甍の上で

株式会社創瓦 社長 笹原真二のブログです。

4月のマンスリー

2012-05-04 17:06:30 | Weblog
    「びんぼう神様さま」(高草洋子著)の話
 それまでのびんぼう神は、自分が来たことでその家が貧乏になってゆくのが楽しみで、貧乏への不平不満、愚痴を聞くのが大好きだった。ところが松吉の所へ来てから様子が違ってきた。松吉の家の田畑が山津波で流され、貧乏になっていく。ある時、女房のおとよが「とうとう布団が一枚しかなくなった」というと「そりゃぁええ!いつもくっついて寝りゃぁええでねえか」とますます仲良くなる始末。そして一粒種のうし松が生まれた。
 ある日のこと、松吉が「うちにも神棚をあげて神さんを祭ろう」と言い出した。おとよが、「うちにはびんぼう神さんしかおらんようじゃが、うし松が贅沢も言わんで喜ぶのは、もしかしたらびんぼう神さんのお蔭かもしれんねえ」などと言い出し、古材を拾ってなんともみすぼらしい神棚を作ってしまった。
 夫婦は「お蔭さんで、うし松も元気よう育って、贅沢一つ言うわけでもなく、稗も粟も栗の実一つ、ドジョウ一匹、うちじゃあみんな宝物です。これもびんぼう神さんのおかげです。これからもどうぞよろしゅうお願えします」と毎日、拍手を打った。今までのびんぼう神は、家の屋根裏から寝そべってその家が貧乏になっていくのを楽しんで見ておれば良かったが、こうして感謝されると神棚にちゃんと座っておらんといかんは、尻がむず痒うなって憂鬱になってきた。
 村のびんぼう神の集まりで「わしらみてえな、人を不幸にしかできない神さんちゅうのは、鬼と違うどげなことをする為に、この世におるんじゃろうか?」と問うてみたが答えは出ない。ならば長者どんの福の神どんに相談しようと長者どんの家へ向かった。「おや!松吉の家のびんぼう神どん、これからお前の家へ行くところじゃった。わしはもうこの家に嫌気がさしてのお・・・この家のもんときたひにゃぁ、次から次と慾かいた願い事は言うわ・・・願い事を叶えたら叶えたで、すぐに文句は言うわ、もううんざりじゃ。それにくらべてお前さんとこの松吉夫婦は、どげな些細なことでも喜ぶそうじゃなあ。そんな所におりゃぁ、神さん冥利というもんじゃて。ほんにちょうどええ!ここで入れ替わりゃ手間が省けるてもんじゃ」福の神がそう言うと「実はそうもいかんのじゃ。わしは今神棚に祭られとってのぉ、毎日、よろしゅうお願えします、ちゅうて拝まれとんじゃ」「びんぼう神が祭られとるいうんか?そんな話聞いたこともない!」そこでびんぼう神は今までのいきさつを話し、今自分がなんで神様と言われるのか、神様というのは人間に何をするのが神様なのかという悩みを打ち明けた。
「びんぼう神どんよ、実はわしもな、福の神と言われているものの、どうもこのごろどこの家に行っても、願いを叶えれば叶えるほど、人間の顔が妙にギラギラして、人相まで悪くなるような気がして、すっきりせんのじゃ」・・・
 「びんぼう神様さま」(地湧社950円)から抜粋。 物語には続きがあります。奇想天外です。是非、読んでみてください。 2012年4月28日 笹原 真二

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