(前回からの続き)
現在、米FRBの資産規模は約3.3兆ドル(5月時点)にまで膨れ上がっています。リーマン・ショック前から比べると、その拡大のペースはこの数年間で3倍以上になるほどの急速さです。そして、先日バーナンキ議長がQE3の縮小・終了時期の目途を具体的に示したとはいえ、FRBのバランスシートはこの先も増え続けることになります。これを数字にすると、FRBは現在1ヶ月当たり850億ドルの債券(米国債と不動産担保証券)を買っているわけだから、年内(6ヶ月)だけで約5千ドル、年明け後の半年は半分の2.5千億ドル程度としても、その資産はあと1年でさらに7千億ドルほど増加して、トータルでは4兆ドルを超えるレベルになると予想されます(これでもかなり控えめな見積もりかも?)。
それにしてもスゴイ膨張ぶり―――あらためてそう感じさせられます。たしかに現在のお金は紙だから無限に刷ることができるとはいえ、「通貨の番人」たる中銀のあるべき姿に照らせば、FRBのこの振る舞いは相当に異様なことのように思えるのですが・・・。なーに、ECB(欧州中銀)もBOE(英イングランド銀)も、そして日銀までも派手な量的緩和をやっているから大丈夫!? 中銀の節度なんてそっちのけ、「赤信号みんなで渡れば(インフレなんて)怖くない」のノリに思えてなりません・・・(黒田日銀もそのノリでしょうか)。
さて、そんなFRBのマネー乱発バズーカ砲で展開されてきたQE3。ご承知のとおり、低金利下での株高や不動産価格の上昇などの好影響(資産効果)を米経済にもたらしてくれてはいます。とはいえ、これ以上マネーをばらまくとさすがにマズイことになりそうだ、ということもあって、そろそろ幕引きの時間だよ、というアナウンスが先刻バーナンキ議長から流されたわけですが、はたしてこの先どうなることやら・・・。
先日の記事「日米株高『金融緩和相場』の危うさ」のなかでも書いたとおり、最大の懸念事項は何といっても景気回復のペースを超えるほどの金利上昇。その影響は早くも随所に現れています。
最も心配されるのは、株と並んで資産効果が期待されてきた米住宅市場の今後でしょう。住宅ローン金利は昨年終盤の3%台前半からすでに4%程度まで上昇してきています。これから先さらに金利が上がると、QE3によってせっかく活気づいてきた住宅市場がふたたび冷え込むおそれがありそうです。
当然ながら、その他のローン金利も上昇して米経済にダメージを与えつつあります。
たとえば現在、好調を維持するアメリカの自動車市場ですが、QEにともなう低金利環境のもと、常態化しているゼロ金利ローンによって下支えされている面があるとのこと。日経新聞によれば直近の米家計の自動車ローン残高はリーマン・ショック直前と同レベルの約8千億ドルにまで膨らんでいるそうです。そしてそれらの多くが不良債権化しつつあるもようです・・・。
住宅にしろ、自動車にしろ、その他のカードローンなどにしろ、アメリカではこれからの行き過ぎた金利上昇でローンの延滞や焦げ付きがさらに増えていくものと予想されます(いつか来た道・・・サブプライム・ローン問題とまったく同じ構造ですね)。これが資産効果に主導されるアメリカの景気回復に打撃を与えることは間違いなさそうです。
(続く)
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