年末の12月28日に地域の基幹病院から、老衰とされた92歳女性が転院したきた。前日に同院の呼吸器内科から転院依頼が来ていた。肺炎など呼吸器疾患はないが、救急で当たってそのまま主治医になったのだろう。
一人暮らしだが、同じ敷地内に義理の息子と孫がいる(娘は死去して娘婿が残った)。ある程度?は世話をしていたはずだが、男手しかないので、関係性も考えると表面的なものだったのだろう。
11月から全体的に弱っていたが、12月の半ばから食べられない・動けない状態となり、基幹病院に救急搬入された。当院にも搬入依頼がきていたかもしれない。土曜日はバイト医師なので、当院では対応できないと断ったのかもしれない(当院向きの患者さんだが)。
画像検査や血液・尿検査ではこれといった異常はなかったそうだ。末梢点滴で経過をみて看取りの方針となり、前日(12月27日)に転院依頼が来た。年末年始に向けてベット確保が必要な病院なので、すぐに引き受けることにした。
来て見ると四肢の浮腫があり、末梢静脈に点滴ロックはなかった。前日に漏れたので、転院が決まっているのでそのままにしたのだろう。
かろうじて1本だけ点滴できそうな静脈があるが、年末年始維持できるかどうかわからない。病棟看護師さんの要望もあり、その日のうちに中心静脈カテーテルを挿入した。
開眼はしているが、発語はない。小球性貧血で鉄欠乏性貧血があるが、先方では家族に説明して輸血もしない方針になっていた。鉄剤投与(静注)は行うことにした。
年末年始は薄めの高カロリー輸液・鉄剤静注・利尿剤静注で経過をみた。血糖は正常域なので、維持の高カロリー輸液にアップした。
画像添付はなかったので、当院でも頭部CT・胸腹部CTを撮り直した。頭部CTは脳委縮のみ。胸腹部CTでまだ胸水貯留が目立った。腹水も少量ある。消化管の悪性腫瘍が疑われるが、単純CTでは指摘できなかった(腫瘍マーカーは正常域だった)。
やはり発語はないが、手足を動かすようになって、昼夜逆転になった。就寝前に抗精神薬(ハロペリドール1/4A)を静注すると、いい感じに日中開眼する。
昼のみとろみ水少量を飲ませていたが(覚醒がいい時だけ)、飲み込めるようだ。ST(聴覚言語療法士)に評価してもらうと、昼のみ嚥下調整食3(ムース状)を試したいという。
鉄剤静注で貧血も少しずつ改善している。看取りの入院ではなくなってきたかもしれない。