低血糖で救急搬入された78歳男性は、昨年5月に肝細胞癌と診断されていた。
2週間前からの心窩部痛で受診して、新患担当の先生(大学病院からバイト)が最初に診た。CTで肝臓表面に液体貯留があり、肝内には肝細胞癌と思われる腫瘤が腹痛あり、破裂が疑われた。
肝細胞癌の破裂だが、腹腔内に広がるのではなく肝表面の被膜下でとどまったらしい。とどまっているが、いつ腹腔内に広がるかわからない。
消化器科医に相談された。2週前からの症状なので緊急性はないと判断したのだろうか。5月ゴールデンウィークの中日だったので、大学病院への入院が困難だったのかもしれない。
外来で上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査、腹部MRIを行って、連休明けに大学病院の外来を受診としていた。大学病院でも即入院ではなく、入院予約になった。
大学病院消化器内科に入院して肝動脈化学塞栓療法が行われ、その後は外来で分子標的治療が継続されたのだった。この患者さんはB型肝炎・C型肝炎は陰性で、原因はわからない。
こんな形の肝細胞癌破裂は初めて見た。
この患者さんは、膵管内腫瘍で膵体部切除の既往もあった。珍しい既往をいくつも持っている患者さんで、名前も当県内では見たことのないものだった(他県出身)。