「いつもウチの前を通るナカダさんが、本を注文していったわよ」
この季節になると、二俣川駅前にある書店に勤めていた母が、よくそんな話をしていたことを思い出す。
ナカダさんのお宅は駅からかなり離れていたのだが、その書店へはいつも散歩がてらのようだった。
僕は一度もお目にかかったことはなかったが、母の話からは偉ぶったふうなところもなく、紳士な、そしてとても優しいイメージでいつも伝わってきた。
それは、ナカダさんの作ったメロディーそのままの印象なのだ。
「だーれかさんが、だーれかさんが、だーれかさんが見ーつけた~…」
あの『小さい秋みつけた』の作曲者 中田喜直さんである。