ローンでしょう。で、その住宅の価格ですが・・・じつは昨年11月までは順調に(?)上昇中です(!?)。先日発表されたS&P/ケース・シラー住宅価格指数は前年比で5.8%上昇と、2014年7月以来の高い伸びを記録しています。これにより住宅価格は2012年1月につけたリーマンショック後の最安値から29.2%も高くなり、サブプライムローン・バブル崩壊直前の2006年7月の過去最高値よりは4.8%低い水準にまで戻ったことになるそうな。ということは金融マーケットのリスクオフは米不動産市場には無縁ということか・・・?
・・・なんてことはないでしょう。上記データは株価急落前の昨年11月のもの。金融政策の支えが乏しいなか、先述した同12月以降の株価急落と低迷が長引けば、米住宅価格もまた近々ピークを打ち、「双子のバブル」に続いて崩れ始めるのではないか・・・。まあ住宅市場にはリスクオフのもと「質への逃避」(≒米国債買い)にともなう長期金利の低下という追い風もあるでしょう。しかし個人的には、上記資産効果の大幅減、それに加えてここでも「質への逃避」すなわち優良顧客層(プライム層:ローン支払い能力の高い顧客層)とそうではない顧客層の峻別が始まって、後者すなわち(またも!)「サブプライム層」は金利負担の高まりで追い詰められ、次々に破綻して・・・みたいな事態になっていく予感がします。
・・・で、これって、なんてことはない、2007年頃の再現ですね。つまりアメリカそして日本以外の世界は、リーマンショックであれほど懲りたはずの危険な資産バブルをまたも目一杯膨らませ、いまその全面的な崩壊に直面しつつあるんですよ、きっと・・・(?)