なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

膵体尾部癌

2022年01月22日 | Weblog

 膵体尾部癌の76歳男性が、がんセンター腫瘍内科から当院消化器科に転院してきた。癌終末期の転院は大抵内科に転院して来る。がんセンターの診療情報提供書でも、特に何科にとは指定されていなかった。

 この患者さんは3年半前に当院消化器科からがんセンターに紹介していたので、地域医療連携室が消化器科医に転院の相談に行ったのだろう。(当院消化器科は1名だけで、数年前から体調不良で仕事をセーブしている)

 

 患者さんは2018年6月末に下腹部痛を訴えて、当院消化器科を受診していた。腹部造影CTで膵体部に造影不良域を認めた。腹水貯留もあった。腫瘍マーカーはCA19-9 が正常域で、外注検査で出したDUPAN-2が520U/ml(<150)と高値だった。

 膵癌による症状と思われるが、下腹部痛の訴えだったので、上部消化管内視鏡検査さらに下部消化管内視鏡検査もしていた。消化管には問題がなかった。

 当院からがんセンター消化器内科に紹介された。PET-CTで膵癌・腹膜播種と診断されていた。EUS-FNABで腺癌を証明しているのは、さすががんセンターというところだ。

 手術適応はなく、腫瘍内科でCVポートを作成して、抗癌剤治療が開始された。これまで3年半持ちこたえているので、有効だったのだろう。

 昨年の11月に腸閉塞となって入院していた。低Na血症でせん妄状態になったり、けいれん重積状態になったりという経過で過ごしていた。けいれんの原因ははっきりしないらしい。

 食事摂取は難しく、高カロリー輸液と抗けいれん薬の点滴静注を継続している。抗癌剤治療の継続が難しくなり、緩和ケアのみとなった。がんセンターには緩和ケア病棟があるが、患者さんと家族は地元の当院への転院を希望したそうだ。

 

 昔膵癌の腫瘍マーカーであるDUPAN-2が出た時に、CA19-9との比較をしたことがある。膵癌ではCA19-9とDUPAN-2が高値を示す症例もあるが、CA19-9 のみが高値の症例、DUPAN-2のみが高値の症例があり、両者は相補的な関係だった。

 CA19-9値を調べたこともある。100以上だとまず進行癌で、診断は容易だが手術適応にならない。正常値(<36または<37)から100の間で診断されると手術適応がある。

 またCA19-9は胆道感染症で一過性に上昇するが、炎症の改善とともに低下する(前立腺癌のPSAもそうだ)。無症状でもCA19-9が100以上という症例があるが(検査されやすい糖尿病の患者さんなどで)、経過を追って再検すると値は低下する。再検で下がる症例は、2年程度の経過で膵癌は発生しなかった。

 今回これまでの経過を追ってみて、DUPAN-2 高値というのが当方としては懐かしかった。食事摂取はできない状態だが、ステロイド投与で症状改善する余地があるかもしれない。

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする