なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

一発診断 第6回 ジルベール症候群 成人パルボウイルスB19感染症 

2019年05月26日 | Weblog

 一発診断の3冊目「さらに!一発診断100」(文光堂)が出たのでさっそく購入した。CareNeTVと合わせて読むとさらにいい。シリーズが続いてほしい。

 さらに!一発診断100 (プライマリケアの現場で役立つ)

 

CareNeTV

一発診断
第6回 両側の手足に皮疹。むくみ、関節痛を訴える28歳女性

Script illuness11
36歳男性
現病歴:発熱・嘔気・嘔吐・下痢を訴えて受診
 以前から体調を崩すと家族から顔が黄色いと指摘される
 受診現在、患者周囲ではウイルス性胃腸炎が流行
身体所見・検査所見:眼球結膜に軽度黄染を認める
 血算・網状赤血球 正常
 LDH・AST・ALT 正常(溶血なし)
 総ビリルビン 2.5mg/dL
 直接ビリルビン 0.7mg/dL
一発診断:
 ジルべール症候群

ジルベール症候群
病態:
 ビリルビンのグルクロン酸抱合障害
 →間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症
頻度:
 人口の5%
 健康診断などで偶然みつかることが多い
症状:
 ・倦怠感・腹部不快感などを訴えることも
 ・大部分の患者は無症状
 増悪・緩解因子:
 (増悪)ストレス・絶食・月経・感染症・手術・寝不足・運動など
 総ビリルビン↑ <6mg/dL
 (緩解)ステロイド・フェノバルビタール・クロフィブラートなど
 総ビリルビン↓
検査:
 ・関節ビリルビン優位の総ビリルビン値上昇<3mg/dL
 ・ほかの肝機能検査はすべて正常
 ・溶血を疑う所見がない
 (血算・網状赤血球数・AST・LDHなど)
診断:
 ニコチン酸負荷試験、低カロリー食試験→総ビリルビン値が2~3倍に上昇する
 本疾患に特異的というわけではなく、臨床で必用とされることはほとんどない
 →1~1.5年フォローして、ビリルビン値以外に異常がみられなければ診断可能
予後:
 良好で、とくに治療は必要ない
 

間接ビリルビンが増加する黄疸

 ・体質性黄疸
  ジルベール症候群
  Crigler-Majjar症候群Ⅰ型:小児
  Crigler-Majjar症候群Ⅱ型:成人
 ・溶血性貧血
 ・無効造血(シャント型高ビリルビン血症)
 体質性黄疸のない健常者でも、絶食により総ビリルビン値が約2~3倍上昇することがある(絶食後高ビリルビン血症)

一発セオリー:
感染などで変動する、溶血所見のない関節ビリルビン優位の高ビリルビン血症は・・・
ジルべール症候群

Script illuness12
28歳女性
現病歴:
 数日前からの両側の手首・手指・足・膝関節の痛み、手足のむくみ、皮疹を訴えて受診
身体所見:
 四肢に網状紅斑
 下腿に紫斑(かゆみ+)
一発診断:
 成人パルボウイルスB19感染症
追加問診:
 保育園に通っている娘が3週間前に伝染性紅斑

成人パルボウイルスB19感染症
潜伏期:4~18日
症状:上気道様症状(倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛)などのウイルス血症症状に続いて、
 1)関節痛 2)皮疹 3)浮腫その他
 1)関節痛
 ・60~80%
 ・急性多関節炎の15%を占める
 ・女性に多い(男性の2倍)
 ・手指(PIP・MCP)に多く、手首・肘・膝・足にもみられる
 ・24~48時間で多関節に及ぶ
 ・朝のこわばりもみられる
 ・X線写真で骨破壊はみられない
 2)皮疹
 ・75%
 ・典型疹(20%)
 伝染性紅斑
  顔面の蝶形紅斑
  体幹・四肢のレース状紅斑
 ・非典型疹
  風疹様の斑丘疹、出血斑・紫斑、血管炎
fPPGSS:papular-purpuric gloves and socks syndrome
 ・手足の痛かゆさを伴う皮疹
 ・両手~前腕
 ・両下腿~足背(手袋や靴下を着用する部位)
 ・紅斑
 ・丘疹
 ・点状紫斑
3)浮腫その他
 ・浮腫 関節周囲のほか、全身性にみられることがある
 ・筋肉痛 50%(小児では4%)
 ・その他 肝機能障害をきたすことがある
診断:パルボウイルスB19抗体 急性期7~10日で陽性
 感度89%・特異度99%
v保険適応は妊婦のみ
治療:
 ・特異的な治療はなく、対症療法で経過観察
 ・通常、症状は6週間以内に消退
 ・まれに症状が数か月~数年続くこともある
ピットフォール:
 ・成人では間接症状が前面に出るため、患児との接触歴を聴取しないと診断に難渋する場合がある
 ・感染を契機にSLE・RAなどの膠原病に進展することがある
 ウイルス感染症で検出される自己抗:
 ・一過性にリウマトイド因子、抗核抗体。抗DNA抗体が陽性となることがある→診断において混乱の原因になりうる
 積極的に膠原病を疑うときだけ測定

急性多関節炎を来す疾患
1)ウイルス性 2)細菌性 3)慢性多関節炎の初期 4)その他
急性多関節炎ではウイルス感染症が多いため、ヒトパルボウイルスB19、風疹、HBVをまず疑う

一発セオリー:
浮腫、関節痛、皮疹のうち少なくとも2つを満たす成人で、伝染性紅斑の患児との接触歴があれば・・・
成人パルボウイルスB19感染症

 ジルベール症候群も、成人パルボウイルスB19感染症も以前はたまに診たが、最近はお目にかからない。

 


 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 副腎不全 | トップ | 後頭神経痛? »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事