甍の上で

株式会社創瓦 社長 笹原真二のブログです。

9月マンスリー 1

2011-10-02 22:00:56 | Weblog
     「ららら」の本が出た
「じまん」    小平市立第三小学校 4の1  寺本 ららら
足がわるいんだぞ
脳性マヒなんだぞ
友達がいるんだぞ
いっぱいいるんだぞ
私のクラスは こわいたんにんがいるんだぞ
しらがのたんにんがいるんだぞ
いいだろう

国語は得意なんだぞ
算数はにがてなんだぞ
算数はいつも60点だぞ
理科はキライだぞ
実験がめんどくさいからだぞ
いいだろう
ついでに すきな人もいるんだぞ
いいだろう

 8年くらい前、このエネルギーに溢れた詩と出会ったとき、身体中に電流が走ったような・・・そんな感動を覚えた。
元劇団ふるさときゃらばんの、作曲、演奏、美術を担当していた、寺本建雄さんと同劇団の元女優、祖父江真奈さんの一人娘、「寺本ららら」の本「ららら主義」(2006年からオーストラリアに単身留学、2009年3月2日までの珠玉のエッセイ集。現在、国立バララット大学留学中)が9月8日、マガジンハウスから発売された。
読んでの感想、面白い。ハーリーポッターより面白い。と言ってもハリーポッターは「賢者の石」しか読んでいないのだが、この「ららら主義」を読んでいるとその場面、場面の情景が浮かんでくるような、だから真奈さんに言った。「この本、ハリウッドに持って行けばそのまま映画になりますよ」って。すると真奈さん「誰が足の悪い役やるの?」「らららが女優やるんですよ。だって役者の子でしょ」と無責任な発言。でもそのとき、本当にそう思った・・・
「作家になりたいんだって」という真奈さんに「作家になって、今に、関口宏のサンデーモーニングの大宅映子の席に「ららら」は座りますよ。大宅映子のあとは「寺本ららら」しかいない」独断と偏見だが、その第一歩が踏み出されたと。本当にそう思っている。
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9月マンスリー 2

2011-10-02 21:59:16 | Weblog
 「ららら主義」から
涙の卒業式、その2      2008・10・23
 カフェテリアでメラニー・ステュアート以下同文フレンズときゃあきゃあ騒いでいたら、靴の音をカツカツと響かせて黒縁メガネに天然パーマすらりと長いおみ足の我らが校長、颯爽と登場
「ららら、水曜日の集合は何時だ?」
「夜7時にファウンダーズホールです。パーカー先生」
・・・1週間も前から、会うたびに同じことを言わせる。卒業イベントの中核を成すプレゼンテーション・ナイトの時間を忘れるほどニワトリ頭じゃないっていうのに、何回言わせるんだろう。教師というイキモノがよほど執念深いか、私の記憶力が信用されていないかのどちらかだと思った。聞かれるのが面倒になってきたから、2日前からはパーカー先生の顔を見るたび私の方から「ファウンダーズに7時!普通集合の30分前です」と先手を打つことにしていた。「よろしい」と一言言い残して足音が遠ざかっていく。何も悪いことはしていないのに抜き打ち検査を受けた気分だ。先生なんでそんなに必死なんだろう。そのくらいのことはずっと覚えてられるのに。
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9月マンスリー 3

2011-10-02 21:56:17 | Weblog
 国立バララット大学構内にある講堂ファンダーズホールにてプレゼンテーション・ナイト!バンド総出の卒業式!初めて来たとき私が感動しながら胃もたれを起こしたこの場所で、卒業生全員が舞台に上がって卒業記念、厚さ5cmの図録を貰う。とても大きくて重い図録。図書館にも閲覧用の資料として入っている。5年前に作られたものだ。創立者の顔写真、ハウスの名前の由来になった人たちの紹介も入っている。BCC「第5世代」集合写真も入っている。ひいひいおじいちゃんか、ひいひいおばあちゃんから数えて5世代ずっとBCCだという生徒を集めて5年前に撮ったものだ。同級生で同じハウスのウイット二―が写っている。若かりしパーカー校長の5年前の写真もばっちり収まっている。スーツに短パンを会わせる夏のファッションは変わらず。
 ところが今夜のパーカー先生は違った。真っ黒でフードの付いたローブを着ていたのである。フードの裏地だけが緑。イカ帽子とともに外国の卒業式の「お約束」になっているあれだ。やっばい。いつも以上に良く見えるよこの先生!
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9月マンスリー 4

