なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

フロセミドの持続点滴

2019年10月27日 | Weblog

 循環器科でうっ血性心不全に治療にフロセミドの持続点滴をしていた。最初は20mgを静注して、その後は40mg/日を持続点滴。「効くんですか」、と素朴な質問をしてみた。

 「理屈としては良さそうだけど、エビデンスはないね」、ということだった。

  

ループ利尿薬
 

ループ利尿薬というのはヘンレループの太い上行脚にあるNa--K-2Cl輸送系(NKCC2)を阻害する利尿薬の総称で、もっとも多く使用されて来たのはフロセミド(経口薬、静注薬)だが、他にブメタニド(経口薬、静注薬)とトラセミド(本邦では経口薬のみ)がある。また長時間作用型としてアゾセミドが本邦では使用されている。

 特徴と投与法
 
  1. フロセミドは効果発現における個体感差異が大きい!

    特にフロセミドは生体利用度が個体間また病態によって大きく左右される。閾値を超えるまで効果は発現しないので十分な用量を投与する必要がある。

  2. アルブミンに結合して運搬される!

    ループ利尿薬は血中ではそのほとんどがアルブミンと結合しており、近位尿細管における有機酸トランスポータによって尿細管内に分泌されて利尿効果を発揮するには蛋白結合している必要がある。このため低アルブミン血症が重症(Alb<2 mg/dL)であると効果が減弱していく。このような条件ではアルブミンとフロセミドの同時投与が試みられている。例えばフロセミド40mg+アルブミン6.25gや200ml 20%アルブミンにフロセミド60mgを混注など。 (アルブミンを入れた後にフロセミド静注と覚えていたが、同時に投与するのだった)

  3. フロセミド経口投与は吸収率50%!

    フロセミドを経口で投与した場合その吸収率は約50%なので静注20mgと同様の作用を期待するなら経口40mgが必要になる。一方、ブメタニドとトルセミドの経口吸収率はほぼ100%とされている。また浮腫性疾患では腸管浮腫が起きている場合が多くこの経口吸収量は低下する。このため重症例では静注薬を用いる必要がある。 (フロセミド静注量:フロセミド経口量=1:2ということ)

  4. 各薬剤間の最大効果投与量は?

    フロセミドは健常人では静注では10mgから効果が発現して用量依存性に増加し40mgで最大効果を発揮するとされる。但し病態が重症になる程最小効果を発する閾値が増加し最大効果発現にさらに高用量が必要になることが多い。その静注40mgに匹敵するのはブメタニドでは1mg、トラセミドでは15~20mg(本邦では最大投与量8mg、経口フロセミドの40mgに匹敵)とされる。静注ではフロセミドの作用発現はそれぞれ数分から5分で、半減期T1/2は20~30分、効果持続は2~3時間程度である。 (腎臓内科の指示で、腎不全・ネフローゼ症候群にフロセミド100mg/日を使用して効いたことあり)

  5. 尿中Na+、K+、Cl-、Ca2+、Mg2+排泄を増加!

    その効果は尿量のみならず尿中電解質の再吸収抑制に現れる。Bartter症候群と同様の低K血症性代謝性アルカローシスとなる。 

  6. TGフィードバックを抑制しない!

    生理的な条件下では体液量の増加が起きて遠位尿細管管腔内へのNa+, Cl-の流入が増加すると、そこと糸球体の間にあるmacula densaへのNa+, Cl-の流入が増加することでアデノシンが分泌されて結果的に輸入細動脈が収縮し糸球体濾過量が抑制される(これを尿細管ー糸球体TGフィードバックと呼ぶ)。ループ利尿薬は遠位尿細管へのNa+, Cl-の供給を増やすものの、macula densaのNKCC2を阻害してNa+, Cl-の流入を抑制する。このためGFRの低下を自動的に起こしにくいとされている。

  7. 利尿ブレーキを克服するには?

    ループ利尿薬は当初Na, Kともに負バランスとなるが持続的に使用していくと負バランスが解消され効果が減弱していく。それまでの期間はループでは通常数週間である。その理由にはいくつかあり、そのうち遠位尿細管におけるNa-Cl共輸送(NCC)の代償性増加がある。このためNCCを阻害するサイアザイドの併用がふたたび利尿作用を増強させることがある。また体液量、心拍出量の減少はRAA系を賦活化させ、これがNa+, Cl-再吸収を遠位部ネフロンで増加させ拮抗的に働く。このためRAA阻害薬の併用が効果を増強持続させる働きがある。一方、K+に関しては摂取量が少ないと低K血症が発現し重症化させる恐れがある。このためK+補給を十分に行う必要がある。 

  8. ワンショットか持続静注か?

    フロセミドを大量に静注する場合、ワンショットと持続静注でどちらが効果的かつ安全かという問題がある。ループ利尿薬の一つの問題は効果が発現している数時間は水Naバランスは負になるが、その後急激にNa利尿作用が減弱することで、ともするとネットで十分な負のNaバランスを保てない場合がある。このことから持続静注が単回投与より継続的に利尿効果を得られる可能性があるが、これまでの8つのRCTの結果では利尿作用や心不全の改善効果には有意差はなかった

  9. 短時間作用型か長時間作用型か?

    経口フロセミド(Tmax 1~2時間、T1/2 0.35時間)のような短時間作用型と経口トラセミド(10mgでTmax 0.9時間、T1/2 2.2時間)や経口アゾセミド(Tmax 3.3時間、T1/22.6時間)のような長時間作用型の心不全に対する効果が検討されている。日本のCOLD-CHF研究やMELODIC研究ではアゾセミド群で長期のBNPおよびANP抑制作用がフロセミドに比し大きく、長時間作用型の神経内分泌系の改善作用における優位性を報告している。(フロセミド20mgで効果が乏しい時に、フロセミド40mgに増量ではなく、アゾセミド30mgを追加したりすると何となくプロっぽいが、効果は?)

  
(Jinzo.netから簡略化)

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 菌血症のはず | トップ | 脂肪肝 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事