なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

転院日に急変しそうだった

2022年01月23日 | Weblog

 先々週、地域の基幹病院呼吸器内科から94歳男性が転院してきた。認知症で施設に入所していたが、食事摂取ができず反応も低下して、救急搬入されていた。

 誤嚥性肺炎の診断で治療して、肺炎自体は軽快してきたが、意識障害が悪く食事摂取は不可能と判断された。家族と相談して、末梢静脈からの補液のみでBSC(best supportive care、要するに看取り)の方針となりました、とあった。

 転院依頼があって、その2日後に当院転院となった。転院して来ると、酸素飽和度が70%台と低下していた。病棟看護師さんが喀痰吸引をすると随分水っぽいものが多量に引けてきた。唾液様というより、唾液そのものだった。

 血液ガスをとると、PaO2 72.0・PacCO2 71.0・pH 7.230と呼吸性アシドーシスだった。肺疾患の既往の記載はなく、看取りということで?画像添付もなかったが、基礎にCOPDがあると思われた。

 そのままだと転院した日に亡くなってしまいそうだった。NPPVで頑張ればいいのかもしれないが、外せなくなる可能性が高いのと、喀痰が多いと到着はできない。といって気管挿管・人工呼吸の適応はないとされた先方での方針決定とも矛盾する。

 酸素投与量の調整(酸素飽和度90%目標で80%台後半も許容)と喀痰吸引(と点滴)をしているうちに、少し安定してきた。家族に事情をお話して、大部屋から個室に移動した。

 肺炎も治ったといえないようなので、抗菌薬も投与した(院内感染相当なので、ゾシン使用)。末梢静脈は週末数日は持たせますと病棟看護師さんが言ってくれた。

 何とか週末を乗り切って、検査に移動可能と判断して、頭部CTと胸部CTを取ってみた。頭部CTでは脳委縮が著明だった。胸部CTでは両側肺背側下肺野に浸潤影があるが、そうひどくはなかった。

 週明けには末梢静脈からの点滴は難しいと言われたので、中心静脈カテーテルを挿入した。軽度に糖尿病があるので、高カロリー輸液にするとインスリンが必要だろう。

 血液ガスは、PaO2 93.0・PacCO2 35.1・pH 7.490と代謝性アルカローシスになっていた(HCO3は次第に正常に戻るだろう)。酸素吸入は中止できた。血圧も安定した。

 急変しそうな状況でいろいろやっているうちに病状は安定している。これで患者さんが開眼して発語があればいいが、それは難しい。このまま点滴継続でしばらく持ちこたえそうだが、先方の病院での方針決定には矛盾した治療になってしまっている。

 

コメント (1)
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