なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

親子で膵癌

2018年07月11日 | Weblog

 昨日内科医院からの紹介で、軽費老人ホームに入所している76歳男性が内科新患を受診した。当院とは診療圏の違う医院で、通常は一番近い地域の基幹病院に紹介しているはずで、当院への紹介は珍しかった。

 妹さんが患者さんを連れてきたが、患者さん自身は脳出血後遺症があり、問いかけないと自分からはしゃべらない(もつれたしゃべり方だった)。先々月ごろから諸局が低下して体重が減少していた。両下肢はやせ細っていた、到底歩行はできない。入所しているホームの対象ではなく、もっと介護度の高い施設に入所する必要があった。ふだんは医院で糖尿病と高血圧症の処方を受けている。病院への紹介は妹さんの希望で、先生が紹介状を書いたという経緯らしい。

 アスベスト肺があり、基幹病院の呼吸器内科で定期的にフォローされていた。糖尿病もそこの糖尿病科で診ていて、ホームに近い医院に紹介していた。食欲低下の精査で上部下部内視鏡検査依頼なので、当然基幹病院の消化器内科への紹介になるはずだが、家族側の事情があった。

 患者さんの90歳代の母親が膵癌で、基幹病院消化器内科でフォローされていた。現在は妹さん宅に同居している。担当の先生は優秀な先生だが、病状説明をビシビシとされるので怖い(?)のだという。それで患者さん(兄)の精査は当院を希望したという経緯だった。

 上部消化管内視鏡検査はできるが、下部の検査は入院して前処置をしないと難しそうだ。内視鏡検査をすること自体ためらわれるような体力低下だった。

 まず血液検査と腹部エコーを行った。腫瘍マーカーはCA19-9が1422、CEAが5.4と上昇していた。腹部エコーで特に異常は指摘できないが、膵臓は膵頭部しか描出できない(消化管ガスの問題)。腎機能は異常なかったので、造影CTを行った。

 膵尾部に不整な腫瘤様陰影が描出されて、膵(体)尾部癌と診断された。放射線科の読影レポートでは脾静脈への浸潤も指摘された。腹水や肝転移はなかった。やせていて、消化管の読影は難しいが、明らかな消化管癌は指摘できない。

 胸部CTでは両側肺の病変(アスベスト肺)も結構なものだった。認知力低下・筋力低下もあり、とても膵癌の手術や化学療法の適応になるとは思えない。しかい当院で(当方が)説明しても納得してもらえないので、専門病院の先生の意見を訊いてみることを勧めた。

 がんセンターまで行くのも難しいということで、やはり一番近い基幹病院の消化器内科に行ってみることになった。妹さんは、兄もひょっとしたら母親と同じ膵癌では思っていたそうで、がっかりされていた(涙ぐんでいた)。

 

 

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