なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

大腿骨転子部骨折

2023年04月20日 | Weblog

 火曜日の昼頃に外来の診察室から、救急隊が患者さんをストレッチャーに乗せて出てきた。

 外来の看護師さんに訊くと、大腿骨頸部骨折の75歳女性だった。家族の車で来て整形外科の外来を受診したそうだ。さすがに病院に到着してからは、車椅子を使用していた。

 当院では外科手術はできないので、地域の基幹病院整形外科に搬送になった。最近は先方の病院に空きベットがないので、当院入院で経過をみて、手術予定日直前に転院ということもあった。直接入院できればそれに越したことはない。

 X線で確認すると、単純X線でもよくわかる右大腿骨転子部骨折があるが、あまりズレていない。これだと頑張れば歩けるのだった。

 

 当方の叔母も大腿骨頸部骨折を来して、自分でタクシーに乗って整形外科クリニックを受診した。診察した整形外科医も驚いていたそうだ。

 

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汎血球減少症

2023年04月19日 | Weblog

 4月18日火曜日午前中の救急当番の時に、追突されたという70歳男性が搬入された。

 軽自動車を運転していて、右折しようと減速したところに、後ろからトレーラー車が追突したのだった。意識は清明で、自力歩行できている。

 右後頭部にこぶ(皮下血腫)ができて、その頂部から出血があったが、ほぼ止血していた。右側胸部というか、右腋窩近くの胸部を痛がっていた。シートベルトが当たる部位だった。エアバッグは作動していない。

 当院でも対応できそうと思われて引き受けたが、画像検査の結果をみないとわからない。肋骨骨折くらいなら大丈夫か、と思った。

 頭部CTで頭蓋内出血はなかった。年齢を考慮しても少し脳委縮が目立つかもしれない。頸部から腹部までのCTも行ったが、肋骨骨折や血気胸はなかった。

 鎮痛薬を処方して帰宅できる。状況的にはむち打ち損傷が起きる可能性があるが、後頚部痛は訴えなかった。少し経過をみてから、被害者であり診断書を要するので、整形外科の外来で出してもらうことにした。

 

 念のため血液検査も提出したが、汎血球減少症があった。白血球1600・Hb 9.0g/dl・血小板8.7万だった。2017年の記録があり、白血球は2000台、Hb11g/dlだった。5年間の間に変化してきたのだろう。

 白血球分画は、好中球24.3%・リンパ球33.5%・単球41.3%と単球増加が目立った。骨髄異形成症候群(MDS)か単球性白血病が疑われる。

 5~6年前に急性心筋梗塞で地域の基幹病院で心カテ(PCI)を受けたらしい。現在は市内の内科クリニックに通院して、抗血小板薬を継続している。

 そのクリニックでも血液検査の異常を指摘されて、専門病院への紹介を勧められたそうだ。クリニック宛に今回の交通外傷と汎血球減少症の結果を記載した診療情報提供書を出した。

 配偶者はいないが、同居している女性がいる。患者さんは重度の難聴があり、認知力に不安があるので、その方に説明した。

 

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ステロイドが効く病気

2023年04月18日 | Weblog

 先週の金曜日に内科の別の先生から相談された。患者さんは下肢の蜂窩織炎として入院した64歳女性で、発熱と炎症反応の上昇が続いていた。入院したのは3月23日で約3週間になる。

 下肢蜂窩織炎といっても、入院した時はもう少し発赤・腫脹があったのかもしれないが、その時点では両側下腿遠位から足背にかけての紫斑の集簇だった。喘鳴もあるが、喘息としての治療はしていなかった。

 

 経過としては、昨年8月に左蜂窩織炎として入院したところから始まる。3月まで在籍した内科の若い先生が担当していた。抗菌薬投与で蜂窩織炎は軽快したと判断されていたようだ。

 右肺下葉背側に浸潤影様・腫瘍様の陰影があり、当院から地域の基幹病院呼吸器内科に紹介して転院となった。診療情報提供書の返事はどうも来ていないようで、詳細はわからない。患者さんの話では軽快してそのまま経過観察になった?という。

 その時の下肢の所見を訊くと、両側の病変だが左側が目立ったということらしい。その時から紫斑の散在はあったともいう。そしてそのころから喘鳴が続いていた。

 若い先生は血管炎も疑ったらしく、MPO-ANCAとPR3-ANCAを提出していたが、両者とも陰性だった。

 

 今回蜂窩織炎として抗菌薬を投与していたが(今回ははっきりした紫斑だが)、軽快していない。皮膚科医に相談したところ、膠原病ではないかといっていたそうだ。最初に聞いた時は、IgA血管炎かと思ったが、IgA値は正常域だった。

