甍の上で

株式会社創瓦 社長 笹原真二のブログです。

朝原選手の銅メダル

2008-08-29 21:19:52 | 陸上競技のこと
     北京五輪400mリレーの銅メダル 

 1991年、世界陸上東京大会において高野進(現東海大学准教授)が400mで7位に入賞した。短距離はマラソン、長距離(実業団チームが短距離に比べるとたくさんある)と違い世界に通用する種目ではなく高校、大学を卒業した後なかなか陸上競技を続けることがむずかしい種目だった。そんな中、高野がファイナリストに。当時、小倉城の敷瓦の仕事の手伝いに行っていた旅館の一室で感動しながらこのレースを見たことを今でも鮮明に憶えている。  
翌92年、高野はバルセロナ五輪400mで日本男子のスプリント選手としては1932年ロサンゼルス五輪100m6位入賞の吉岡隆徳以来60年ぶりの決勝進出を果たし8位入賞。日本人でも短距離種目で世界と戦えることを証明した。(女子では東京五輪80mハードル5位入賞依田郁子)
私が朝原宣治を知ったのは1993年彼が同志社大学時代100mで10秒19の日本新記録を出した頃だった。走り幅跳びでも8mを越え、世界で戦うには走り幅跳びに専念したほうがいいのではないかと思っていた。 
1996年のアトランタ五輪100m(準決勝進出)走り幅跳び(予選敗退)400mリレー失格。2000年シドニー五輪では100m、走り幅跳びで出場を逃すも400mリレー6位入賞。末続慎吾の暴れ馬のような走りが印象に残った。日本短距離陣が変わっていくのを感じた。それは91年、東京の世界陸上から、高野進から始まっていたような気がした。
朝原は2001年からは100mに専念する。32歳で出場した2004年アテネ五輪100m(準決勝進出)400mリレー4位入賞。翌2005年のヘルシンキ世界陸上に出場。2007年9月に開催される地元大阪での世界陸上を最後に引退すると宣言をしていた。その大阪100m1次予選で10秒14をマーク(昨シーズン日本ランク1位)準決勝で敗退したものの400mリレーで38秒03の日本新記録で5位入賞。誰もが「まだやれる。北京まで頑張ってほしい」と思ったのでないかと思う。そして10月、現役続行を表明。
8月22日、36歳で挑んだ北京オリンピック400mリレー決勝1走塚原直貴、2走末続慎吾、3走高平慎士、アンカー朝原宣治で3位銅メダルを獲得した。スタンドでは日本の選手たちが。その中で為末大が男泣き。
過去にオリンピック3度、世界選手権に6度出場し100mにおいて5回の準決勝進出している朝原も、400mハードルの為末大(2001年エドモントン世界陸上3位、2005年ヘルシンキ世界陸上3位)末続慎吾(2003年パリ世界陸上200m3位)のようなメダルには縁がなかった。しかし今回4回目のオリンピックで3位。アメリカ、イギリスが予選で失格したという日本にとって幸運が作用したことはある。しかしこの幸運を含めてメダルを引き寄せたのは朝原がトップ選手として日本短距離界を牽引してきた17年間があったからではないだろうか。    
 短距離種目の表彰台にはジャマイカ、アメリカをはじめ黒人のオンパレード、その中で体格の劣る日本チーム。だから、よけいに彼らが誇らしく感じられた。
  400mリレー決勝 直後のインタビュー
 ぶっ飛んでやった
塚原 直貴 最高です。立役者の一人になれて良かった。最初の僕が動けばレースが動くと思い、末続さん目掛け、ぶっ飛んでやった。足の状態が思わしくなくて苦しかったが、この場に立てて、表彰台にも上がれて良かった。
 夢の中
末続 慎吾 みんなの力を合わせてと思って挑んだ。日本の短距離が先輩方から培ってきた歴史を足してここに行き着くことができた。もう夢中で夢の中でした。今後の競技人生に大きな影響を与える戦いだった。
 言葉にならない
高平 慎士 言葉にならないくらいうれしい。朝原さんと同じ舞台で走れるのは最後かもしれないので気持ちよく走ってもらえればいいと思った。夢はかなうと証明できて良かった。熱いものを持って走れたと思う。
 最高に気持ちよかった
朝原 宣治 最高の舞台で最高に気持ちよかった。走りたくて仕方なくて夢のような空間を走った。体がどこまでいけるかわからなかったが、絶対出来るという気持ちで走った。アンカーの重責もあったが、楽しむ気持ちを忘れずに走った。これまで走ったすべてのリレーメンバーに感謝し、それで取れたメダルだと思う。世界と戦えることを証明できた。 
そして朝原は「夢のような、漫画のようなストリーですね」と表現したいう。
朝原は高校時代、大学時代、「いかに楽して強くなるか」ということばかり考えていた。「しかしそんな方法は絶対存在しないわけです。トップの選手はトップになるにふさわしいトレーニングをこなしています。単純に量をたくさんこなしているということではないのです。質の良いことを、効率良く、ムダなくやっているのです。ムダが多いのはダメです」(朝原)そんな17年間をすごしてきた朝原に神様は銅メダルをプレゼントしたのではないかと思う。
我々も「夢のような、漫画のようなストリー」をと思う。しかしその陰にある「大切なもの」を忘れてはならないと改めて感じている。
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鹿島槍ヶ岳紀行

