4月22日(月)にふだん高血圧症で通院している87歳女性が、1週間前からののどの痛みと食欲不振・体重減少(3kg)で受診した。
のどといっても前頸部を指さした。触診しても指さしたところに圧痛はなく、鎖骨直上の左右に少し圧痛があるかどうかというくらいだった。
嚥下痛はなく、咽頭の発赤はなかった。鼻汁・咳はない。発熱は体温測定していないというので、わからないが、その日は36.9℃だった。微熱が続いていたかもしれない。前日は寝汗をかいて、着替えたという。
3日前から声がかすれてきたともいう。会話には支障がないが、確かに少しかすれているように聞こえる。通院している時は、もう癌健診はしませんといっていたが、その日はのどの癌が心配という。
耳鼻咽喉科外来に回すことにして、コロナとインフルエンザの迅速試験を行って(耳鼻咽喉科受診前には必須、両者陰性)、点滴・血液検査も提出した。
耳鼻咽喉科外来受診は、午後になった。血液検査で白血球5800・CRP9.8と思いがけなく、CRP高値を認めた。ウイルス性喉頭炎を想定していたので意外だった。喉頭炎はkiller sore throat以外ではあまり細菌感染はないはずだ。
耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー検査が行われたが、有意な所見はなかった。頸部痛(甲状腺部痛)なので亜急性甲状腺炎ではないですか、といわれた。診察時に、年齢で否定的かと思ってしまっていた。採血分で甲状腺機能も追加した。
甲状腺機能は、TSH0.03(↓)・FT3 16.9・FT4 >5.00と甲状腺機能亢進だった。甲状腺エコーを行うと、内部実質は不均一で、まだらに低エコー域があった。
亜急性甲状腺炎だった。上気道感染が先行することになっているが、軽度の声のかすれはそうなのか、甲状腺炎の影響なのか。改めて甲状腺の触診をしたが、痛みがあるといえばあるというくらいだった(数日前からは軽快してきたそうだ)。
内分泌に詳しい内科の先生に訊いてみると、FT3とFT4の比率のことをいわれた。確かにBasedow病のようなFT3メインではなく、FT4の上昇が目立つ。それは破壊性甲状腺炎を示唆するそうだ。
NSAIDsではなく、プレドニゾロンを使用することになった。高齢なので30mg/日ではなく、20mg/日での開始を勧められた。國松淳和先生の30mg/日から5日おきに漸減ではなく、20mg/日から1週間おきに漸減して1か月の使用を予定した。
「発症年齢は30~60歳に多く、男女比は1:10と女性に多い」となっているが、87歳でも起きるのだった。
鑑別のためもあり、甲状腺もマーカーを一通り提出した。抗TSH受容体抗体(TRAb)・抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体を提出して、念のため可溶性IL-2受容体抗体もといわれたので、それも提出した。
わかってみると、最初から亜急性甲状腺炎の症状・経過なのだった。