 喘息を伴う血管炎となると、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)だが、どうだろうか。

 喘息はあるが、好酸球増加症が昨年の入院時も今回もなかった。肺浸潤影があり、血管炎に起因すると考えられなくもない。(今回浸潤影は昨年より縮小していた)

 入院時に喘鳴がひどかったので、喘息としてステロイド(デキサメサゾン4mg)が1回だけ投与されて、その時だけ解熱して炎症反応が軽快していた。ステロイドが効く病態ということはわかる。

 

 リウマチ膠原病外来(月に2回)に来ている大学病院の先生と相談してもらうことにした。電話で連絡すると、検査の指示が出て、バイトで来た時に診てもらうことになった。

 

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猫に引っ掻かれて腫れた

2023年04月17日 | Weblog

 49歳女性が、4月6日に飼い猫に両手(右手背と前腕遠位、左手背)を引っ掻かれた。4市内の整形外科クリニックを受診して、創部処置と抗菌薬(セフカペンピボキシル=フロモックス)の処方を受けた。

 4月8日になって、右手かた前腕全体の発赤・腫脹があり、当院へ紹介された。土曜日で、その日初めて日当直のバイトに着ていた若い内科医が診察した。右手の2か所に対して、左手は9~10か所も引っ掻かれているが、左手は熱感・腫脹・発赤はなかった。

 受診時に発熱はなく、自宅でも少なくとも高熱はなかった。血液検査で白血球9900・CRP12.4と炎症反応の上昇を認めた。入院で抗菌薬点滴静注を行うことになった。血液培養2セットが提出されて、スルバシリン(ABPC/SBT)3gを1日4回投与が開始された。(担当はその日内科当番だった別の先生)

 4日目に右足関節痛が出現して、2日間の発熱といったん軽減したCRPの再上昇を認めたが、その後は発熱はなくなり、炎症反応も軽快している。

 

 プラチナマニュアルによれば、ネコひっかき病cat scratch disease(CSD)だと、菌はBartonella henselae。(唾液中にも菌がいる)CSDは自然治癒するが、アジスロマイシン(AZM)500mgを3日間使用とある。

 イヌ、ネコの咬傷だと、菌はPasteurelka multocidaで、抗菌薬はアンピシリン/クラブラン酸(AMPC/CVA)、ドキシサイクリン(DOXY)、レボフロキサシン(LVFX)。口腔内嫌気性菌の混合感染になるので、実際はAMPC/CVAやABPC/SBTを用いることになる。

 この患者さんは手荒れがひどく、ネコが保菌している菌の問題か、蜂窩織炎としての菌(連鎖球菌、ブドウ球菌)によるかわからない。後者?。

 

 今回初めて日当直のバイトに来てくれた先生は、普段は東京都内の超有名病院で内科専攻医をしている。土日の入院指示を入れてくれていたので、入院の主治医となった先生は月曜日から診ていた。

 入院の許可をもらうのに電話連絡が来ただけで会ってはいないが、電話の感じもよく、対処もしっかりしていると褒めていた。

 (血液培養は2セットとも陰性だった)

 

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脳出血

2023年04月16日 | Weblog

 先週の木曜日(4月7日)に脳出血(後遺症)で入院していた90歳女性が亡くなった。入院したのは2021年12月で、1年3か月入院していたことになる。

 隣町の山間部でひとり暮らしをしていた。訪問したヘルパーさんが倒れているのを発見して、救急要請した。地域の基幹病院に救急搬入されて、頭部CTで脳出血を認めた。

 意識は昏睡状態で、回復の見込みはないと判断された。すぐに当院に転院の依頼が来て、1週間後の12月21日に転院してきた。脳外科からの診療情報提供書には、DNARの方針となっていて、末梢静脈からの点滴を継続して看取りをお願いします、となっていた。

 東京に住んでいる息子さんは、葬儀に備えて自宅の整理をしている、と言っていた。兄はすでに亡くなっていて、義理の姉(兄の妻)とは折り合いが悪いらしく、自分が全部取り仕切る、とも言っていた。

 ただ高齢者で脳委縮・脳室拡大があると、頭蓋内に占拠性病変が出現しても案外持ちこたえる。意識障害は変わらなかったが、バイタルは安定していた。

 2022年になってからの頭部CTでは、脳出血はほとんど吸収されて、圧排は解除されていた。

 末梢静脈からの点滴か、高カロリー輸液か、経管栄養かの選択になる。息子さんとの相談の結果、高カロリー輸液で経過をみることになった。意識はなくとも生きている方が、ということだった。