2008-08-06 20:51:01 | 山のこと
     鹿島槍ヶ岳
 7月24日、東京で全瓦連での会議終了後、17時新宿発あずさ25号で松本まで、大糸線に乗り継いで21時過ぎ信濃大町へ。七倉荘という旅館へチェックイン。明日のトレッキングの為のお茶、飴を近くのコンビニで調達。
 翌25日早朝6時、信濃大町の駅で芳井山楽会(今回、私を含む男7、女6の13名参加平均年齢60?歳)のバスに合流。扇澤出会いの登山口へ。8時半前、登山届を出して出発。暑い中、屋根の上で仕事をしている皆のことを思うと申し訳ないような気持と一緒に歩き始めた。
15分もしないうちに昨年の甲奴神社の仕事の時、お世話になった塩田さんが異常発汗、顔色が悪くなる。スポーツ飲料と救心(薬)を飲んで少し休む、夜走りのバスで睡眠不足の様子。木立の中は心地良いが、日が差すところはけっこう暑い。その後、塩田さんは良くなったが、今度は会長の馬屋原さんの様子がおかしい、行程のちょうど半分くらい?な所で突然嘔吐。睡眠不足の上に車中でのお酒が残っていたのか?・・・ここで若い私(50歳)の出番、馬屋原さんのリュックサックを私のリュックの上に載せて歩く。
山はいい。行く人が皆、「こんにちは」「お疲れです」「もう少しですよ。頑張ってください」・・・と声を掛けう。途中、幼稚園の年長さんの女の子とお父さんの二人連れに追い越される。地元の大町中学校の2年生130人のグループが下山。山楽会のご婦人方は彼らとハイタッチしながら「元気をもらった」とはしゃいでいる。中学生は男の子も女の子も元気のいい子もおとなしそうな子も、皆笑顔で挨拶してくれる。そんな一期一会がいい。
平井君のお母さんが3時間半で登った種池山荘(2450m)まで6時間かけて14時過ぎに13人全員無事到着。(標高差1100m)その頃から雨が。
17時に夕食を取る、山小屋の食事は質素だがおいしい。夕立のため日の入りを見ることは出来ず寒い夜となった。楽しみは星空を見ること。今夜は無理かなと思いながら、雑魚寝の床につく(20時15分全館消灯)。12時頃?目が覚めた。ヤッケを着て外へ。「ラッキー」なんとお月様も出て満天の星、目の高さに星がある。私が出て2分もしないうちに大きな流星が落ちた。
26日3時過ぎ起床。朝食と昼食の弁当と昨日もらった水1ℓをリュックに詰めて4時過ぎ出発。寒い夜明け前の暗い道。これがまたいい。爺ケ岳(2670m)へ。宿泊する冷池山荘(2410m)に着いたのが8時。 
大きなリュックはここで預かってもらって鹿島槍ヶ岳(2889m)へ。山頂は霧がかかっている。布引岳(2683m)への途中で西の霧が切れていくと後立山連峰が突然開けてきた。それもつかの間またすぐ隠れてしまう。布引から鹿島槍の尾根伝いは西風が東側で発生した霧を止めている。登山道の東は霧で視界ゼロ、西には後立山連峰を見渡すことができるいう不思議な風景だ。
鹿島槍ヶ岳南峰に到着しても霧は立ち込めたまま。展望は開けない。そんな中、若い私一人が北峰へ。30分くらいの行程、岩場を霧がさらに覆ってくる山頂に上がったものの誰一人としていない。視界は30m。初めての山で深い霧、これがまたいい。心細くなってくると同時に山のふところに抱かれているようで何とも言えない感覚だった。
夜10時過ぎに目が覚める。外は満天の星、天の川が広がっている。東南の方角から稲光が空を一瞬明るくする。「東京あたりが大夕立になっている」という話を聞く。山楽会のメンバーを起こして星空ツアーへ庭に出る。この日も見事な流星が。2日連続であんな大きな流星を見ることが出来るなんて本当に運がいい。
そして今日、温かい朝食を取った後下山。5時25分出発、20分も歩いたであろうか、爺ケ岳北峰の尾根に出た時、後立山の霧の中に自分の影(ブロックン現象)が。近くにいた70歳過ぎくらいの単独行のおじさんが「40年山に来ているけど3回目、皆さん運がいいよ。ブロックン現象は幸せの予兆」と話してくれた。
3合目くらいまで下りた頃、あれだけ姿を見せてくれなかった鹿島槍ヶ岳が木立のすきまから少しだけその雄姿を見せてくれた。「また来いよ。」と言ってくれているかのように。
   2008年7月27日           笹原 真二

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