先月26・27日の主要七か国首脳会議(伊勢志摩サミット)における世界経済セッションで日本の安倍首相は、エネルギーや食料などの商品価格がリーマン・ショック前後での下落幅である55%と同じであり、新興国に対する投資伸び率も同ショックよりも低い水準まで低下したことを表す「参考データ」を引用しながら、リーマン級の経済危機(Lehman-scale crisis)が迫っているとの現状認識を示しました。
で、これを受けた海外各国の反応ですが・・・どうも否定的・批判的なものが多いようです。各ニュースによると同サミットで英国のキャメロン首相は「危機とは言えない」そしてフランスのオラント大統領は「経済危機ではない」と述べたそうだし、仏ルモンド紙は「安倍氏は『深刻なリスク』の存在を訴え、悲観主義で驚かせた」と報じています。以前から安倍首相が大震災やリーマン級の劇的な事象が起こった場合は消費増税を延期する可能性を示唆していたことから、これを同延期の口実にしようとしているのでは?といった、いささかうがった見方をする向きも少なくありません。現に英FT紙は「世界経済が着実に成長するなか、安倍氏が説得力のない2008年(リーマン・ショックが起きた年)との比較を持ち出したのは、安倍氏の増税延期計画を意味している」と指摘したそうですが・・・
で、物議を醸した安倍首相の上記現状認識ですが、(まあ消費増税先送りの布石という意図もあるのかもしれないが、)今回ばかりは(失礼!)ズバリ的を射ていると考えています。世界経済はまさにリーマン級、いやそれをはるかにしのぐほどの危機発生の瀬戸際にある―――こう捉えるべきであり、日本をはじめとする各国はこれに備えるべきだということです。
「バブル生成と崩壊、そして過剰債務および過剰不良債権」―――わが国の政府が言及したリーマン級の危機の本質はこれに尽きます。このあたりは本ブログのあちこちで指摘しているとおりです。
で、いま、こちらの記事等で警告しているように、その世界的なバブルが全面的な崩壊の過程に入っているわけです。今次サミットで提示された商品価格の急落と新興国投資額の急減は、その一端を象徴するもの。この両者、つまり原油に代表される商品価格と支払い能力の低い新興国の国債等の価格は、妥当とされる価値水準からメチャ高いレベルにまで引き上げられていました。もちろんこれらだけではありません。米欧中の株式や債券、住宅や土地、はては絵画や骨とう品の類まで、この星の資産と名の付くものは何でもバブリー価格になっている・・・