 そして感染症の発症や、脳血管障害の再発で悪化するかと思われたが、案外安定して過ごしていた。息子さんは当地にはあまり来なくなり、病院の支払いが滞ったこともあった(遅れて支払っていた)。

 

 昨年の後半になって、息子さんが何か月も病院に来なくなり、連絡も取れない時期があった。後でわかったのだが、息子さんは腎機能の悪化からの緊急透析で入院していた。その後、維持透析になってから、連絡がつくようになった。

 仕事はできなくなっていた。病院の支払いも3か月以上未払いとなり、経済的にはかなり厳しいのだろうと思われた。改めて母親の治療について相談して、点滴は当然継続するが、末梢用の点滴に切り替えて経過をみることになった。

 それでも2か月持っていたが、緩やかに下降線をたどり、静かに亡くなった。週3回の透析なので、当地に来てもまたすぐ戻るようになる。葬儀・火葬の段取りをつけて、3日後に病院に引き取りに来た(日曜日だったので、その日は会えなかったが、電話では何度も話していた)。

 

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頭蓋内出血~転倒の原因?

2023年04月15日 | Weblog

 4月11日火曜日の午後0時半すぎに、救急隊から搬入依頼が来た。歩道上に倒れていた70歳男性を通行人が発見して救急要請してくれたそうだ。

 会話は可能だが、立てないようだという。救急隊員との会話が聞こえてきた。四肢の麻痺の有無を訊いたが、それはなさそうだ。来てもらうことにした。

 この方は一人暮らしで、離婚歴があった。子供はいるが、他県(関西)にいる。兄弟は隣の県に居住していた。民生委員がかかわっているが、その日は出かけていて来られないので、ふだんの様子はわからない。(後で今年は会っていないという親族の方が来ていた)

 

 搬入時、普通に会話は可能だった。生年月日と名前ははっきりと言える。ただ年齢は訊くと、答えられなかった。当院の名前の知っている。4月はわかるが、何日まではわからないという。(答える時に妙にハキハキした印象があり、元自衛隊員だった)

 朝起きて、朝食をとったことは覚えているが、何故外出して道路を歩いていたのかはわからないという。倒れた時のことも覚えていない。年齢の割に脳室拡張があり、前頭葉が萎縮しているように見える。認知力低下がもともとあった?。

 四肢の麻痺はない。運動調節障害(運動失調)もなさそうで、立てないわけでもないようだ。頭痛があるが、それは左後頭部のこぶ(皮下出血)のところだった。

 バイタルは血圧が240/170mmHgと著しい高値だった。高血圧を指摘されていたらしいが、治療は受けていない。頭蓋内疾患のためか、逆に高血圧性脳症なのか。

 点滴を入れて血液検査を提出して、頭部CTを行った。左後頭部の対側である右前頭葉にクモ膜下出血と脳挫傷疑いの所見がある。MRIは予約の検査が続いているが、待っていればできると言われた。

 いったんは脳外科のある病院で診てもらいたいが、このくらいだと保存的にみるだけなので、むずかしいかもしれない。救急室に戻って、ルーチン検査として心電図をとると、V1-3でSTが上昇していた。3-4mmの上昇なので、有意と思われる。ただ胸痛は何度聞いてもなかった。

 血液検査でトロポニンIとCK-MBが軽度に上昇していた。急性心筋梗塞の発症が疑われた。無痛性?。そもそも急に倒れた原因がわからないが、心臓発作なのか。心電図モニターでは正常洞調律で不整脈は認めない。

 

 地域の基幹病院の循環器内科に連絡して事情をお話した。心電図を送ってくださいということで、地域医療連携室からFAXしてもらった。

 MRIが空いたので頭部MRIも行った。薄く右硬膜下血腫もできていた。陳旧性のラクナ梗塞と微小出血の所見もあった。

 循環器内科から地域医療連携室に患者さんを搬送するよう指示が来て、救急搬送となった。循環器内科と脳外科のある病院の扱いとなってほっとした。急性期を過ぎて療養入院が必要な時はこちらで引き受ける。

(著しい高血圧で、治療としてはニカルジピンの静注だけ行った)

 

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肝細胞癌破裂

2023年04月14日 | Weblog

 低血糖で救急搬入された78歳男性は、昨年5月に肝細胞癌と診断されていた。

 2週間前からの心窩部痛で受診して、新患担当の先生(大学病院からバイト)が最初に診た。CTで肝臓表面に液体貯留があり、肝内には肝細胞癌と思われる腫瘤が腹痛あり、破裂が疑われた。