2011-10-02 21:53:41 | Weblog
「ららら、来たか」「はい来ました」
 パーカー先生はひとつ頷いて、リハーサルを終えたばかりのバンド組とミュージカル組が未だわさわさしている会場内に私を連れていった・・・ステージまで連れていかれて、下手袖から真っ直ぐ上手を見る。一回予行演習をするから30分早く来いって言ったんだ。
「階段は平気?ここからあっちまで歩いていけそうか?」
「はい大丈夫です先生。なんとかなると思います。図録は重くて今は受け取れないので、あとで事務室に取りに行きますね」
 広辞苑の何倍も重い図録をひとりで持って歩くなんてできない、ありえないもん。別のところにとっておいてもらって11月の卒業試験の最終日にでも取りにいけばいい。少し寂しいけど、少しの寂しさで万事順調、円満解決。・・・だと思ったんだけど。
「記念品を受け取る時は、ハウスごと呼び出しをかける。アルファベット順に一列整列で並んで上がっていって、舞台を横切って列に戻り、最後の一人が上がるまでその場に立ってることになる。リースと一緒に上がりなさい。リースはCから始まる苗字で受け取りの順番が早いから、Tのらららが上がるまでにはたっぷり時間がある。いったん自分の受け取りを終えたらタイミングを見て抜けて、らららの所まで下りていかせるから。階段上がるときはリースに杖渡して手すりで上がってこい。一緒に歩いて、図録は彼に受け取ってもらい、上手まで行ったら、全員が立って整列している間、袖から椅子を引っ張ってもらって座ればいいだろう。リースには私から話しておく。君たち二人が一緒にステージに上がるのは、12年生の締めくくりにとても相応しいことだと思う」
「はい、ありがとうございます先生」・・・本番前から泣きそうになった。何と言ったらいいんだろう。どうしたらいいんだろう。ありがたすぎる。

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9月マンスリー 5

2011-10-02 21:49:36 | Weblog
 だって、自称一番の理解者の母でさえ、「卒業式は車椅子押してもらって上がりなさい。あのねぇ、舞台の端から端まで何メートルあると思ってんの!あんな長い舞台を横切って歩くなんて駄目!見に来てる親たちが心配するでしょうが!ハラハラさせちゃいけないよ、心配かけちゃ駄目だって」って言ったんだから。
 私も日本人だから遠慮深くて、失敗をたくさんした。今まで、自分がやりたいかどうかをいつもBCCで問われてきたのに、最後の最後にうちの親がこんなの?ふざけてる。「長いから歩くなって言うけど長いから歩きたいの!親が心配するって言うけど、親の卒業式じゃないの、私の卒業式なの!」べつにいいじゃん。心配したい人には勝手にさせとけば?本人は全然心配してないもん。ステージ歩くくらいできるって知ってて何で駄目って言うの?普段はもっと長い距離歩けってやかましいわりには筋が通ってない。私がどうしても自分の足で歩きたいって言ってるのに、醜くてかっこ悪い歩き方なんて誰も見たくない。迷惑がかかるって超日本人的なこと言うから「お母さんは障害者じゃないからわからないんだよ!」って泣きながら反論したら黙った。やったやった、勝った!お母さんが黙ったところなんて見たことなかった。だから、自分の気持ちをパーカー先生が知ってくれていたのは、本当にありがたく、嬉しかった。
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9月マンスリー 6

2011-10-02 21:47:52 | Weblog
ずっとこのことを考えていたから集合時間にあれほどうるさかったんだ。自分の記憶力が信用されてないわけじゃなかった。今更だけどやっぱり校長先生のほうが何枚も上手だった。私が歩くのは時間がかかるしリースも大変だろうな。大丈夫かな。でも、遠慮はしない。感謝はする。そう決めた。・・・
とはいえ、やっぱり本番でゴッドビヒアハウスが呼ばれたときは緊張した。・・・ABCクラークのC!リースは早々とステージに上がっていった。あぁどうしよう、私のためにまたすぐ戻ってこなきゃいけない。忙しい思いをさせて、ごめ・・・あぁ、これは言わない約束だった。同級生ひとりひとりがステージを横切る様子をじっと見つめていた。
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9月マンスリー 7

2011-10-02 21:39:49 | Weblog
「ららら?」
・・・気がつくと、腰をうんと低くして屈んだリースがいた。タイミングを見計らって壇上の自分の列から抜けて中腰のまま走ってきたんだろう。私の隣の席へ腰を下ろした。「ありがと、リース」と静かに囁き返すと、「いいって、大したことじゃない。ぎりぎりまで座ってろ、疲れるから」手を振ってくれた。大したヤツだ。ゴッドビヒアの列がだんだん短くなっていく・「行こ」スッと立ちあがってリースと隣同士に並ぶ。明るいステージの上。いつだってリースが半歩先を歩いている。ゆっくりしか進めないけど、ゆっくり進めばいい。カタカタと私の杖が鳴る。壇上の学園長としっかり握手して、リースが図録を受け取ってからまた半歩先へ下手まで辿り着いたとき、スッと椅子を出してくれた。・・・大きな拍手が起こった。小声で囁き合う。「いやー恥ずかしい俺」「私だって」。一瞬だけ目線を交差させて、もう一度しっかり、ありがとう、と言った。誇らしかった。リースの友情が嬉しくて、私たちの3年間が誇らしかった。リースがいなくちゃ、絶対過ごせなかった3年間。BCCでなきゃ、絶対過ごせなかった3年間だ。      (ららら主義 P176~P183 原文抜粋)
      2011年9月28日             笹原 真二

 追伸
 「ららら」のしなやかな強さとユーモアたっぷり、そして、時々、ドキッとするような・・・珠玉のエッセイです。
 是非、皆さん、「ららら主義」マガジンハウス本体 価格1143円 買って読んでみてください!面白いです。元気が出ます。そして友人、知人にも勧めてください!
 それから 高文研が発行している「娘の名前はららら」本体価格2000円
               文、祖父江 真奈  写真  英 伸三
 この本にエネルギー溢れる詩「じまん」が載っています。
 是非、これも買って読んでください!
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