 肝細胞癌の破裂だが、腹腔内に広がるのではなく肝表面の被膜下でとどまったらしい。とどまっているが、いつ腹腔内に広がるかわからない。

 消化器科医に相談された。2週前からの症状なので緊急性はないと判断したのだろうか。5月ゴールデンウィークの中日だったので、大学病院への入院が困難だったのかもしれない。

 外来で上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査、腹部MRIを行って、連休明けに大学病院の外来を受診としていた。大学病院でも即入院ではなく、入院予約になった。 

 大学病院消化器内科に入院して肝動脈化学塞栓療法が行われ、その後は外来で分子標的治療が継続されたのだった。この患者さんはB型肝炎・C型肝炎は陰性で、原因はわからない。

 こんな形の肝細胞癌破裂は初めて見た。

 

 この患者さんは、膵管内腫瘍で膵体部切除の既往もあった。珍しい既往をいくつも持っている患者さんで、名前も当県内では見たことのないものだった(他県出身)。

 

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夜間低血糖

2023年04月13日 | Weblog

 4月7日金曜日に、低血糖の78歳男性が救急搬入された。救急隊からの連絡では、他院に糖尿病で通院していて、インスリン注射を行っているそうだ。救急隊到着時に血糖測定して、43mg/dlだった。

 血管確保できないので、グルコース注はできませんという。会話は可能ということで(10分で病院まで来れる)そのまま来てもらったが、家庭にある砂糖を摂取してもらった方がよかったかもしれない。

 搬入時、ぼんやりした印象はあるが会話可能だった。血糖は53mg/dl。グルコース入りの点滴を開始して、50%グルコース20mlを静注した。

 娘さんと二人暮らしで、その娘さんが付いて来ていたので話を聞いた。同じ部屋に寝ているそうだ。午前4時ごろに様子がおかしいのに気づいた。呼びかけると返事をするが、手を口に入れるような動作をしていた。どうしてそんな動作をするのか訊いても答えなかった。そのまま2時間くらい様子をみていたが、変わらないために救急要請したのだった。

 前日の午前5時ごろにも同様の症状があったが、休ませていたら回復したという。3月半ばの早朝にも同様の症状があった。

 グルコース注射後30分には血糖が127mg/dlで、ぼんやりした様子はなくなり、たぶんふだんと同じくらいに会話ができるようになっていた。顔色も赤みがかってきた。上肢・下肢は普通に動く。さらに1時間後の血糖もほぼ同じ値だった。

 

 お薬手帳を見ると、ヒューマログミックス25を朝に30単位、夕に20単位になっている。経口血糖降下薬はSGLT2阻害薬のジャディアンス10mg1錠朝が出ていた。

 患者さんにインスリンの種類を訊くと、さらに就寝前にトレシーバ10単位皮下注もしているという。ミックス25朝夕にトレシーバを併用というのは聞いたことがない。(昼にヒューマログ注を昼食分として入れるのはある)

 患者さんの記憶違いかと思った。通院しているクリニックに問い合わせるとFAXが送られてきた。確かにヒューマログミックス25朝夕に加えて、トレシーバを就寝前に注射していた。

 糖尿病手帳を見ると、HbA1cが昨年6月は7.0%だった。8月は6.4%になり、9月から現在までは5.4~5.9%と下限値を大幅に下回っていた。夜間低血糖が続いていたと推定される。

 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標としては、75歳以上で認知機能正常かつADL自立でも、インスリンやSU薬など低血糖をきたす処方があれば、下限値は7.0%になる。単純にまずトレシーバを中止すればいいのではないか。

 外来の点滴室で経過をみて、昼食を食べてトイレ歩行もできるようになったので、帰宅とした。その日は通院しているクリニックに行くつもりだったというので、診療情報提供書にインスリン減量はいかがでしょうか、と記載した。

 

 娘さんの話では、昨年肝細胞癌になってから血糖が下がるようになったという。昨年5月に心窩部痛で当院新患を受診して、肝細胞癌と診断されていた。それは、これまで経験したことのない病状を呈していた。(続く)

 

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葬儀社の案内看板

2023年04月12日 | Weblog

 病院に来る時に車で通る国道に、葬儀社の案内看板が出るところがある。外来に通院している患者さんの名前があった。

 糖尿病・高血圧症で通院している84歳男性だった。アルツハイマー型認知症で脳神経内科の外来に、前立腺肥大症で泌尿器科外来にも通院している。

 5年前に血清PSA軽度上昇と前立腺MRIで前立腺癌が疑われた。泌尿器科医(非常勤)が地域の基幹病院泌尿器科に前立腺生検目的で紹介したが、高齢(当時79歳)と認知症のため生検はしないことになっていた。

 

 1月末に労作時の息切れを訴えて外来を受診した。いつもは妻だけが診察室に入って来るが、その日は娘さんも入ってきた(ふだんから車で送り迎えをしていたのだろう)。

 発熱はなかった。酸素飽和度が92%(室内気)と低下していて、両下肢の浮腫もある。胸部X線で両側胸水貯留があり、心電図ではそれまでになかった心房細動を呈していた(以前は洞調律)。

 胸部CTで確認すると、両側胸水貯留があるが、溜まり方が少し不規則で胸膜炎かもしれない。心嚢液貯留も少しある。胸水に接して無気肺になっていて、肺野に淡い陰影も散在している。CRPは2.0と出来上がった肺炎としては低かった。(BNP177)

 肺炎・心不全で、呼吸器内科なのか(肺炎・胸膜炎?)循環器内科なのか(心不全+肺炎併発)迷ったが、心房細動が新たに出現したことからも心不全を優先して考えた。

 認知症もあるし、当院入院で治療するしかないと思ったが、地域の基幹病院に相談してみることにした。循環器内科に連絡すると、若い先生が出て受けてくれた。急性期の治療が終わったらすぐに引き取ります、と伝えた。

 

 カルテを確認すると、搬送後の2月に基幹病院入院中のため脳神経内科の外来予約をキャンセルの記載があり、3月には療養型病床のある病院に入院中のため、内科と泌尿器科の外来予約をキャンセルの記載があった。

 ということは、基幹病院での治療で軽快→療養型病床のある病院に転院→入院中に亡くなった、という経緯なのだろう。急性期の治療が終われば普通は当院に転院依頼が来て、すぐに転院してもらっている。家族が当院への転院を希望しなかったのだろうか。

 基幹病院からの返事が来ていないので詳細不明だが、経緯を問い合わせるのも躊躇われる。

 

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腰椎圧迫骨折

2023年04月11日 | Weblog

 4月6日木曜日に病棟のベット表を見た時に、外来通院している66歳男性が整形外科に入院しているのに気づいた。

 10日前から特に誘因がなく腰痛が出現して動くのが困難になった。整形外科外来(新任医)を受診して、家庭の事情もあり、入院を希望したのだった。

 腰椎圧迫骨折は、腰椎単純X線だと良くわからないが、腰椎MRI脂肪抑制T2強調画像だと良くわかる。(CTだと新旧の鑑別が難しいが、MRIだとそれもわかる)

 

 内科にはパーキンソン症状+認知症で通院している。家族は、施設で介護の仕事をしている40歳代の妻と妻の母親(車椅子使用)だった。

 2年前に内科の新患を受診して、外来担当の若い先生(卒後3年目の終わりごろ)から相談された。いつからか正確にはわからないが、少なくとも2年以上前から四肢の動きが悪くなり、仕事ができなくなっていたそうだ。その間、病院を受診していなかった。

 動きが悪くなってきても受診しなかったというのは、認知力低下があったと思われる。やっと受診させた家族の対応もよくわからないが。

 四肢の動きが悪いのは麻痺ではなく、運動調節障害でパーキンソン症状の無動(寡動)だった。筋強剛と振戦もあった。認知力低下があり、それが先行したが、少なくともパーキンソン症状と同時期に進行していたらしい。

 幻視と睡眠時の異常もあった(大声で叫ぶ+行動異常も)。パーキンソン病で認知量というよりは、レビー小体型認知症が疑われた。

 パーキンソンを伴う患者さんはうつ状態の印象があり、この患者さんもそういう印象はある。それとは別に、のらりくらりという感じで、もともとの性格的なものと思われる反応の仕方があった。

 脳神経内科医に相談したが、そののらりくらりが気に入らなかったらしく、「内科で診てよ」となった。(割とありがちな対応ではあった)

 睡眠時の行動異常に対して、一時的にクエチアピンを使用したが、その後は不要となった。クロナゼパムだけでいいと、家族から言われた。

 少量のレボドパ製剤だけで動きは良くなっていた。不安定さはあるが、自力歩行で通院していた。認知力障害があり、通院時は、仕事を休めない妻の代わりに、妻の母親がいっしょに来ていた。

 身体的には良い患者さんが、身体的には良くないが頭はしっかりしている妻の母親の車椅子を押して受診するという、不思議な受診形態だった。

 

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